この度、第50回日本集中治療医学会学術集会において「感想文」を公募したところ、会員・参加者の皆様より26通にも及ぶ応募を頂きました。多数のご応募をいただき誠に有り難うございました。
年次学術集会運営事務局及び日本集中治療医学会学術集会あり方委員会委員による厳選な審査の結果、以下の3題を、最優秀賞及び優秀賞として選出しましたので、表彰致します。
それぞれの想いの詰まった、心温まる作品ばかりです。学術集会を振り返ることが出来ますので、是非、ご覧下さい。
改めまして、多くの参加者の皆様に支えられて、学術集会を遂行することができたことを、感謝申し上げます。
ありがとうございました。
第50回日本集中治療医学会学術集会
会長 志馬 伸朗
最優秀賞
藤 雅文
横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部
3年ぶりに集中治療医学会学術集会への現地参加をした。
どのセッションを聴講しようかとプログラムを丹念に眺め、どのように回ろうかと頭を悩ませ、セッションの合間に久しぶりに会う面々との話に花が咲く。そうそう、学会参加ってこんな感じだった、3年ぶりですっかり忘れていた。
この3年間に随分とオンラインでの学習に慣れはした。しかし、演者の熱意に感化されて学びの意欲がかき立てられ、たまたま聴いたセッションで普段は関心がなかった分野に興味が湧き、各地で頑張っている旧知の友に刺激を受ける、リアルに人が集まる場ならではの利点を強く感じた3年ぶりの学会参加だった。オンラインであれば倍速で聴講することも可能であり、自分の好きな隙間時間に学ぶことも可能である、学びの効率だけで言えばオンライン学習の方がはるかに高い。それでも、改めてこうして人が集まって学ぶことの意義を再確認した学会員も多いのではないだろうか。
ただ、そのようなリアルの学術集会で感じられた利点を高らかに口にすることの躊躇を同時に感じもした。なぜなら、ICUでの面会制限により会いたい気持ちを押し止めている患者さんやご家族がいることに、どうしても気持ちが向かってしまうからである。
私の働くICUでは現在、面会制限は緩和している。しかし、国内でも少なくない数のICUが今もコロナ禍での面会制限を継続しているのではないだろうか?このことを思うと、リアルに人と人が接することから自分が感じた利点を口にすることに躊躇が生まれる。
学術集会への参加で感じた内容を口にするのは全てのICUで面会制限が無くなってから、自分が最後であるべきというのがICUで働く者として自分なりの矜持であるからだ。
私達は感染対策の名のもとにICUで面会の制限を行った。その良し悪しは現時点では分からない。やむを得なかったという面もあるが、制限したことは間違いのない事実である。
そして我々はリアルに人と人が場を共有することの価値を今、再認識した。単に学術集会の場で学ぶ価値の再認識にとどまらず、この再認識を踏まえたより良い医療の提供に反映していく義務が我々にはある。
コロナ禍が過ぎつつある。各々の施設も面会制限を緩和していくだろう。しかし、単に過ぎ去らせてしまっては、この間にICUで行われた様々な制限で失われた思いがそのまま埋もれてしまうのではないかという危惧を感じている。患者さんとその親しい周囲の人々、様々な職種の医療従事者、たくさんの人が関わるICUという場において、効率性を高めるオンライン化とオンラインでは代替できないリアルな交流を上手く組み合わせたICU運営にアップデートする。それがこの3年間にICUで行われた多くの制限で失われた思いに報いることになる、これが今回の学術集会参加を通じて最も強く感じたことである。
最後になりましたが、このような素晴らしい学術集会を開催運営してくださった方々に深く感謝を申し上げます。様々なことを学ぶことができた学術集会でした、ありがとうございました。
優秀賞
横山 弥生
鹿児島大学病院
日本集中治療医学会50周年おめでとうございます。4年ぶりの現地開催となり、「さあ、行こう」と国際会館駅から会場に向かう長い列。早朝で寒いのと、COVID-19がまだ明けてないからなのか、現場の行きたかったスタッフのことを思うとなんだか足取りは重い。それぞれの想いを胸にまっすぐ目的地にむかって歩く。目的地に着くと、風光るの表紙が大きく出迎えている。軽くて待ってたよという感じでなんだかいい。カレンダーの歴史をみて、これまでの50年に感謝。あ、この会場に来れてよかった。幸せに感じる。西田理事長の集中治療にかける熱い想い、ブランディング活動。ICUは、箱、集中治療医の存在が世間に認知されていないことも、衝撃だった。血のにじむような陰の努力を知る。志馬会長のすきのその先にの意味。好きを超越。集中治療の世界に魅了された私は、一体何ができるだろう。できることから地道にコツコツ、淡々と、1日1日を大事に向き合っていくしかないか。垣花先生の患者ファースト。救うその先に社会復帰を見据えた医療を。多職種医療や、チームワーク。愛する人を救える医療。垣花先生の理念は、ずっと変わってない。熱い想いがみっちりつまった50周年の節目の会場で、理事長や、歴代の会長、優しく、淡々と自分の言葉で飾らず率直に想いを伝えるってすごい。熱い想いに感動する。学会開催者がパーカー着てて、一体感もいい。小児集中治療セミナーや、研究発表も、現場のリアル生データや、現場の声を聴講することができ、新しい発見や、見識を学べ、とても有意義な学会参加でした。この学会に参加し、足を運べたことに感謝。オンデマンド配信でまた学ぶこともでき、何度も聴講でき、現地に行けなかった人にも、とても有意義なオンデマンド配信だったと思う。人に優しい。帰り道、それぞれの立場、立ち位置で現場に持ち帰る。「あ、私やっぱり集中治療が好きなんだ」と気づく。なんだか足取りは軽い。澄み渡った快晴、一足先に春の陽気を感じた学会でした。「さあ、今日も頑張ろう」っと。
優秀賞
須田 果穂
山口大学大学院医学系研究科
私の学術集会デビューは、臨床看護師4年目の時のこと。新たな知見に驚いたり、何度も読み込んだ本の執筆者の講演を目の前で聞けることに感動したり、普段病棟で一緒に働く医師や先輩の発表を聞いてかっこよさに唸ったり・・・帰路では見たこと、聞いたこと、感じたことをどのように臨床へ還元するかを妄想し、わくわくしたことを今でも覚えている。その頃の私はまさに井の中の蛙大海を知らず。私もこれからもっと集中治療を極めるんだ!と心の中で誓っていた。
その後、世間はパンデミックを迎え、学術集会はオンラインに限られるようになってしまった。直接講演を聞けない、あの熱気にあふれた会場の空気感を味わえない、今までの当たり前が失われ、刺激にうえた。そして、50周年の学術集会では他施設・他職種の同年代の仲間とつながりたい、新しい風をおこしたい、そんな思いが強くなった。でもこんな片田舎の一研究者がどうしたら・・・あれこれと悩むだけで時間は刻々と過ぎ、学術集会の演題〆切が目前に迫る中、ちょうどU35プロジェクトの募集が開始された。
応募のテーマは「聞け、若鮎の声」。まさに今私がうえている思いそのもの。もちろん応募した。結果、40人の仲間が集い、半年かけて準備を行い、学術集会最終日にU35らしさを活かした企画を作り上げた。学術集会に自分の居場所がある、施設・職種の垣根を超えた仲間がいる、みんなの思いを声にして発信できる。今までにない刺激的な学術集会となった。
会期中の3日間、U35の仲間の発表を聞いたり、U35の仲間と会場をまわったりしながら、自分たちのこと、集中治療のこと、ひそかな野望・・・とにかく話し、聞き、たくさんの刺激をえた。もう私は、あの頃の井の中の蛙ではない。50周年の学術集会への参加をきっかけに、まだ誰も見たことの無い大海を目指して仲間と舵をきり始めた。
© 2022 The 50th Annual Meetings of
the Japanese Society of Intensive Care Medicine