PICS 集中治療後症候群
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身体機能障害
読者の皆様の中で風邪を引いた後にちょっとした運動でも息があがってしまった経験をされた方はいますか?本来ならば歩道橋の階段で息が上がることはないのに風邪が治った直後だと息があがってしまうこと。簡単に説明すると、これがまさにPICSの身体機能障害です。人工呼吸器を装着するような重症患者の約半数で呼吸機能の低下、手足の筋力低下が生じると考えられており、それにより食事、移動、更衣、排泄、入浴などの日常生活動作が著しく低下してしまうことがあります。図1 重症呼吸不全患者の退院後1年間の6分間の歩行距離の推移
重症呼吸不全患者さんの退院後の6分間の歩行距離の推移を示します。6分間の歩行距離とは、呼吸機能と筋力を反映しています。平均年齢45歳の重症呼吸不全を患った患者さんは、1年間経過しても高齢者の歩行距離にも及ばない結果でした。
N Engl J Med 2003;348:683-693をもとに作成
図2 重症疾患後の日常生活動作
高齢者で人工呼吸管理を1週間以上必要とした患者さんの日常生活動作の自立度を示しています。集中治療室を退室1年間経過しても約3割の患者さんしか入浴が自立できていないことを示しています。
Am J Respir Crit Care Med 2016;194:831-844をもとに作成