ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-851-FP-316 ABCDEFsバンドルのF の評価方法- 食援助や口腔ケアによるケアリング効果の文献的考察-1)富山大学大学院 医学薬学研究部 地域医療支援学講座、2)荒木脳神経外科病院有嶋 拓郎1)、佐藤 理恵2)【背景】集中治療患者の早期離床のために、多職種が連携してABCDEs バンドルを実施する重要性が強調されている。最近ではF(Family involvement and encouragement)も加えられ、より広範な連携の上で展開される集中治療が世界の方針となりつつある。しかし家族との連携についての標準化と評価項目は示されていない。口腔ケアや食援助は早期から家族との連携が図られてきた領域であり、評価方法の一つとして相互信頼(involvement)と相互成長(encouragement)の意味を包含するケアリングの取り扱いを調べてみることにした。【方法】Pub Med、Medline を使い1980 年以降に発表された論文でcaring、mouth care、Swallowingdifficulty、dysphasiaなどのキーワードで文献検索を実施し内容を分析した。【結果】18件の論文が検索された。ケアリングをアウトカムに含んだ研究論文は4件あり患者と介護者の関係性に言及したものが3 件、介護者への教育効果を知識で評価したものが1件であった。家族を評価対象にした論文は2件あり、未熟児と母親、頭頚部がん患者と配偶者でケアリングを含む内容の調査が実施されていた。Care-Q やCBA(Caring Behaviors Assessment)のような検証済みのキットでなく独自の質問票が使用されている論文がほとんどであった。総じてケアリング形成に肯定的結果であった。【考察】ケアリングはケアを受ける人、ケアに携わる人が影響し成長しあう臨床現場のリアリティを表現している。しかし定義が複数あり、評価方法もいくつも存在していて概ね煩雑である。集中治療患者のFの評価とするには克服すべき課題がある。【結語】ケアリングはABCDEsバンドルのFの評価に応用出来るかもしれないが容易でない。FP-317 当院における早期リハビリテーションへの取り組み東大阪市立総合病院 麻酔科森下 淳、山木 良一、熊野 穂高、小松 久男当院集中治療室(4 床)は、2014 年度に集中治療専門医が着任後、麻酔科医増員も追い風となり、open 型からsemi-closed 型の運用形式に変更された。現在ではEBMや各種ガイドラインに則った医療提供を目指し、例えば早期リハビリテーションにも力を入れている。これまでには、積極的なベッド上リハビリはもちろん、人工呼吸器離脱前の歩行訓練を行う症例も複数経験した。しかし、以前の過鎮静や進まない呼吸器weaningのレベルから、この段階に至るまでには(幸運もあったが)様々な苦労があった。今回これまでの過程を振り返り、現在の問題点や今後の展望をまとめた。 早期リハビリ導入にあたり、最も重要なことは主治医や看護師をはじめとする医療従事者の教育・意識改革であった。講義形式で「鎮痛鎮静」や「人工呼吸」などの項目をテーマにした学習会をとっかかりとし、実例を通して経験を積み重ねた。症例を重ねていくうちに、ICU患者でも「意思疎通が可能」、「リハビリが可能」という意識が徐々に浸透した。また、臨床工学技士(CE)や理学療法士(PT)をまきこみ、目に見えて患者の状態が改善していく感覚を皆で共有できたことは大きい。周辺環境としては自発呼吸の対応可能な携帯型人工呼吸器の導入により、離床が容易となった。段階を踏んだあと歩行訓練を行うが、スペースは非常に限られており、ICU 内での訓練は事実上難しい。この点については隣接する一般病棟に協力してもらっている。さらに院内の臨床工学技士が増員され日中の迅速対応が可能となったことも幸運であった。問題点は、未だ系統だったプロトコールが存在しない、ICU 専属のCE やPTがいない、人員不足から休日のリハビリがすすまない、一般病棟へ転室後のリハビリ継続の問題などがあげられる。 当院の施設環境は必ずしも恵まれていないが、良好なチーム医療の実践により、最終的にはICU 入室患者が「早いうちに歩いて退院」できることを目指したい。FP-318 不活発型せん妄が原因で人工呼吸離脱に苦慮した1 症例愛知医科大学 医学部 麻酔科学講座赤堀 貴彦、藤田 義人、木下 浩之、佐藤 祐子、下村 毅、橋本 篤、畠山 登、安田 吉孝、吉野 博子、藤原 祥裕(はじめに)せん妄はICU 患者の独立した予後不良因子であるが、診断で見落とされるケースも多い。診断ツールとしてはCAMICUとICDSCがあり、当院ではCAM-ICUを用いているがそれぞれ一長一短がある。今回不活化型せん妄が原因で喀痰排出困難となり2度の再挿管を要した症例を経験したので報告する。(症例)67歳の男性。既往に、高血圧、狭心症、脳梗塞、アルコール性肝障害。腹部大動脈瘤破裂に対し緊急で人工血管置換術が施行された。術後酸素化良好で抜管したが腹痛を訴え酸素化悪化し再挿管された。創部痛のため深呼吸や喀痰の排出ができなかったことが原因と考えられ傍脊椎神経ブロック及びカテーテルの留置に、フェンタニルも併用し疼痛コントロールしたうえで抜管した。抜管後適宜カテーテルから局所麻酔薬の投与を行い、疼痛のコントロールはできていたにもかかわらず再び喀痰の排出と深呼吸が困難、酸素化も悪化したため挿管した。2度の喀痰排出困難により再挿管を要したためミニトラックを留置し抜管した。その後は呼吸状態の悪化も見られず、ミニトラック抜去してICU退室となった。後の問診でICUでの経過で受け答え等は十分であり、CAM-ICUではせん妄なしと診断されたが、当時の受け答えの記憶が全くなく、またミニトラック挿入後の精神活動性がその前に比べて明らかに活発であったことから不活発型せん妄による意欲の低下が喀痰排出困難の原因と推察された。(考察)術後ICU 患者は活発型、不活発型、混合型がそれぞれ0.7%、88.6%、10.8%との報告もあり、不活発型が多い。脳梗塞、アルコール性肝障害の既往と、受け答えに矛盾のないことによりCAM-ICUでは「1.急性発症または変動性の経過」が確定しない時点でせん妄なしの評価になり、不活発型のせん妄の診断を見落とされたことが強く疑われた。慎重なせん妄の診断が重要である。