ハンズオンワークショップ(HW)の開催について
学術集会では6つのハンズオンを準備しました。
テーマに掲げた「ICUの外へ、次世代へ」に従い、非会員を含めた病棟スタッフ、若手医療者等の皆さんに受講いただき重症管理に関するコアスキルの共有を目指します。ワークショップ形式で実施し、すべてのハンズオン終了後に受講者の皆さんの評価をもとに効果的なハンズオンについて検討します。
受講いただく皆さんは、学術集会参加手続き(会場費負担)をしてください。ハンズオン受講に対する別途費用は原則として発生しません。6月上旬に本ホームページに受講事前登録手順を掲載します。受講者数は限られていますが、見学エリアを設定しますので見学参加もご検討ください。各実施時間・開始時刻・受講対象業種と抄録を参考に受講を検討してください。
HW 1 院内で共有する重症患者管理 離床に関する実技講習
- 共催
- パラマウントベッド大阪支店
- 実施時間
- 110 分
- 開始時刻
- ① 10:20~ ② 13:40 ~
- 受講者職種
- 全職種
- 1回の受講者数
- 20人程度
- 発表者・所属
- 横谷俊彦(市立大津市民病院)森沢知之(兵庫医療大学)松木良介(関西電力病院)
児島範明(関西電力病院)伊左治良太(洛和会音羽病院)
【背景】近年、集中治療における重症患者のアウトカムは救命することだけではなく、身体・認知を良好に保ち社会復帰することにシフトしつつある。社会復帰を実現するためには集中治療室(ICU)から始まるシームレスなリハビリテーションが求められている。なかでも早期リハビリテーション(早期リハ)の介入で人工呼吸器装着期間の短縮や、ICU滞在日数の減少など、重症患者に対する積極的な介入が推奨されている。さらに、ICU-Acquired Weakness(ICU-AW)やICU退室後認知機能障害を予防する上でも、早期リハの介入が重要である。重症患者の社会復帰に向けた大切な第一歩である早期リハの方法に関しては、十分にコンセンサスが得られておらず、各施設における実施者の経験に基づいて構築されることが多い。そこで、安全かつ効率的に成功させるための工夫や手順をハンズオンで共有する。
【目標】ICU・一般病棟に限らず、離床の可否を検討する上で、評価すべき項目や早期離床の手順を多職種で理解し、チームによる安全かつ効率的な離床支援が行えるようになることを目標とする。
【受講対象者】重症患者に対し早期離床を行う際に、多職種で共有しやすい標準化された評価方法を学びたい、医師・看護師・CE・リハビリテーション療法士・薬剤師など。離床に関する手順は職種を超えて共有することで、事故防止につながると考える。多職種間の到達目標は同一とし実施する。
【ハンズオンの進行】110分コースで10人×2グループとし、以下を実施する。
①ベッド臥床から端座位までのコース
②座位から立位や歩行までのコースを交代で受講する。
【概要】バイタルサイン・各種ルート類に注意しながら、模擬患者を安全かつ効率的に離床するかを実習形式で行う。
離床の可否を検討する上で多職種が共有して理解すべき評価項目・確認事項
(バイタルサイン・RASS・CPOT・NRS・MMT・ROMTなどを評価し多職種で共通認識を深める)
【考察】本ハンズオンの手順は複数施設で重症患者に対するリハビリテーション担当者が協議したものである。学会参加者の意見を加え、更に安全かつ効果的な手順を構築する機会としてもハンズオンワークショップを利用したい。
HW 2システムからイメージする。ECMOマネージメント正しい初めの一歩。
- 共催
- 泉工医科工業株式会社
- 実施時間
- 110 分
- 開始時刻
- ① 10:20~ ② 13:40 ~
- 受講者職種
- 医師、CE、(看護師)
- 1回の受講者数
- 12人程度
- 発表者・所属
- 宮崎勇輔(尼崎総合医療センター) 大手裕之(市立大津市民病院)
藤川義之(北播磨総合医療センター) 畑中晃(高の原中央病院)
吉田幸太郎(大阪大学医学部付属病院) 尾田友広(公立豊岡病院)
杉谷暢展(尼崎総合医療センター)
【背景】急性期医療においてECMOの認知度は高まり、興味を抱いている医師や臨床工学技士も多い。一方で症例を集約化する方向性にあり、かつ必ずしも頻度が多くないため、遠い存在と感じている方も多いのではないであろうか。触れる機会が少ない=知らなくてもよいということではない。すぐに経験数を増やすことができないECMOだからこそ、ハンズオンでのトレーニングが重要と思われる。
更にECMOのシステムを理解することがその管理の理解を深め、今後の学習に生かすためにも最も重要と考える。
経験豊富な臨床工学技士指導の下、ECMOに実際に触れつつ、その仕組みを理解することでECMO管理への第一歩を踏みだす機会としたい。
【目標】ECMOシステムを理解し、管理の一連の流れをイメージすることで実際の管理への応用や今後の学びにつなげる。ECMOを好きになるきっかけにしたい。
【受講対象者】ECMOに興味はあるけれど、遠い存在だと感じている医師、臨床工学技士
(他.看護師、リハビリテーション療法士、薬剤師等の見学可)
【ハンズオンの進行】110分のコースで4人×3グループとし以下を実施する。
○講義:カニューレ、遠心ポンプ、人工肺に関して
○ハンズオン
①導入期:プライミング実習、穿刺実習~ECMOの確立まで~
②維持期:トラブルシューティング~状態解釈から対応まで~
③離脱器:ECMO離脱を考える~基本的な離脱の考え方~
【概要】実際にECMO回路と模擬回路を用いながら、模擬症例を通して実技を進める。
ECMOの評価、トラブル対応などを一緒に考え、対応を学ぶ。
【考察】一部の医師を除いてECMOのシステムを考え管理をしている医師は少ないのではないであろうか。全て臨床工学技士任せでコミュニケーションすら取れていないのではないであろうか。ECMOシステムを臨床工学技士と医師が共に学ぶことは共通言語を構築し、Interprofessionalismの観点からも重要と思われる。そのためにも本ハンズオンは経験豊富な臨床工学技士の視点を取り入れている。基本の原理・原則を押さえ、ECMOとの心の壁を取り除くことで、今後の学習への第一歩になると思われる。また院内ECMOハンズオンを今後構築する際の参考ともしたい。
HW 3 明日から使える酸素療法 -加湿と観察の重要性-
- 共催
- 日本メディカルネクスト株式会社
- 実施時間
- 50分
- 開始時刻
- ① 10:20~ ② 13:40 ~ ③14:40~
- 受講者職種
- 全職種
- 1回の受講者数
- 20人程度
- 発表者・所属
- 土居新宗(大阪市立総合医療センター)畑中祐也(京都府立医科大学付属病院)
木村政義(兵庫医科大学病院)小松義輝(北播磨医療センター)
中村充輝(奈良総合医療センター)田村匡弘(大阪市立総合医療センター)
豊島美樹(大阪市立総合医療センター)
【背景】近年、呼吸管理の現場では大きな変化が起きている。スタンダードな呼吸療法として従来の呼吸療法に加え、HFT(ハイフローテラピー)が導入され急速に普及している。呼吸不全の臨床使用に対して有効だと論じる文献があるが、明確なガイドラインは存在しない。
HFTは簡便なシステムであるが故に多様な病態に使用されているが必ずしも万能ではない。治療効果としてガス交換に寄与するが、呼吸仕事量を下げる能力に限界がある。
【目標】HFTを含む酸素療法の仕組み・原理を理解させ、シナリオを使用してどのように患者を観察し評価するのかをハンズオンで習得させる。さらに加湿の重要性を理解させる。
【受講対象者】酸素療法に不安がある、研修医、医療スタッフ全般を対象とする。
【手段】体験講座型講義を採用して以下の学習目標を達成させる。
①酸素療法のデバイスとその原理を説明できること。
②HFTの原理である、加湿・高濃度酸素供給・死腔洗い出し効果を説明できること。
③呼吸仕事量を判定するバイタルサインを説明できること。
④Ⅰ型・Ⅱ型呼吸不全に対しての酸素療法を導入でき、効果と限界を判定できること。
【概要】酸素療法・HFTの原理は知識として理解させる。SPO2、呼吸数、心拍数、努力呼吸を観察することで呼吸仕事量を評価させ、治療が成功しているか否かを判定させる。
【考察】学習目標を達成できたかを事前・事後テストで判定する。そのためには明確な学習目標を設定し、受講生が臨床に戻ったときに習得した知識を使用できでそうかをアンケート調査する。さらに受講後1か月後にもアンケート調査を行い、臨床現場で学習した知識が使用できているかを追跡調査する。
HW 4 今日から安心!NPPVマスクフィッティング~スムーズな導入を目指して~
- 共催
- 帝人在宅医療株式会社
- 実施時間
- 50分
- 開始時刻
- ① 10:20~ ② 14:40~
- 受講者職種
- 全職種
- 1回の受講者数
- 10人程度
- 発表者・所属
- 廣瀬元、竹﨑佐弥香、原田彩花、東川恭子、田中隆美、今井美幸、廣瀬夏子
(地方独立行政法人 市立大津市民病院)
【背景】近年、急性呼吸不全や慢性呼吸不全に対して非侵襲的陽圧換気Noninvasive Positive Pressure Ventilation(以下NPPV)が広く行われており、気管内挿管の回避やQOLの改善が報告されている。しかし、機器の設定や治療戦略は示されているものの、マスクの選択やフィッティング・皮膚保護の方法に統一した見解はなく、各施設が試行錯誤しながら実施しているのが現状である。本ワークショップでは、NPPV導入時に重要となるマスクフィッティングや皮膚保護に焦点を当て、参加者とともにより良い方法を共有したい。
【概要】効果的なNPPV療法の実施、また医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の予防には患者の協力と適切なデバイス選択・マスクフィットが必要不可欠である。本ワークショップでは患者に合ったマスクの選択、皮膚保護の方法、ヘッドギアの締め方などを示す。希望者は実際にマスクを着用し、NPPVを体験することも可能である。なお、細かな設定方法やグラフィックモニタの見方は取り扱わない。
【目標】患者に合わせたマスクの選択・マスクフィッティングが出来ること、皮膚保護を実施できることを目標とし、自施設で誰かに教えたくなることを期待する。
【受講対象者】院内NPPVや在宅NPPVに関わる(今後関わる可能性のある)医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、薬剤師などすべての職種。経験年数問わず。
【ハンズオンの進行】50分コースで5人×2グループとし以下を実施する。
1.挨拶・導入・実習前の座学 (10分)
2.5人ずつ2グループに分かれて実習
①NPPVマスクの選択、マスクフィッティング実習 (15分)
②各種デバイスを用いた皮膚保護の方法 (15分)
3.質問・アンケート記入・まとめ・展示物品の見学 (10分) 計50分
【考察】NPPVにおけるマスクフィッティングや適切なデバイス選択は、治療効果を向上させる重要な要素である。また患者の協力を得るために行う説明の方法や導入方法も効果的なNPPV療法には不可欠である。しかしながらこれらの方法には統一した見解がなく、各施設が苦慮しながら対応している。本ワークショップで示した方法も1施設で行っている方法に過ぎず、参加者の意見をもとにより良い方法を提案したい。NPPVを成功に導くには、医師・看護師など全ての職種が統一した見解を持ち、同じ手技が行えることが鍵と考える。
HW 5 歯科エキスパートが伝授する気管挿管患者への口腔ケア実践テクニック
- 共催
- ニプロ株式会社
- 実施時間
- 50分
- 開始時刻
- ① 11:20~ ② 14:40~
- 受講者職種
- 全職種
- 1回の受講者数
- 9人
- 発表者・所属
- 岸本裕充(兵庫医科大学)、藤原千尋(福山医療センター)、
多賀真由香(福山医療センター)、黒川真衣(福山医療センター)
【背景】人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia; VAP)の発症には、口腔や咽頭部の菌の存在(内因性)、気管チューブを含めた呼吸回路の汚染(外因性)など。多く要因が関わることが知られている。したがって、バンドル(bundle=「束」の意味)アプローチとよばれる、VAPの発症要因に関わる複数の介入を組み合わせた対応が重要とされる。その介入の内容として、ベッドの頭部(head of bed; HOB)挙上や、鎮静の休止、手洗い、などが知られており、米国IHI(Institute for Healthcare Improvement)のように「口腔ケア」を含むバンドルもある。
口腔ケアは各施設で実施されているが、手技・回数などに問題がないかを確認しなければならない。歯垢はバイオフィルムであり、その破壊は口腔の総菌量や病原性を低くするために重要であることは自明であるが、歯垢中の菌が口腔ケアによって飛散して咽頭に落下することは盲点となりやすい。咽頭の菌量が増えれば、気管チューブに沿った菌の気管への垂れ込み、という面では、むしろ危険な状況になっている場合がある。
本ハンズオンでは、口腔ケアの鍵である吸引による「汚染物の回収」と、「湿潤度」の維持(保湿)ついて、理論と実践の両面から解説する。
【目標】気管挿管患者に対して、口腔ケアを安全かつ効果的に行うための基礎を習得する。
【受講対象者】気管挿管患者に対する口腔ケアを行う、もしくは指導する医師・看護師・呼吸療法士・臨床工学技士、NST・RSTにかかわるスタッフなど。
【ハンズオンの進行】50分コースで以下の順に行う。
①気管挿管患者に対する口腔ケアの基本的な座学 15分
②シミュレータと口腔ケアキットを用いた実習 30分(3名×3グループ)
③総括 5分
【概要】座学では気管挿管患者に対する口腔ケアのポイントを解説し、安全かつ効果的に行うために理解を深める。実習では座学で学んだポイントを再確認しつつ、シミュレータと口腔ケアキットを用いて、より実践的なテクニックについて解説する。
【考察】現在、口腔ケアについては、日本集中治療医学会と日本クリティカルケア看護学会が共同で「人工呼吸器装着患者における口腔ケア実践ガイド」作成しており、日本国内における標準的な口腔ケアの手法が明示される予定である。それにつながる内容をより実践的に伝える場としたい。
HW 6 CAM-ICUとICDSCを使用して重症患者のせん妄をアセスメントしよう
- 共催
- 丸石製薬株式会社
- 実施時間
- 50分
- 開始時刻
- ① 10:20~ ② 13:40~
- 受講者職種
- 全職種
- 1回の受講者数
- 10人
- 発表者・所属
- 山田親代(京都府立医科大学医学部看護学科)、植村 桜(大阪市立総合医療センター)、吹田奈津子(日本赤十字社和歌山医療センター)、竹中千恵(京都府立医科大学付属病院)、川瀬亜樹子(関西医科大学附属病院)
平松八重子(京都大学医学部付属病院)、平良貴子(六甲アイランド甲南病院)
【背景】せん妄とは急性に発症する、注意力の障害を中心とした症候群である。せん妄はICUで発症することが多いが、急性期の一般病棟でも非常に多く発症している。せん妄は認知機能の低下や死亡率とも関連していると報告されており、急性期を脱した後も、入院前と比べ患者の生活を一変させることがある。近年ICUにおいてはCAM-ICUやICDSCといった、せん妄評価ツールが開発され、これらのツールを使用し、早期にせん妄対応が行われてきている。活動型せん妄は,危険防止のため医療者が特に注意を払うため,発見は容易であるが、低活動型は危険行動が少ないために見落とされやすい。そのため評価ツールを用いたせん妄のアセスメントは重要であり、正確にせん妄のアセスメントができる力をつけることが必要であると考え、このハンズオンワークショップを開催する。
対象:重症患者が入院する急性期一般病棟(病床数は問わず)やHCU、ICUなどでせん妄評価方法を学びたい看護師、医師、理学療法士、薬剤師など、職種も問わない
【目標】せん妄の評価ツールを理解する
せん妄評価ツールを用いて重症患者のせん妄を評価できる
【内容】全体で50分のコースの中でCAM-ICUとICDSCの2つのツールを用いてせん妄評価を行う
①CAM-ICU;患者役の演技を見て(過活動型、低活動型)CAM-ICUを用いて評価する
②ICDSC;看護記録を読み、ICDSCを用いて評価する