ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-846-FP-301 プロポリスが誘因と考えられたアナフィラキシーショックから劇症肝炎を併発し、不幸な転帰をたどった1 例済生会熊本病院 救急総合診療センター関戸 祐子、尾崎 徹、川野 雄一朗、高木 誠、中山 雄二朗、福永 崇、菊池 忠、白井 純宏、具嶋 泰弘、前原 潤一【症例】60代男性【既往歴】蜂アナフィラキシー【現病歴】某日,就寝中に右第2指をムカデに刺された.健康食品であるプロポリス(蜂成分)を傷口に塗布, その後呼吸困難と意識障害が出現し近医へ救急搬送, アナフィラキシーショックの診断で初期治療が行われ, ショックは速やかに離脱していた. しかし翌朝, 肝機能障害と下血を認め, 当院へ紹介転院となった.来院時, 意識は清明で呼吸循環動態は安定していたものの,肝・腎障害,DICと多臓器不全状態であり,中でもAST 26608IU/l,ALT 2725IU/l,LDH 15371IU/l,PT20.5% と著明な肝機能障害を呈していた. 腹部造影CTでは広範に肝梗塞を認めた. 下血の原因は虚血性腸炎と考えられた. 輸液, 抗菌薬,トロンボモデュリン製剤の投与などを始めとした全身管理を開始した.入院後腎機能が急激に悪化し,第3病日には持続血液濾過透析を導入した.第4病日に意識障害が出現した.第7病日には呼吸状態の悪化を認め,気管挿管の上人工呼吸管理を開始した.新鮮凍結血漿(FFP)を投与をすることなく保たれていたPTが徐々に延長し,第9 病日にFFP補充を開始した.第18病日に急な発熱を認め, カテーテル関連血流感染を疑い,抗菌薬を変更した.FFP補充にもかかわらずPTの維持が困難で,意識障害も遷延していたため,第25病日に亜急性型劇症肝炎と診断したが, 全身状態はきわめて不良で,積極的治療は困難であった.第28病日に敗血症性ショックをきたし死亡に至った.病態解明のために, ご家族の同意を得て病理解剖を行った.病理所見では,肝臓の高度萎縮, 及び肝,脾に多数の梗塞巣が散在している以外有意な所見はなかった. 劇症肝炎の原因としては, プロポリスを原因物質とするアレルギー的な機序やDICからの肝梗塞が考えられた【. 結語】プロポリスが誘因と考えられたアナフィラキシーショックから多臓器不全となり,更には劇症肝炎を併発し, 急激な臨床経過をたどった1 例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.FP-302 著明な低血糖を来した重症敗血症の一例1)東北大学病院 集中治療部、2)東北大学病院手術部、3)東北大学医学部麻酔科学教室宇井 あかね1)、齋藤 浩二1)、亀山 良亘1)、吾妻 俊弘3)、江島 豊2)、星 邦彦1)敗血症に伴う症状として低血糖は一般的ではなく、本邦での報告例は少ない。今回我々は経過中著明な低血糖を呈した重症敗血症の一例を経験したので報告する。症例は35歳男性。慢性リンパ管腫の診断で当院内科にて外来フォロー中であった。2015 年6 月に腹痛があり当院に救急搬送された。救急外来では酸素10L/ 分投与でPaO2 56mmHg と著明な低酸素血症を呈した。胸部X 線写真上胸水、肺うっ血が強く認められ、肺炎の可能性も否定できず入院となった。ICU 入室後気管挿管施行し人工呼吸を開始した。血圧低下に対し輸液、カテコラミン投与を行ったが反応は鈍かった。ピトレッシン投与で血圧を維持したが代謝性アシドーシスが急速に進行し、ICU入室22 時間後に永眠された。本症例は慢性リンパ管腫による両下肢の肥大があったが、特に右下肢の腫脹、浮腫が著しく来院時から経時的に色調不良、熱感の増悪を認め、ここが感染源と考えられた。来院時の血糖は93mg/dlであったが、1時間後に47mg/dl、約5時間後には0 mg/dlとなった。その後グルコース投与を行ったが改善を認めず、低血糖を脱したのは約9時間後であった。敗血症に伴う低血糖の原因として感染による糖消費の増大、糖新生の障害などが考えられるが本症例ではグルコース投与への反応が鈍く、感染が極めて重篤であったことを反映している可能性も考えられた。FP-303 腫瘍崩壊症候群により多臓器不全を来たしたが集学的治療により救命できた1 例埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科加藤 崇央、青柳 瑠美子、久保田 麻由、保科 真由、黒川 右基、肥塚 幸太郎、小山 薫【はじめに】腫瘍崩壊症候群(TLS)はoncologic emergencyの1つで、致死率は40%とまで言われている。今回、TLSにより急速に多臓器不全を来した症例を経験した。【症例】67歳男性。膵体部に10cm大の巨大腫瘍を認め紹介となった。入院3日目からステロイドの先行投与を行ったが、入院7日目に呼吸不全を呈し人工呼吸管理となった。腎不全も急速に進行し、病理診断を待たず化学療法(CHOP療法)が開始された。B細胞悪性リンパ腫が疑われTLSの高リスク症例としてフォローしていたが、化学療法開始後早期に急性腎不全、循環不全、高リン血症、高カリウム血症が進行し、TLSに伴う多臓器不全の診断でICU入室となった。ICU入室時、FiO2 1.0 でPaO2 60 mmHg、収縮期血圧60 mmHg であった。APRV(airway pressure release ventilation)モードによる人工呼吸管理、ノルアドレナリン~1 μg/kg/min等による循環管理、持続血液濾過透析(CHDF)、感染治療、血糖コントロールなどの集学的治療により全身状態は徐々に改善、入室4日目にCHDFから離脱、入室5日目に抜管、入室7日目に一般病棟に転床した。病理診断は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB type)であった。【考察と結論】本症例はTLSの高リスク症例であり、急速に重篤な多臓器不全が進行した。重症TLS患者では致死率も高くICU での早期からの全身管理が救命のために必要不可欠である。