企画趣旨
■シンポジウム
敗血症診療は新しい定義(Sepsis-3)でどう変わったか?
2016年に発表されたSepsis-3によって敗血症のスクリーニング、早期診断、初期診療は以前と異なった対応が求められるようになった。qSOFAによるスクリーニングやSOFAスコアの導入など、ICUに限定せず、臨床の現場でどのように対応するかについて幅広く討議していただきたい。
ABCDEFバンドルー人工呼吸患者への早期離床の開始時期と介入頻度を考える
近年,人工呼吸患者の早期リハビリテーションの効果について,懐疑的報告が散見されるが,研究の方法論的な問題も指摘されている.早期モビリゼーション・プロトコールの導入、開始時期、介入頻度など,退室(院)後ADLに影響するのはどれかを検証する.
ICU-AWの病態生理とその対策 up to date
ICU-acquired weakness (AW)は今や確立された概念であるが,その病態生理は未だ不明の点が多い.このセッションではICU-AWについて最新の研究結果を総括し,病態生理に基づく臨床現場での評価法と防止策を検討することを目的とする.
一歩進んだ重症患者の栄養管理
重症患者に対する栄養管理は、議論が尽きない領域である。栄養投与量をどのように設定するか、また糖質、脂質、蛋白質の配分を病態によってどう調整すべきか、さらに追加投与すべき物質はあるか、などを各施設のデータを元に討論して頂きたい。また、経腸栄養の重要性は広く認識されているが、実際には投与速度、投与経路や下痢に対する対処法など、いまだ確立されていない点も多い。これらについても、各施設の取り組みを発表し、一歩進んだ栄養管理を目指したディスカッションをお願いしたい。
ICUにおける重症患者のモニタリングとその意義
集中治療では様々なモニタリング機器が使用され、患者管理が行われている。表示されている数値から経過観察、薬剤の変更や増減、生命維持管理装置の設定変更などの治療戦略の再考等がなされている。本セッションでは、今一度各種モニタリング機器の臨床意義を考え、疾患・病態から何を目的に使用し、得られる情報をどのように解釈するのか議論したい。以下の内容につき、それぞれ公募する。
血行動態モニタ、近赤外線分光法、パルスオキシメータ、カプノメータ、中枢神経モニタ
神経集中治療とpost intensive care syndrome (PICS)
メンタルヘルス、認知機能障害、運動機能障害などは、PICSの重要な部分を占める神経障害である。集中治療が必要な患者の死亡率を減少させるだけでなくPICSの発生を減少させ社会復帰率を増加させることは、神経集中治療が社会に貢献できるターゲットの一つである。このシンポジウムではPICSに視点を置き、PICSを予防し転帰を改善するために必要な神経集中治療について議論する。
心拍再開後集中治療の最新の取り組み
心肺蘇生後のpost cardiac arrest syndrome(PCAS)に対する集中治療が,chain of survivalの1つに加えられて久しい.しかし,therapeutic temperature management(TTM)の推奨目標温の変遷を見ても,有効な治療法として確立されたものは少ない.心肺停止患者の予後改善を目指すこれからの集中治療として期待できるような最新の取り組みや研究などを発表して頂き,討議していただきたい.
心原性ショック:どう立ち向かうか?
心原性ショックの死亡率は未だに高く、何が問題でどのように解決すべきか、新たなImpellaというデバイス導入も含めて、この難題に関してなんらかの方向性を明確にする。
AKIの予防と治療は可能か?
AKIのバイオマーカーの検索が始まって久しい。早期にAKIが診断できるバイオマーカーがいくつか利用可能になった現在、早期介入によるAKI予防あるいは治療は可能になったのか?AKIの予防及び治療に関して、議論いただきたい。
小児集中治療・小児重症患者の臨床研究の推進と将来
小児重症患者の臨床研究は、症例絶対数の少なさや症例の散在などにより、遂行困難な側面が多々ある。それ故に一方では、国内における小児集中治療多施設共同研究の萌芽、国際共同研究への参画が進みつつある。小児重症患者を対象とした多施設共同研究の 1. 方法論, 2. (P) ICUデータベース, 3. アウトカム設定, 4. 少子化ニッポンでの患者リクルートと国際研究に向けた可能性等、現状を御発表いただきつつ、将来を見据えた一歩先の可能性を幅広く討議して頂きたい。
一歩進んだワーク・ライフ・バランスを考える
集中治療は昼夜を問わず継続して行われるため、一般的に集中治療医やICUナースはシフト制で勤務を行う。最近、過重労働やストレスが、働く人にとって重要な問題となっている。そこでワーク・ライフ・バランスを保ちキャリアを積み重ねるための取り組みについて討議していただきたい。
一歩進んだ人材育成
限られた環境と資源の中での人材育成はどの職種においても苦慮しているのではないか。各施設が質を向上させるために創意工夫をしていると思われる。臨床推論、教育手法、メンタルヘルス、コンピテンシー、ライフワークバランスなど様々な視点から、一歩進んだ人材育成のために活用できる取組みについて討議していただきたい。
■パネルディスカッション
敗血症性ショックの循環管理-何を指標にどう行うか?
新しい敗血症ガイドラインが発表されたが、敗血症性ショックの循環管理には、昇圧薬に何をどの順番で用いるか、適正輸液量をどう評価するかなど、依然として様々な問題がある。各施設で行っている循環管理、特に従来の初期輸液とノルアドレナリン投与に反応しない治療抵抗性敗血症性ショックに対する循環管理の現状を発表し、討論していただきたい。
一歩進んだ感染対策
院内感染対策はICUにおける喫緊の課題である。最近多剤耐性菌対策には抗菌薬適正使用を含むantimicrobial stewardshipの必要性が強調されている。本セッションではデ・エスカレーションを含めた抗菌薬の適正使用と院内感染対策等に関して各施設のユニークな試みを発表していただき、効果的な感染対策を討議していただきたい。
人工呼吸患者への浅鎮静を再考する
J-PADガイドラインの発表後,国内でも浅鎮静の有効性は広く知られるようになったが,臨床現場への導入においては様々な問題があり必ずしも進んでいない.このセッションでは,浅鎮静の実施における疑問を解決し,臨床現場での浅鎮静の具体的な導入法を探ることを目的とする.
一歩進んだARDSに対する人工呼吸管理
ARDS患者に対する人工呼吸管理は,肺保護を企図して行われ,高濃度酸素投与の有害性や一回換気量を低く保つことの重要性は広く受け入れられている.しかしながら,実際の人工呼吸器には様々な呼吸モードや設定方法が存在する.そこで各施設で実際にどのような人工呼吸器モードを使用しどのように設定しているかを発表いただき,議論していただきたい.
集中治療管理で周術期合併症を予防する
高度侵襲手術の施行が拡大し、慢性疾患合併患者の手術が施行されるようになった昨今、周術期管理における集中治療の重要性は高まっている。集中治療により周術期合併症を予防し、周術期患者の予後を改善する方法に関して、議論いただきたい
一歩進んだ集中治療へ-集中治療の基礎研究
重症患者の病態解明、新たな治療方法の開発のために、基礎研究は欠かせない。次世代の集中治療を目指した基礎研究について、各施設で行われている研究をご紹介頂く。集中治療を基礎研究から支える人材育成のためにも、研究結果だけでなく、構想の過程や将来の臨床への応用についてもご発表頂きたい。特に若手に「基礎研究をやってみたい」と思わせる発表をお願いしたい。
Neuro monitoring up to date
集中治療が必要な患者の社会復帰率を高めるには、神経学的な転帰を改善させる必要がある。臓器別治療バンドルが提唱され、新しいモニタリングデバイスが開発されているなか、神経モニタリング(非侵襲的頭蓋内圧測定、脳酸素飽和度など)の有効性や適応拡大(敗血症における脳波モニタリングなど)について議論する。
一歩進んだECMO管理を目指して
近年ECMOの臨床的有用性に関するエビデンスが蓄積され,本邦においても,ECMOを用いた心肺蘇生(ECPR)ばかりでなく,重症心不全,呼吸不全に対するECMOが広まってきた.しかし,質の高いECMO管理を行うためには,病態に応じた治療戦略の中でのECMOの位置づけ,管理中の工夫,患者の集約化など,さらなる取り組みが必要である.今後ECMOをさらに有効な治療手段にしていくための,各施設の新しい取り組みを発表し,討論して頂きたい.
小児の鎮静困難-私はこうしている!
「ショートプログラム」(事前提示症例への回答)+「フリー」(当院での鎮静管理方針)の構成で討論予定。小児病院PICUのみならず、よく小児をみる混合ICU、たまに小児をみる混合ICU、市中総合病院小児科、何でもみれるぜ~の救命センターからのチーム発表を期待する。
患者回復力を引き出す
高齢化し慢性疾患を抱えている患者の集中治療は、より患者個々に合わせた治療・ケアが望まれている。その患者回復力を引き出すアプローチについて各施設で行っている効果的な取り組みを、チーム医療にかかわるメンバーに発表していただき、討議していただきたい。
これからの終末期医療
2014年に、「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」が3学会から提言された。それを元に、各施設において多職種で構成された医療チームは「患者の尊厳」を第1に考えよりよい終末期対応を議論し実践しているだろう。ガイドラインにある通り集中治療領域での終末期は、医療者側の治療方針の転換と患者意思もしくは家族らの代理意思決定が必要となるが、そのタイミングは臨床の場ではなかなか困難であり、治療方針転換後も家族らの葛藤が続くことが多い。その対応は医師・看護師・ソーシャルワーカー・緩和ケアチームなど多職種で行われるが、それぞれの職種ごとに終末期医療への考えがある。本セッションでは各施設での取り組みや事例を元に、各職種の立場で終末期医療への考えや課題を共有する機会としたい。
一歩進んだ早期リハビリテーション
ICUにおける早期リハビリテーションが予後改善に寄与することが認識されてきており,日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会から,昨年エキスパートコンセンサスが発表された.しかし実際に重症患者にリハビリテーションを行っていく上では,患者の重症度,鎮静度やせん妄などが問題となるばかりでなく,安全確保の体制,多職種での連携,医療経済など,多岐にわたる問題がある.本当に有効な早期リハビリテーションを実現するための各施設での取り組みについて発表し,さらなる質の向上を目指す討論をして頂きたい.
一歩進んだ外傷患者に対する集中治療
重症外傷患者に対する治療の柱の一つは、集中治療である.様々な外傷患者(頭部外傷・多発外傷・OAMやダメージコントロール戦略を要する患者)に対して各施設で行なっている集中治療に関する取り組みを示していただき,外傷患者に対する集中治療のポイントを討議いただきたい.
一歩進んだ凝固線溶異常に対する治療戦略
ICUにおいては,様々な背景病態・原因により凝固線溶異常が発生する.各種の凝固線溶異常に対して,各施設が,実際にどのような検査を行い、何を指標にどのような治療を行なっているかを発表していただき,凝固線溶異常に対する治療戦略について討論いただきたい.
一歩進んだRRS
Rapid Response System(RRS)が院内急変患者の予後改善に寄与することが広く認識されるようになり,本邦においても多くの施設でRRSが構築されつつある.しかし,一口にRRSと言っても,その構成や活動範囲など出動チーム側の要素,また各施設の規模や院内での啓蒙を含めた要請者側の要素も多様であるため,どのようなシステムが最善かは定かではない.各施設におけるRRSの現状を踏まえて,今後さらに良好に機能するRRSを目指した取り組みを発表し,討議して頂きたい
集中治療における薬剤投与のPK/PDを考える
集中治療における薬剤投与では,PK(Pharmacokinetics:薬物動態)とPD(Pharmacodynamics:薬力学)を考慮し,使用する薬物の有効性を最大限に引き出すことが重要である。本パネルディスカッションでは,PK/PDの基本概念と応用を整理し,血液および標的組織における薬剤濃度の側面から、集中治療での薬物治療を考察することを目的とする。