PICS 集中治療後症候群
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精神機能障害
基礎疾患としては、うつ状態、うつ・不安、さらにPTSDがICU関連の精神障害発生リスク因子として挙げられています。
また、低い教育レベルやアルコール依存も関連すると報告されていています。 PICSを疑う患者は可能であれば、メンタルヘルススクリーニングを受けるべきであると考えます。現在、PTSD、不安、うつ、などに対してたくさんのスクリーニングテストが存在しますが、PICSに対して決められたスクリーニングテストは存在しません。PTSDの評価としては、IES-R questionnaireが研究では報告されています 。IES-Rは、PTSDの症状評価尺度として国際的に評価が高く、また心理測定尺度としての信頼性と妥当性を検証し、心理検査法として保険診療報酬対象の認可を得ています。不安、うつの評価法としては、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)があげられ、多くの研究で使用されています 。 2018年にイギリスの26のICUが参加した大規模な前向き観察研究を紹介します。16歳以上でレベル3のICU治療を少なくとも24時間以上受けた患者が対象とされ、ICUから退室後の3ヶ月、12ヶ月にアンケート形式でHADSとPTSD Check List-Civilian (PCL-C)を評価しています。その結果、21,633人のICU入室患者のうち、13,155の生存患者にアンケートが送付されて、4,943名(38%)から回答を得ました。うつ、不安、PTSDの割合はそれぞれ、40%, 46%, 22%と非常に高く、かつ一年後にも症状を認めていました(図1)。 18% (870/4943)の患者がうつ、不安、PTSDの全ての基準を満たしていたことは驚くべきことです(図2)。このように、うつ、不安、PTSDは独立して存在するのではなく、高率にオーバーラップする、という認識が極めて重要です。 ICU治療後のメンタルヘルス障害の病態については、不眠や睡眠の質の低下が一因とも報告されていますが、現在も各研究が続けられており、今後の成果が待たれるところです。 |
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文献
2. Hatch R, Young D, Barber V, Griffiths J, Harrison DA, Watkinson P. Anxiety, Depression and Post Traumatic Stress Disorder after critical illness: a UK-wide prospective cohort study. Crit Care. 2018;22(1):310.