ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-848-FP-307 意識障害で来院し、致死的心室性不整脈と痙攣を呈した三環系抗うつ薬過量服薬の一例独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター岡田 信長、小田 裕太、藤野 光洋、狩野 謙一、大木 伸吾、藤井 雅士、田中 博之、竹下 淳、別府 賢、志馬 伸朗【背景】薬物中毒の診療では,原因薬物の同定及び治療介入のために病歴聴取が重要であるが,確かな服薬情報を把握できないことも多い。今回,意識障害で来院し,内服歴にない三環系抗うつ薬(TCA)過量服薬による致死的合併症を呈した一例を経験したので報告する。【症例】双極性障害,てんかんで精神科通院中の26歳,女性。母親と口論の末にトイレで意識障害の状態で発見され救急搬送された。来院時バイタルサインはGCS=3 点,呼吸数17/ 分,心拍数116/ 分,血圧101/64mmHg,SpO2:96%(roomair)であり,12誘導心電図にてQTc延長(549sec),QRS幅拡大(150ms)を認めた。尿薬物検出用キットにてTCA反応陽性であり,TCA中毒を疑い8.4%炭酸水素Na点滴静注で治療開始したが,程なくして突然の心室細動/無脈性心室頻拍,痙攣重積を来した。直ちに二次救命処置を開始するも心室細動は難治性であったため,体外式心肺補助装置を導入した。痙攣に対してフェニトイン静注およびプロポフォール,ミダゾラム持続投与にて治療し,内服歴からはリチウム中毒の可能性も否定できず,血液透析も施行した。36 時間後,心室性不整脈を認めず,循環動態も安定していたため体外式心肺補助装置より離脱し,106時間後には人工呼吸器離脱/抜管しえた(抜管後GCS=11)。神経学的予後も脳機能カテゴリ-=1と良好であったため第13病日に独歩退院とした。臨床経過に加え,第1病日に採取した血液検体でTCAの一種であるアミトリプチン,同代謝物のノルトリプチリンの合計血漿中濃度は1379ng/mlと高値で,病歴より国外市販のアミトリプチン製剤の空ボトルが見つかったことより,アミトリプチン中毒と診断できた。【考察】薬物過量摂取に伴う意識障害患者では,内服薬剤の種類や量が不明確な場合も多い。TCA 中毒は,致死的な心室性不整脈を来す可能性があり,心電図所見などでその可能性を評価すると共に,十分なモニタリング下に全身観察を行う必要がある。FP-308 気胸術後にハロペリドールによると思われる悪性症候群を発症した1 例昭和大学 医学部 麻酔科学講座丸井 輝美、上嶋 浩順、中川 元文、真一 弘士、大嶽 浩司29歳の男性。身長174cm、体重63.4kg。右自然気胸の再発に対して胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した。気胸以外に既往歴・手術歴はなく、アレルギー歴もなかった。麻酔は全身麻酔と区域麻酔で行った。麻酔経過、手術経過は順調であり、手術時間は55分、麻酔時間は105 分だった。手術室退室時、患者は意識清明であり、NIBP は108/50mmHg、HR99bpm、SpO2100%(マスク4l/min)、直腸温は36.8℃であった。帰室7時間後、患者が不眠を訴えたため、ハロペリドール5mgを点滴静注された。ハロペリドールの投与6 時間後、痙攣・筋拘縮・意識障害を発症した。意識レベルはE4V1~2M5、体温38.3℃、発汗著明であり、頭蓋内病変、中枢神経の感染症、悪性高熱症、悪性症候群などを疑い、集中治療室に入室した。CT所見では頭蓋内に脳出血などの器質的病変はなく、ハロペリドール投与後であったことと、38.0℃以上の体温の上昇、筋強剛、局所的な痙攣、精神症状の変化、頻呼吸、発汗、振戦、CKの上昇から、悪性症候群やセロトニン症候群を考えた。ハロペリドール使用後であることから悪性症候群が最も疑われ、補液とクーリング、ダントロレンナトリウムの点滴静注を開始し経過観察を行った。ICU 入室から半日後、意識障害、局所的な痙攣、筋拘縮などの症状は変化がなかったが、頻呼吸と大量の喀痰の分泌があり、マスク6l/min でSpO2が70%台まで低下した。悪性症候群による呼吸状態の悪化と考え気管挿管し、人工呼吸管理とした。CKは2114 まで上昇し、翌日には低下傾向となった。3日後には意識もE4VTM6 と回復し、症状も軽快したため抜管した。抜管後の呼吸状態も落ち着いていたため、発症6日後、一般病棟に転棟した。悪性症候群では、治療の遅れが重症化につながるため、発症早期の治療開始が重要である。今回は発症後の治療開始と対症療法が迅速に行われたため、致命的な結果を防ぐことができたと考える。FP-309 違法薬物吸入による心停止が疑われた1 例1)熊本市立熊本市民病院 救急診療部、2)熊本市立熊本市民病院 集中治療部赤坂 威史1)、城 嘉孝2)違法薬物吸入による心停止が疑われた症例を経験したので報告する.【症例】18歳、男性【主訴】意識障害【現病歴】某日夜、友人宅で飲酒していた。翌朝、意識障害・自発呼吸低下を来しているところを発見され救急搬送された。「葉に火をつけて吸入した後に、状態悪化を来した」との事後情報があった。【来院時現症】意識レベル;JCS 3-200、BP 84/45、HR 120、SpO2 80%(R/M15L)。2 型呼吸不全の状態であったため気管挿管、人工呼吸を開始した。アドレナリン1mg で心拍再開するものの短時間で心停止となる状態を頻回に繰り返すため、PCPSおよびIABP を装着してICU 入院とした。【入院経過】第3 病日にPCPS、第4 病日にIABPを離脱した。鎮静薬中止後、意識レベルが清明となったため、第5病日に人工呼吸を離脱、抜管した。横紋筋融解症、PCPSカテ抜去部の上皮化不良、微熱の持続などを併発したが、経口摂取良好となり自力歩行可能となったため、第15病日に自宅退院とした。【考察】発症状況から、心毒性の強い、いわゆる危険ドラッグが中毒原因物質であったと思われた。警察に薬物鑑定依頼したが、同定できなかった。危険ドラッグ取り締まりは「イタチごっこ」となっているのが現状であり、社会への薬物の波及防止が困難となっている。救急・集中治療領域において危険ドラッグ中毒に遭遇する機会が増加する可能性がある。