研究倫理に関するよくある質問(FAQ)
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Q1. 研究倫理全般について(総論)Q2. 学術集会の一般演題登録に関して(筆頭演者)
Q3. 一般演題抄録と発表の指導に関して(指導者)
Q4. 不正発表・二重発表を見つけた場合
Q5. 学術集会への演題応募における倫理的手続きに関する指針への対応
第2版 2019年12月19日
第3版 2023年6月12日
第4版 2024年4月8日
1.【研究倫理全般について(総論)】
Q1-1. いまなぜ「研究倫理」が問われているのですか?
A. 日本集中治療医学会が広く研究の成果を公表する場として、学術集会(支部を含める)、日本集中治療医学会雑誌、Journal of Intensive Careがあります。これらは、一定の事前申告と審査を経たのちに公表されています。事前申告の目的のひとつは、日本集中治療医学会雑誌の「不正論文取り扱い規約」に示されるように、不正論文をなくすことです。不正論文とは、査読審査によって盗用(盗作)、重複投稿、あるいは捏造の事実が確定した論文を指します。同様に、学術集会においても不正発表をなくす必要があります。このようなことをしっかりと認識し、1つ1つに真摯に対処していく姿勢がプロフェッショナル集団には求められています。
Q1-2. 研究倫理委員会はどんな活動をするのですか?
A. 研究倫理委員会は、学術集会における不正発表をなくす目的で設立されました。不正発表とは、二重発表、抄録内容と異なる発表、その他の倫理的問題のある発表です。二重発表とは、既に発表した、あるいは演題登録中の抄録と実質的に同じ内容の発表を指します。研究倫理委員会は、これらの不正発表の疑義事案に対処し、再発を防止するとともに、「研究倫理」の啓発・普及などの教育活動を行っています。日本集中治療医学会雑誌、Journal of Intensive Careでの当該委員会で対処しきれない事案に対しても検討しています。
Q1-3. 「二重発表」が許容される場合はあるのでしょうか?
A. 二重発表は、とかくいけないことのように思われがちです。同じ内容で発表の機会を2倍に増やすだけなら、避けるべき行為です。しかし、前回の発表はある地域に限定されており、もっと多くの人たちに知ってもらう価値がある、あるいは特定の職種に限られていたものを違う領域の職種にも知ってもらう必要があると思う場合、「二重発表」であることを承知の上で演題登録することは許される行為です。その場合、必ず二重発表を申告するボックスをチェックし、抄録本文中にも必ずその旨を明記してください。採択は査読員や会長の判断に委ねられます。
2.【学術集会の一般演題登録に関して(筆頭演者)】
Q2-1. 私の自発的な研究ではなく、上司から抄録を提示されて一般演題として登録するように言われました。これが「二重発表」に該当するか判断できません。どうしたらよいでしょうか?
A. 抄録をいただいた上司、あるいは共同演者の責任者に二重発表に該当するか確認してください。二重発表でも登録する必要がある場合には、その理由を尋ね、その内容を通信欄に記載してください。
Q2-2. 同じ内容の発表を本学術集会より先に行いましたが、その抄録またはプロシーディング(印刷物またはPDF)が公開されるのが1年後なので、二重発表に当らないと思います。いかがでしょうか?
A. 印刷物、PDF、ホームページでの公開が発表から遅れることがあっても、発表した時点がこの演題の登録より前か後かで判断します。発表した時点が本学術集会の演題登録より前なら、「二重発表」に該当します。
Q2-3. 本学術集会での発表内容を他の研究会(学会)で発表したいのですが、それについても規制されますか?
A. それについては他の研究会または学会の規定に従ってください。国際学会など、英語で発表するときも同じです。
Q2-4. 支部学術集会でも「二重発表」やそれ以外の不正発表を同様に扱うのでしょうか?
A. どの支部学術集会も同様に扱います。ただし、支部学術集会の最優秀演題受賞演題は、次年度の年次学術集会の最優秀演題セッションにおける指定演題として発表することが推薦されます。 学会として認めた「二重発表」であり、優秀演題賞を目指してください。
Q2-5. 国外で既に発表したものを一般演題で登録したいのですが、「二重発表」に当たりますか?
A. 日本語以外で発表したものを日本語で発表するのであれば、本学会の年次学術集会では二重発表に該当しません。英語で発表したものを再度、英語で発表する場合には二重発表に該当します。
Q2-6. 既に発表したものより症例数や検体数を増やして発表するので「二重発表」に該当しないと判断しましたが、いかがでしょうか?
A. 症例数や検体数を増やしても、結果や結論が変わらなければ同じ内容と判断します。続報として二重発表で申告し、通信欄に前回発表の学会名と第何報かを記載してください。
Q2-7. 発表前に症例数や検体数が増えたので、抄録とは数値や結果が異なることを断って発表したほうがよいと判断しましたが、いかがでしょうか?
A. 抄録内容に忠実な発表を行ってください。発表前に研究方法の間違いに気づき、数値の修正が必要な場合には、演題取り下げが正しい判断です。そして、次回に再チャレンジするべきでしょう。発表の機会を許可した根拠が抄録にあるため、抄録内容と著しく異なる発表は査読審査を経ていない不正発表とみなされます。座長が発表を中止する場合があります。
Q2-8. 一つの調査から得られた結果を、複数の内容に分けて学会発表をしたいと思っていますが可能でしょうか?その場合、演題登録の際に注意することはありますか。
A. 一つのデータベースから複数の学会発表をするのは注意が必要です。データベースが膨大あるいは最初の論文では分析できなかった視点がある場合には、一つの調査から分割して発表できることがあります。研究仮説や目的、対象・方法などが同じで、一つの内容として発表が可能と判断されれば、分割する必要はないとみなされます。サラミ発表(一つの研究として発表可能な内容を多数の小さな研究に分割して発表する行為)と扱われる可能性があります。ひとつのデータベースを用いた異なる目的に対する解析結果は、異なる研究として是非とも発表してください。
あくまで、一つの目的を探求する中で得られたいくつかの結果において、それぞれの結果が十分に学会発表にとして価値があると認識される場合に限り、分割して発表することが可能と考えられます。分割して学会発表する場合は、その旨を演題登録の際に開示する必要があります。
Q2-9. すでに論文として発表している内容を学会発表したいと思っていますが可能でしょうか? その場合、演題登録の際に注意することはありますか。
A. 発表できます。ただし、採択あるいは掲載された後の発表は二重発表に該当するため、最終的な発表の可否は大会長判断となります。また、学術誌によって異なりますが、編集者による許可が必要となることがあるので確認と手続きをしてください。その上で、演題登録の際には、「本研究は◯◯誌に掲載(採択)された内容である」と通信欄に記載してください。学会発表のときに論文の図表を提示する場合には、必ず出典を示す必要があります。
シンポジウムやパネルディスカッション、教育的な講演などの一般演題以外の発表に関しては、それぞれ確認をしてください。
Q2-10. 院内の発表会で手作りの抄録集が作成され、配布されます。印刷物に間違いありませんが、「二重発表」に該当すると判断したほうがよいでしょうか?
A. 先の発表とは、一般に広く公開されているものを指します。ホームページで公開されていたり、院外に広く配布されたものでなければ申告する必要はありません。ただし、判断に迷うような場合には、二重発表に該当する可能性があることを通信欄に記載してください。
Q2-11. 演題登録のときは深く考えなかったのですが、発表前に「二重発表」に該当することに気づきました。どうしたらよいでしょうか?
A. 速やかに会長に連絡し、演題取り下げを行ってください。
Q2-12. 以前演題登録を行ったものの、未発表に終わったものがあります。「二重発表」の自己申告を行うべきでしょうか?
A. 演題取り下げに間に合わず、天候や健康上の理由などで当日の発表が行われなかった場合をさしていると考えます。未発表の抄録については、二重発表で申告し、その学会(研究会)名、開催年月日、未発表に至った理由を通信欄に記載してください。
Q2-13. 共同発表者に誰の名前を入れたらいいのでしょうか。所属長の名前を入れる必要がありますか。
A. 自分達が行なった研究を発表しようとしたところ、上司から「共同研究者に私の名前も入れておいて」と言われたり、所属長は発表者の最後に名前を入れておくというのが慣習になっている施設もあるかもしれません。しかし、誰が共同研究者としてふさわしいか(オーサーシップ:著者資格)について考えなくてはなりません。
著者資格を有する人とは、その研究に貢献した人です。どの程度の貢献があれば著者資格を有するのかは明確な基準はありませんが、研究に実質的な貢献をしていない研究者を共著者に入れることは“ギフト・オーサーシップ”と呼ばれ、有害な研究行為と位置付けられています。加えて、研究に貢献した人を共著者から外すことも “ゴースト・オーサーシップ”と呼ばれ、不適切な行為です。
医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)では、オーサーシップの基準をとして以下の4項目全てを満たすこととしています。自分達が行なった研究の共同発表者として誰が適切かを判断する際に参考にしてください。
ICMJE. Recommendations (Updated January 2024);
http://www.icmje.org/recommendations/
1) 研究の構想、デザイン、もしくは研究のためのデータ収集、分析、解釈に対する実質的な貢献
2) 研究論文のドラフトの執筆、もしくは重要な学術的内容に対する批判的校閲
3) 研究論文の最終版の承認
4) 研究論文のいかなる部分に対する正確性や完全性に関する疑義についても、適切に調査、解決されることを保証することで、論文のあらゆる面に説明責任を負うことへの同意
Q2-14. 自施設で調査した結果を演題登録しようと思っているのですが、抄録の中に記載する調査対象施設名をA病院、B病棟などと匿名化するように看護部指導者から指導されました。演題登録の際に、このような配慮が必要なのでしょうか。
A. 本学会への演題登録の際は、研究対象者が特定される表記を避ける記載方法は必要ですが、必ずしも「A病院」「B病棟」といった匿名化の方法をとることを義務付けてはいません。
学会により、倫理的に配慮した記載方法が異なるようです。学会によっては研究対象施設や対象者の特定を避けるため、「当院」や「当病棟」などの記載はせず、「A病院」や「B病棟」など匿名化することが義務付けられています。
Q2-15. eラーニングプログラムeAPRINとはどのようなものですか? どのようにして受講したらいいですか?
A. 研究倫理関連教材や勉強会の提供、研究機関の規範作り等を通して研究倫理を啓発し、研究活動を積極的に支援することを目的として設立されたのが、
一般財団法人公正研究推進協議会(APRIN)です。APRINと契約し、会員のみなさまに提供できるeラーニング教材がeAPRINです。日本集中治療医学会事務局で受講の管理を行います。
入会手続きとともにアカウント作成・ログイン方法の案内が届きますので、案内に従って受講してください。なお、既に入会されている場合は、案内のメールをお確かめください。
あるいは、eAPRINログイン用のユーザ名・初期パスワード、受講履歴と有効期限は「会員マイページ 」
よりご確認いただけます。
( 要会員ログイン » 会員マイページ » 参加・業績履歴 » 参加履歴メニュー » 日本集中治療医学会 eAPRIN受講履歴 )
Q2-16. eラーニングプログラムeAPRIN「JSICMコース」の修了証の有効期限は何年ですか?
A. 受講年度から5年間有効です。生命医化学系の「研究における不正行為」、「オーサーシップ」、「盗用と見なされる行為」の3つを「20○○年度JSICMコース」としました。
※受講有効期限の明確化のため、2023年11月7日(火)よりeラーニングプログラムeAPRIN「JSICMコース」の運用が変更となりました。
年度毎にコースが設定されますので、受講の際は、「20〇〇年度JSICMコース」と年度が記されているコースを受講してください。
Q2-17. eラーニングプログラムeAPRINを所属する施設で既に受けていますが、再度、受講する必要がありますか?
A. はい。
支部学術集会を含め、すべての一般演題の応募にはeAPRIN「JSICMコース」の受講が必要になります。生命医化学系の「研究における不正行為」、「オーサーシップ」、「盗用と見なされる行為」の3つを
ミニマム・エッセンシャルズ,「20○○年度JSICMコース」としました。受講は集中して取り組めば30分程度(確認“クイズ” 8割以上正解で合格です)で終了します。
Q2-18. eラーニングプログラムeAPRIN「JSICMコース」以外のコースを認めていただくことは可能ですか?
A. いいえ。
支部学術集会を含め、すべての一般演題の応募にはeAPRIN「JSICMコース」の受講が必要になります。所属されている施設でeAPRINを受講している会員のみなさんもいらっしゃることと思いますが、 本会では「JSICMコース」のみを認めています。
受講修了には、テキストを読むだけでなく、確認“クイズ”合格(8割以上正解で合格です)が必要です。
また、評議員や専門医の申請・更新にもeAPRIN「JSICMコース」の受講が必須となります。
Q2-19. 所属する施設でeAPRINを受講する場合、日本集中治療医学会のアカウントを利用することは可能ですか?
A. いいえ。
日本集中治療医学会のアカウントは、「JSICMコース」の受講専用として利用してください。
日本集中治療医学会のアカウントを所属施設に移動すると、「JSICMコース」の受講ができなくなり、会員管理システムに受講履歴が反映されません。
日本集中治療医学会と所属施設のアカウントをそれぞれ管理ください。
3.【一般演題抄録と発表の指導に関して(指導者)】
Q3-1. 以前に同じ部署のスタッフに発表してもらった研究会の抄録が、どのように扱われるかわかりません。参加者だけに配布されるのか、ホームページに掲載されるか知りません。どうしたらよいでしょうか?
A. 抄録が印刷物になるのであれば二重発表で申告し、その研究会の名称を通信欄に記載し、再度発表する理由を明記するように指導してください。また、パンフレットなどで同じ内容が紹介される場合がありますので、十分責任をもって指導してください。演題の修正期限が過ぎたのちに二重発表であることが判明したら、速やかに会長にその旨を報告し、演題取り下げを行ってください。
Q3-2. 以前働いていた部署の一員が無断で一般演題登録をしたようで、私が「二重発表」に該当すると注意しても従いません。どうしたらよいでしょうか?
A. 発表前でしたら会長に、発表後であれば速やかに研究倫理委員会に報告してください。
Q3-3. 抄録内容と著しく異なる発表であるか、どのように判断したらよいでしょうか?
A. 学術集会での発表に備えて、必ず共同発表者と一緒に発表の予行演習を行ってください。その際に抄録の内容と発表が同じかを確認し、きちんと指導してください。
Q3-4. 罰則は共同発表者にも及ぶのでしょうか?
A. 不正発表の審査では、当事者の言い分を十分にきき、当事者たちの職種、キャリア、指導体制などから総合的に判断し、慎重に対処します。処罰するのが目的でなく、再発防止などの教育的観点から指導します。共同発表者も処罰の対象になる場合があり、すべての共同発表者に対する適切な指導を心がけてください。
4.【不正発表・二重発表を見つけた場合】
Q4-1. 不正発表・二重発表を見つけたのですが,どのように申告したらよいのでしょうか?
A. 所定の様式に記入の上、事務局にメールまたはFAXで送ってください。その際に前回の発表の抄録を印刷し、提出してくださるようにお願いします。
日本集中治療医学会・研究倫理委員会「二重発表」審査用紙
日本集中治療医学会・研究倫理委員会「不正発表」審査用紙
5.【学術集会への演題応募における倫理的手続きに関する指針への対応】
参照: 学術集会への演題応募における倫理的手続きに関する指針 (jmsf.or.jp)https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2024/01/20240111133412.pdf
Q5-1.支部学術集会に演題を登録するときにも指針に対応した申告が必要ですか?
A. はい。日本集中治療医学会学術集会は、支部学術集会も含めたすべての学術集会演題登録時に申告が必要です。まず、指針を理解していただき、みなさんの発表がどのような研究に該当するのかをしっかりと認識することを習慣にしていただくことが大切です。そのために一定の期間を設けてから、必須要件としていきます。
Q5-2. 症例報告や活動経験の発表のときにも申告が必要ですか?
A. はい。
発表は以下のように大きく5カテゴリーに分類されます。
カテゴリーI : 特定臨床研究
カテゴリーII : 再生医療や遺伝子に関する基礎・臨床研究
カテゴリーIII : 侵襲あるいは介入を伴う研究
カテゴリーIV : 新たに取得する、あるいはすでに取得している試料・情報を用いる研究
(観察研究の多くが含まれます)
カテゴリーV : 生命・医学系指針の適用範囲外の研究
①症例報告、②人を対象としない研究、③倫理審査や研究機関長の許可、インフォームド・コンセントが必要でない研究は、カテゴリーVになります。自分の発表がどのカテゴリーに該当するのかを把握し、適切な手続きをしているかを確認してください。この適切な手続きには、薬剤や機器の適応外使用に対する所属施設の承認を得ていることなどが含まれます。
これは、みなさんの自由な研究活動を制限しようとするものではなく、研究倫理に関する決まりを守り、研究を広く進めるために示された指針です。
Q5-3. 職員や学生を対象としたアンケート調査はどのカテゴリーに当てはまりますか? また、倫理審査の手続きが必要ですか。
A. 「学術集会への演題応募における倫理的手続きに関する指針」では、職員や学生を対象としたアンケート調査はカテゴリーⅤに分類され、倫理審査委員会に諮る必要はない研究に該当します。しかし、対象者がいますので、個人情報保護法に則った対応が必要です。研究開始前に所属される施設の倫理委員会に確認をし、必要に応じて倫理審査を受審しておくことが望ましいと考えられます。
Q5-4. ワークショップの演者として、すでに発表している論文の内容とガイドラインから引用を用いた発表します。どのように対応したらいいですか?
A. すでに発表している論文から引用した記述やデータだけを用いた総説形式のレクチャーなどは、生命・医学系指針の適用される研究とはなりません。カテゴリーV:生命・医学系指針の適用範囲外の研究として対応ください。
Q5-5. 観察研究の解析結果と症例提示を含めた発表する予定です。どのように対応したらいいですか?
A. ひとつの演題に複数のカテゴリーに該当する研究内容を含むときには、それぞれのカテゴリーに求められる手続きが必要となります。
観察研究はカテゴリ-IVのチェックリストを利用した確認を行い、カテゴリーVの症例報告も含む発表であることを申請してください。