ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-860-FP-343 ICDSC を使用したことによるスタッフの意識変化について1)社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 看護部、2)社会医療法人 共愛会 戸畑共立病院 麻酔科岡村 慎太郎1)、桂 麻理子1)、白土 奈央1)、増田 直樹2)【はじめに】近年、せん妄評価ツールを活用しせん妄の予防や早期発見、早期回復への援助を行うことが重要といわれている。しかし、当ICUではせん妄に対して有用性のある評価ツールを用いていない。看護師の経験に基づいたせん妄評価は見逃しが多いと報告されているが、各スタッフの判断による対応が現状である。そこで今回、スタッフのせん妄に対する理解度の把握を行いICDSC 導入した。また、ICDSC 導入前後でのせん妄発生率の集計を行った。導入に伴いせん妄に対するスタッフの意識変化がみられたためここに報告する。【研究方法】1. 当ICU スタッフ26 名に対しせん妄についての理解度の調査を行った。2.ICDSC使用前後のせん妄評価を行った。3.ICDSC使用後アンケート調査を行い評価スコアの改定とせん妄評価を行った。【結果】理解度調査の結果、せん妄という言葉をスタッフ全員が理解していた。ICDSC使用前ではせん妄が疑われる患者は20%、使用後ではせん妄が疑われる、今後せん妄を引き起こす危険がある患者は32%と使用後の方が多い結果となった。ICDSC 使用後のアンケート結果から61%のスタッフにせん妄に対しての意識の変化がみられた。この結果と使用後のアンケート結果をもとに評価スコアの表記改定、せん妄リスク対象患者の選定を加えた。改定後はリスクがある患者の明確化、表記変更により評価がより容易に出来るようになったことが考えられるそれに伴いせん妄に対しての意識がより高まったのではないかと考える。【結論】ICDSC使用後のアンケート結果、調査期間中はチューブ類の事故抜去といった医療事故の減少がみられたことからICDSCの導入は意識の変化には有用であったと考える。今回は独自での評価ツールの改定を行ったばかりでありデータも少ないため、今後も定着をはかるためにも引き続きせん妄評価をおこなっていく。FP-344 糖尿病の酸素化への影響 ー分離肺換気における検討兵庫県立尼崎総合医療センター山中 秀則、山長 修、木山 亮介、前川 俊、進藤 一男背景: 糖尿病は、高血糖が持続することで様々な臓器障害をきたす疾患である。近年、肺機能への影響が指摘されているが、ガス交換能への言及はない。一方、呼吸器外科手術における分離肺換気では、換気血流比不均等と低酸素性肺血管収縮により動脈血酸素分圧は低下する。糖尿病の酸素化への影響は、低酸素血症を来しやすい状況でより明確になるのではと考えた。そこで、糖尿病患者では酸素化能が低下すると仮定し、分離肺換気での吸入酸素濃度、動脈血酸素飽和度を後ろ向きに調査、検討した。方法: 対象は、2013 年1 月から2015年6月の間に当院で施行された肺切除術(部分切除術、肺葉切除術、全摘出術)を受けた患者のうち喫煙歴がない患者で、糖尿病群と非糖尿病群に分けた。HbA1c(NGSP)>6.2%を糖尿病群とした。麻酔記録より年齢、身長、体重、分離肺換気中の吸入酸素濃度、動脈血酸素飽和度、術前検査よりHbA1c を後ろ向きに調査した。酸素化能はP/F値で示した。分離肺換気中、動脈血ガス分析がなされてない症例は除外した。結果: 対象は300人、喫煙歴のない患者は82人であった。このうち、糖尿病群は12 人、非糖尿病群は45 人であった。各群で動脈血ガス分析のない症例は除外した。年齢、Body Mass Index、HbA1c、P/F 値は、糖尿病群では、70.4 歳、24.6 ± 4.7、7.0 ± 0.7%、186.2 ± 65.0、非糖尿病群では、66.9 歳、24.3 ± 6.2、5.6 ± 0.3%、211.8±107.7であった。結語: 糖尿病患者と非糖尿病患者の肺切除術において、分離肺換気中の動脈血酸素飽和度を後ろ向きに調査し比較した。P/F 値で有意差はみられなかったが、糖尿病患者で低い傾向が示された。今回の調査について、文献的考察を加えて発表する。FP-345 失神で来院し診察中に心室細動となった甲状腺クリーゼの一例聖路加国際病院 救急部鈴木 皓佳、磯川 修太郎、遠矢 希、田中 裕之、三谷 英範、三上 哲、望月 俊明、大谷 典生、石松 伸一【症例】53歳男性。特記すべき既往なし。来院1ヶ月前からの咽頭痛、筋肉痛と、進行する全身倦怠感と脱力を認めていた。来院当日、意識消失発作主訴に救急搬送。来院時意識清明であり、血液検査、心電図含めて特記すべき所見を認めていなかったが、診察中に特に誘因なく心室細動をきたした。直ちに心肺蘇生を開始し、2 度目の除細動で自己心拍再開。その後施行した冠動脈造影では優位狭窄を認めなかったが、アセチルコリン負荷により冠動脈攣縮を認めた。入院後の血液検査でトリヨードサイロニン、サイロキシンの高値と甲状腺刺激ホルモンの低値を認め、甲状腺クリーゼと診断。さらに抗サイログロブリン抗体陽性からバセドウ病と診断し、治療を開始した。集中治療室での脳低温療法施行後は意識清明に改善。神経学的後遺症は認めなかった。植え込み型除細動器の植え込みを行い、第21病日に独歩退院となった。 【考察】甲状腺機能亢進症では心房細動の合併が有名であるが、心室性不整脈の合併も報告されており、また冠動脈攣縮との関連の報告もある。本症例では甲状腺機能亢進症の直接的または間接的に関与した可能性がある。原因不明の心室性不整脈に対しては甲状腺機能の確認が診断の一助になる可能性がある。また、甲状腺機能亢進症患者に対してもクリーゼを呈した場合は心室性不整脈のリスクの説明が必要であると思われる。(576文字)