PICS 集中治療後症候群
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PICSに関連したスケール
PICS対策・生活の質改善検討委員会で実施されたPICSに関連したスケールについてのスコーピングレビューと デルファイ会議の結果が2023年に報告されました [1]。 この結果に基づいて推奨に至ったPICSを評価するためのスケールについてまとめました。身体機能
- 6分間歩行
6分間歩行は6分間に平地を歩行した距離を評価する検査です。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/28/2/28_286/_pdf
- MRCスコア(Medical Research Councilスコア)
全身の12カ所でMMT(Manual Muscle Test:徒手筋力テスト)を評価します。 12カ所には左右の肩外転、肘屈曲、手伸展、股屈曲、膝伸展、足背屈が含まれます。 MRCスコアの合計が48点未満または平均が4点未満であることが ICU-AW(Intensive care unit-acquired weakness:ICU獲得筋力低下)の指標となります [2]。
参考ホームページ:
https://www.rishou.org/wp-content/uploads/2019/10/MRC_score_J.pdf
- 握力
握力は握力計を用いて測定します。
認知機能
- MoCA(Montreal Cognitive Assessment)
視空間・遂行機能、命名、数唱、注意力、計算、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識などを質問紙を用いて評価します。 18–25点が軽度認知症、10–17点が中等度認知症、10点未満を重度認知症と分類されます [3]。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/69/4/69_20-8/_pdf/-char/ja
- MMSE(Mini-Mental State Examination)
時間の見当識、場所の見当識、単語の即時再生と遅延再生、計算、物品呼称、復唱、3段階の命令、書字命令、文章書字、 図形描写の計11項目を評価します。MMSEのカットオフ値を24点とした認知症の診断精度の感度は81%、特異度は89%です [4]。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/66/J-STAGE-2/66_17J2-3/_html/-char/ja
- SMQ (Short-Memory Questionnaire)
最近の出来事などについての質問や遂行機能に関する14項目を評価します。 合計点は46点からなり、40点未満は認知機能障害の可能性があります [5]。
参考ホームページ:
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1406901279
精神機能
- HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)
不安とうつに関してそれぞれ7項目からなる合計14項目の自己評価表です。 HADSは0点から最大21点からなり、8点以上が不安やうつの診断基準に用いられます [3]。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/38/5/38_KJ00002386587/_article/-char/ja/
- IES-R (Impact of Event Scale-Revised)
心的外傷性ストレス症状(PTSD)を評価するための自己記入式の質問紙です。 直近1週間の侵入症状8項目、回避症状8項目、過覚醒症状6項目の計22項目を評価します。 点数が高いほどPTSDの症状が強く、IES-Rの平均点が1.6をカットオフ値としてPTSDを評価します [3]。
参考ホームページ:
https://www.igakuken.or.jp/mental-health/IES-R.pdf
- PHQ-9
うつ病に対する自己記入式の質問紙です。直近2週間にどのくらい9項目について悩まされているか評価します。 うつを1–4 点以下は軽微、5–9 点は軽度、10–14 点は中等度、15–19 点は中等度~重度、20–27 点は重度として評価できます [6]。
参考ホームページ:
https://www.cocoro.chiba-u.jp/recruit/tubuanDB/files/PHQ-9.pdf
ADL
- Barthel Index
日常生活に必要な動作である①食事、②移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥歩行、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便、⑩排尿 の10項目を評価します。0–100点で評価され、85点以上がADL自立と評価されます。
参考ホームページ:
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001239044.pdf
- IADL
高度な日常生活に必要な動作である①電話の使用、②買い物、③調理、④家事、⑤洗濯、⑥交通手段の利用、⑦薬の管理、⑧財務管理 の8項目を評価します。特定のカットオフ値はありません。
参考ホームページ:
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_13.pdf
- FIM
運動項目と認知項目から構成され、運動項目はセルフケア、排泄、移乗、移動の能力、認知項目はコミュニケーション能力と社会認識 (記憶、問題解決、社会的交流)の能力を評価します。FIMの運動項目が76点以上でADLが高いと判断します。
参考ホームページ:
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184198.pdf
QOL
- SF-36(Short Form-36 items)
①身体機能、②身体機能障害による役割制限、③体の痛み、④社会生活機能、⑤全体的な健康感、⑥活力、⑦精神機能障害による 役割制限、⑧心の健康を評価します。36個の項目があります。スコアの幅は0-100点からなり、高い程健康状態が良いと評価されます。
参考ホームページ:
https://www.qualitest.jp/qol/sf36.html
- SF-12(Short Form-12 items)
SF-36同様に①身体機能、②身体機能障害による役割制限、③体の痛み、④社会生活機能、⑤全体的な健康感、⑥活力、⑦精神機能障害 による役割制限、⑧心の健康を評価します。SF-36の簡易版で12個の項目があります。スコアの幅は0-100点からなり、 高い程健康状態が良いと評価されます。
参考ホームページ:
https://www.qualitest.jp/qol/sf12.html
- EQ-5D-5L(EuroQol-5Dimention-5Level)、EQ-5D-3L(5Level)、EQ-5D-VAS(Visual Analogue Scale)
①移動の程度、②身の回りの管理、③ふだんの活動(仕事、勉強、余暇活動など)、④痛み/不快感、⑤不安/ふさぎ込みを EQ-5D-5Lは5段階で、EQ-5D-3Lは3段階、EQ-5D-VASは視覚的なスケールを用いて評価します。 換算表を用いて「完全な健康=1」「死亡=0」と標準化されたスコアを算出します。スコアの幅 は0-1からなり、 高い程健康状態が良いとされ、カットオフ値は0.680が用いられます [7]。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken1991/8/1/8_109/_article/-char/ja/
睡眠
- PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index)
過去1カ月における睡眠の質・入眠時間・睡眠時間・睡眠効率・睡眠困難・睡眠薬使用の有無・日中覚醒困難の7項目を評価する 自己記入式の質問紙です。合計スコアが6点以上の場合、睡眠の質が低いことが示唆されます。
参考ホームページ:
https://www.kanen.ncgm.go.jp/study_download/20111202_02_02.pdf
疼痛
- BPS(Brief Pain Inventory)
痛みの強さに関する4項目と痛みの生活への影響に関する7項目を評価する自己記入式の質問紙です。 特定のカットオフ値はありません。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/8/53_596/_pdf
PICS-F
- HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)
不安とうつに関してそれぞれ7項目からなる合計14項目の自己評価表です。 HADSは0点から最大21点からなり、8点以上が不安やうつの診断基準に用いられます [3]。
参考ホームページ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/38/5/38_KJ00002386587/_article/-char/ja/
- IES-R (Impact of Event Scale-Revised)
心的外傷性ストレス症状(PTSD)を評価するための自己記入式の質問紙です。 直近1週間の侵入症状8項目、回避症状8項目、過覚醒症状6項目の計22項目を評価します。 点数が高いほどPTSDの症状が強く、IES-Rの平均点が1.6をカットオフ値としてPTSDを評価します [3]。
参考ホームページ:
https://www.igakuken.or.jp/mental-health/IES-R.pdf
- SF-36(Short Form-36 items)
①身体機能、②身体機能障害による役割制限、③体の痛み、④社会生活機能、⑤全体的な健康感、⑥活力、⑦精神機能障害 による役割制限、⑧心の健康を評価します。 36個の項目があります。スコアの幅は0-100点からなり、高い程健康状態が良いと評価されます。
参考ホームページ:
https://www.qualitest.jp/qol/sf36.html
参考文献
- Nakanishi N, Liu K, Kawauchi A, Okamura M, Tanaka K, Katayama S, et al. Instruments to assess post-intensive care syndrome assessment: a scoping review and modified Delphi method study. Crit Care. 2023;27(1):430.
- Stevens RD, Marshall SA, Cornblath DR, Hoke A, Needham DM, de Jonghe B, et al. A framework for diagnosing and classifying intensive care unit-acquired weakness. Crit Care Med. 2009;37(10 Suppl):S299-308. doi: 10.1097/CCM.0b013e3181b6ef67. PMID: 20046114
- Mikkelsen ME, Still M, Anderson BJ, Bienvenu OJ, Brodsky MB, Brummel N, et al. Society of Critical Care Medicine's international consensus conference on prediction and identification of long-term impairments after critical illness. Crit Care Med. 2020;48(11):1670-9. doi: 10.1097/ccm.0000000000004586. PMID: 32947467
- Tsoi KKF, Chan JYC, Hirai HW, Wong SYS, Kwok TCY. Cognitive tests to detect dementia: A systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine. 2015;175(9):1450-8. doi: 10.1001/jamainternmed.2015.2152.
- Kawakami D, Fujitani S, Morimoto T, Dote H, Takita M, Takaba A, et al. Prevalence of post-intensive care syndrome among Japanese intensive care unit patients: a prospective, multicenter, observational J-PICS study. Critical Care. 2021;25(1):69. doi: 10.1186/s13054-021-03501-z.
- Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, Muramatsu Y, Tanaka Y, Hosaka M, et al. Performance of the Japanese version of the Patient Health Questionnaire-9 (J-PHQ-9) for depression in primary care. Gen Hosp Psychiatry. 2018;52:64-9. doi: 10.1016/j.genhosppsych.2018.03.007. PMID: 29698880
- 池田俊也, 白岩健, 五十嵐中, 能登真一, 福田敬, 齋藤信也, et al. 日本語版 EQ-5D-5L におけるスコアリング法の開発. 保健医療科学. 2015;64(1):47-55.