ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-861-FP-346 胸腺腫摘出術後に重症筋無力症クリーゼを発症した症例熊本労災病院 麻酔科橋本 正博、成松 紀子【症例】63歳女性。49歳頃に健康診断で胸部異常陰影を指摘されていたがその後フォローなし。咳嗽を主訴に受診し、胸部CTで径15cmの左胸腔内腫瘍を指摘された。画像上胸腺腫の可能性もあったものの、栄養血管が豊富なため経皮的組織診断は行わず、胸腔鏡補助下腫瘍摘出術が予定された。呼吸機能検査で%VCが65.6%と低下していたが、術前に重症筋無力症を疑わせる所見は認めなかった。硬膜外麻酔併用全身麻酔で手術を施行した。術中経過は特に問題なかった。手術当日、抜管後にICU 入室し、特に著変なく翌日に退室、その後も特に問題なく経過していた。摘出した腫瘍は異所性胸腺腫と診断された。POD12より夜間の呼吸困難感を自覚し始め、POD14 に突然意識消失し、呼吸状態が悪化したため気管挿管を施行、人工呼吸管理を開始し、ICU へ再入室となった。症状は呼吸筋麻痺に限局しており、四肢麻痺や眼瞼下垂などは認めなかった。再入室後の採血で抗アセチルコリン受容体抗体が陽性であったことより、再入室後8日目に重症筋無力症クリーゼの診断に至った。診断確定までの間に肺炎を合併したため、免疫グロブリン静注とステロイドパルス療法により治療を行った。呼吸機能の改善は乏しく、再入室後21 日目に気管切開施行、25日目に退室した。再入室後75日目に人工呼吸器から完全に離脱し、82日目に気管切開カニューレを抜去した。残存する胸腺の摘出の検討のためセカンドオピニオンも依頼したが、胸腺腫摘除後なので非胸腺腫例として扱うのが妥当と判断され、腫瘍摘出後1年経過時点ではステロイド内服での治療が継続されている。【まとめ】胸腺腫摘出術後に重症筋無力症クリーゼを発症した症例を経験した。診断に時間を要し、その間に肺炎を合併するなど治療方針の決定に苦慮した。また、最新の重症筋無力症診療ガイドラインでは非胸腺腫例での胸腺摘出術の根拠は弱いとされ、治療方針決定にはより慎重な判断が求められている。FP-347 粘液水腫性昏睡における副腎皮質ステロイド投与の効果1)岡山大学病院 高度救命救急センター、2)製鉄記念八幡病院 救急・集中治療部松尾 瑞恵1)、海塚 安郎2)粘液水腫性昏睡は重度で長期の甲状腺ホルモン欠乏に何らかの誘因が加わって発症し, ホルモン補充療法に加え補助療法(呼吸・循環管理,corticosteroids投与, 誘因除去)を要する. 腸管蠕動・吸収が障害され経腸投与困難である一方, 国内の甲状腺ホルモンは経口剤のみに限られ迅速な補充は容易ではない.今回,子宮留膿症破裂,敗血症性ショックを契機に粘液水腫性昏睡を発症し,極度の生体反応抑制により侵襲に対応不能であったが,corticosteroids投与が奏効し救命し得た症例を経験した.76歳女性.10年前に白斑症,うつ症状,1年前から性格変化,活動性低下,2か月前から腹痛があり,意識障害を主訴に搬送された.大量心嚢液貯留から原発性甲状腺機能低下症の診断に至り,T4製剤12.5μg/日を開始.Day3,WBC・CRP高値,肝腎障害,凝固障害,低換気,低体温を認め,Day4,子宮留膿症破裂が判明.呼吸不全・ショックに陥り緊急手術を行った.術後覚醒遅延,自発呼吸なく低血圧が持続し,粘液水腫性昏睡を疑った. 遊離T4 は検出限界以下で迅速な改善は期待できず, 代替え抗ストレスホルモンとしてhydrocortisone 100mg × 3/ 日を開始. 約12時間後, 意識レベルが改善し自発呼吸も出現. 依然として遊離T4 は検出されず, 症状改善はcorticosteroidsにより代謝機能が補完された効果であると考えられた.当初血中cortisol高値(随時測定値53.0μg/ml)であったが,これが甲状腺機能を代償していることの表れだとすれば, 副腎予備能も低下していたことも考えられる.教科書的には甲状腺機能低下症におけるcorticosteroidsは副腎不全が否定されるまでの投与だが,今回は遊離T4・TSHが正常化し甲状腺による代謝機能が十分であると判断できるまで継続した. その後, 腹腔内膿瘍を形成したものの, 会話・経口摂取可能なまでに回復し,Day58 に療養型病院へ転院した.粘液水腫性昏睡において,T4の経腸補充は可能であった. また, 代謝改善目的のcorticosteroids投与は臨床症状改善に有効であった.FP-348 レボチロキシン坐剤が有効であった、粘液水腫性昏睡の一例北海道勤医協中央病院 麻酔科大方 直樹、高桑 良平、田中 進一郎、五十嵐 謙人【はじめに】粘液水腫性昏睡は稀な病態であるが死亡率が25~60% と高く、甲状腺ホルモンを早急に開始しつつ、集中治療管理をおこなうべき、内分泌救急疾患の一つである。今回、坐剤でレボチロキシンを投与し、有効であった症例を経験したので報告する。【症例】53歳男性。主訴:歩行困難、全身倦怠感。既往歴: 冠動脈硬化症。現病歴:4ヶ月前、胸水と心嚢水を指摘され橋本病の診断で他院に入院、胸水ドレナージと甲状腺ホルモン剤投与をおこない、1ヶ月で退院。その後通院を中断していた。当院入院当日の朝、シャワー中に立てなくなり、夜に家族が帰宅するまでその場に座っていた。その後当院に救急搬送された。来院時現症:意識レベル JCS3、無気力、 全身浮腫著明、血圧 138/76 mmHg、脈拍 77 /min、呼吸数20 /min、 SpO2:80%台(リザーバーマスク10L/min)、体温34.7℃。顔面、四肢、体幹に浮腫を認めた。検査所見:胸部写真で右胸水著明、UCGで心嚢水あり。血液検査では、甲状腺刺激ホルモン(TSH) 288.8μIU/mL、遊離サイロキシン(FT4)0.16 ng/dLで、著明な甲状腺機能低下を認めた。臨床経過:右胸水ドレナージ後、ICU入室しNPPVを開始、呼吸状態は一時改善した。経鼻胃管からレボチロキシン50μg投与したが、胃管のクランプ解除後、胃液の排液が500mLあり。レボチロキシンの吸収が十分であったか不明であった。ICU2日目にCO2ナルコーシスとなり、気管挿管をおこなった。レボチロキシン坐剤50μg/日の投与を開始し、その後レボチロキシン坐剤150μg+チラーヂン末坐剤40mgに増量した。遊離トリヨードサイロニン(FT3)、FT4は改善し、ICU10日目に人工呼吸器を離脱した。現在も入院治療を継続中である。