ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-845-FP-298 無症候性に進行する臓器不全、短腸症候群に合併した真菌感染症によるcryptic shockの一例済生会熊本病院 集中治療室中村 通孝、西上 和宏、柴田 啓智、永野 雅英、高志 賢太郎、上杉 英之、中尾 浩一【背景】敗血症性ショックにおいてCryptic shock(血圧は正常も乳酸値が4mmol/L以上の上昇を認める状態)はOvert shock(20ml/kg以上の細胞外液投与後も低血圧が持続する状態)と比較し死亡率に差はなく、早期の積極的介入が必要と報告されているが早期発見は容易ではない。今回血圧の低下は認めず、無症候性に進行する臓器不全から、最終的にOvert shockと診断した真菌感染症によるcryptic shockと思われる一例を経験したため報告する。【症例】糖尿病、低左心機能、中等症の僧房弁逆流、慢性心房細動からの上腸間膜動脈閉塞症による小腸壊死のため広範囲小腸切除後短腸症候群のため中心静脈ポートが留置されていた72歳男性。ポート植え込み後2 か月より、時に40 度の発熱を認める間欠熱を主訴に当院を受診し精査のため入院となった。入院後も間欠熱は持続し入院時血圧は138/72mmHg、体温:37.5 度であり、自ら独歩で売店まで行動していた。以後も収縮期血圧は100-120mmHg、画像では明らかな発熱のfocusは認めず、採血では原因不明もCre:1.32mg/dLが4.22mg/dLと進行する腎障害を認めていたが、vitalは著変なく経過観察となっていた。最終的に中心静脈ポート感染の疑いでポートを抜去。その際β-Dグルカンが600pg/mlと高値であり、深在性真菌症の疑いでミカファンギンを開始した。同日夜より血圧と意識レベルが低下したことからICU に入室。敗血症性ショックからの多臓器不全と診断した。治療経過中3 回心室細動を来し、腎不全からの持続的血液濾過の使用や肺胞出血なども合併したが、会話可能な状態でICU32 日目に退室となった。【結語】敗血症性ショックの6.5% に真菌によるとの報告があるが、今回血圧は維持され無症候性に進行する臓器不全から、最終的にOvert shockへと至った真菌感染症の一例を経験した。原因不明の臓器障害を認めた時点で乳酸値が測定出来ていればcryptic shockとして発見するのに有用だったかもしれない。FP-299 重症敗血症患者へのプレセプシン継時的モニターは予後予測に有用である~プロカルシトニン,CRPとの比較~金沢大学附属病院 集中治療部佐藤 康次、中村 美穂、余川 順一郎、相良 明宏、関 晃裕、北野 鉄平、越田 嘉尚、野田 透、岡島 正樹、谷口 巧【目的】重症敗血症患者におけるプレセプシン値の継時的モニタリングがプロカルシトニン,CRP と比較し予後予測に有用かを検討した。【方法】重症敗血症にて当院ICUへ緊急入院し,継時的にプレセプシン,プロカルシトニン,CRPを測定し得た重症敗血症症例を後ろ向きに調査した。患者カルテ,ICU チャートよりデータを抽出し,60日死亡,ICU再入室となった患者を予後不良と定義した。【結果】対象症例は16例で予後良好群が10例,予後不良群が6例,平均年齢 57±17歳,男性 11例,女性4例であった。感染源として,肺(7例),尿(2例),腹膜炎(3例),その他(4例)で,入室時の平均SOFAスコア 7 点,APACHE2 スコア18.3点,うち菌血症を呈したものは5例(31.3%)であった。経過中のステロイド使用症例は9例(56.3%)であった。プレセプシン,プロカルシトニン,CRP 値のday 0~3, day 5~7 の値をそれぞれ抽出し継時的変化につき検討した。予後良好群では3 つのバイオマーカーともに有意な低下を示した。予後不良群においては症例数が少ないため有意な差は認められなかったが,プレセプシンにのみ上昇傾向が認められた。3つのバイオマーカーにつき予後不良を予測するROC解析を試みたところ,day5~7のプレセプシン値がACU 0.88(0.55 - 0.98)とその他と比較し最も有用であった。【結論】重症敗血症患者におけるバイオマーカーの中で,プレセプシンが予後不良を予測するにあたり,最も有用である可能性がある。FP-300 細菌感染にも関わらずプレセプシンが高値を示さなかった敗血症性ショックの1 例1)山形大学 医学部附属病院 卒後臨床研修センター、2)山形大学医学部附属病院 高度集中治療センター、3)山形大学医学部附属病院 麻酔科早坂 達哉1)、渡邉 具史3)、宇賀神 のりえ3)、大滝 恵3)、飯澤 和恵3)、小野寺 悠2)、鈴木 博人2)、中根 正樹2)、川前 金幸3)プレセプシン(PSEP)は新しい細菌感染のマーカーであり,最近その有用性に関して多くの報告がなされている。しかし臨床において, 腎不全における偽陽性についての報告はあるが偽陰性についての報告はほとんどない。今回, 細菌感染による敗血症と診断されたにも関わらずPSEPがカットオフ値以下であった敗血症性ショックの症例を経験したので報告する。【症例】85歳の女性。午前中に子宮体癌疑い・子宮留膿腫の診断で子宮内膜生検施行され帰宅。同日16 時に高熱と意識障害が出現し家人が救急要請, 当院救急部に搬送された。受診時,HR 160bpm,sBP 66mmHg,SpO2 100%(10LRM),JCS 20,BT 40.1℃であった。採血ではWBC2200 と低下,Plat 13 万,CRP 0.33 であった。敗血症性ショックが疑われたが,ICU 入室後19 時のPSEP 値は175pg/ml と正常範囲内であった。ICU 入室後,大量輸液,ノルアドレナリン, 抗菌薬の投与を開始。翌日の採血ではWBC 18000,CRP 6.67であったが,PSEP 値は270pg/ml と基準値内であった。同日血液検体の培養にてグラム陰性桿菌(E.coli)が検出され, 細菌感染による敗血症と判明した。【考察】本症例では細菌感染による敗血症にも関わらず,WBC,PSEP 値の有意な上昇は認められなかった。非細菌性もしくは混合感染の可能性も否定できないが,生検によって細菌が血管内に直接流入し急激に進展したためPSEPの上昇が遅れた可能性が考えられる。PSEPの応答時間は2時間といわれているが,臨床においてはさらなる検討が必要かもしれない。【結語】臨床においてのPSEP の応答時間に関してはさらなる検討が必要と考えられる。