PICS 集中治療後症候群

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小児集中治療後症候群とは?

PICS-p:Post-intensive care syndrome pediatrics


医療の進歩により、重症患者さんの多くの命を救うことができるようになってきました。 一方で、急性期の治療を乗り切って無事ICUを退室した患者さんやご家族の多くに、 その後、健康に関する様々な問題が生じていることが分かってきました。 これを集中治療後症候群、PICS(ピックス)とよびます。
子供にも集中治療後症候群があり、それをPICS-p(ピックスピー)とよびます。 PICS-pでは次のような症状がみられます(図1)。

患者さんのご家族が健康であることは患者さんにとってとても大切なことですが、 ICUで治療を受けられるお子さんの保護者の方に、急性ストレス症状、PTSD、不安、抑うつといった症状がみられることがあります。 これらの症状は数か月以上続くこともあり、専門家による治療が必要になる場合もあります。 また、お子さんの療育のためにご両親が仕事を辞めざるをえなかったりするケースもあります。
また、お子さんが重症であることは、お子さんのきょうだいに対しても大きな影響を及ぼします。 お子さんが重症であること自体がきょうだいにも大きなストレスになるうえに、どうしても家族で過ごせる時間が減ってしまったり、 我慢しなければならないことが増えてしまったりするからです。
このように、PICS-pとは患者さん本人だけでなく、患者さんをサポートするご家族の健康も含めた広い概念です(図2)。

PICS-pは、子供の成長・発達に影響を及ぼす可能性が心配されていますが、 子供では大人と比べてICUで治療を受ける患者さんの人数がとても少ないこともあり、 世界的に見ても、現時点でまだ詳しいことは分かっていません。

日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善委員会ではPICS-pの現状について調査し、 その後の治療や支援に役立てるためにこの研究を行っています。

図1 PICS-pの症状
PICS-pの症状

図2 PICS-pの概念
PICS-pの概念