PICS 集中治療後症候群
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PICS対策・生活の質改善検討委員会 調査結果
調査の概要
PICS対策・生活の質改善検討委員会では、医療従事者のPICSに関する認知や取組等の現状を把握するため、日本集中治療医学会の会員を対象に、2019年4月8日から22日にインターネットを通して無記名アンケート調査を実施しました。
合計453名より回答をいただき、医師と看護師の回答が多数を占めました(図1)。
PICS等の認知度は6割程度
「PICS:Post-Intensive Care Syndrome」という用語や疾患概念がICUで周知され使用していると答えた方の割合は61%で、「ABCDEFバンドル」という用語がICUで周知され使用していると答えた方の割合は57%でした(図2)。
ほとんどの回答者の施設がPICS対策として早期リハビリテーションを実施
施設で実践しているPICS対策では、早期リハビリテーションが最多の92.1%であり、非薬理学的せん妄ケアが66.2%で2番目に多い結果でした(図3)。
半数以上の回答者の施設が身体・認知・精神障害やQOLの評価を実施していない
ICU患者の退室時あるいは退院時に、身体機能・認知機能・精神障害やQOLの評価をすべての患者に実施していると答えた方は1割程度でした(図4)。
PICS外来やPICSラウンド、家族のフォローアップを実施している回答者の施設は0~1割程度
ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォローアップ外来(PICS外来)、PICS症状の診療を目的としたフォローアップラウンド(一般病棟に対するPICSラウンド)、亡くなった患者の家族をフォローアップする介入をすべての患者に実施していると答えた方はそれぞれ1%以下でした(図5)。
これらは日本集中治療医学会の会員(比較的PICSに関わりのある医療従事者)を対象にした調査結果であり、実際の診療現場では、PICS等の認知度や対策等の実施率は本調査結果よりも低いと推察されます。
PICSの予防と対策は、ICU等の高度急性期や急性期病床だけではなく、回復期や慢性期、さらには地域全体で切れ目なく取り組むことが求められます。
先ずは医療従事者をはじめ多くの方がPICSについて知り、PICSの予防と対策の充実が健康寿命延伸のための大きな課題であると認識することが重要です。
文献
日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善検討委員会. 本邦の診療現場におけるpost-intensive care syndrome(PICS)の実態調査. 日集中医誌 2019;26:467-75.