ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-844-FP-295 激烈な播種性病変を来たしたMSSA菌血症の一例麻生飯塚病院 集中治療部竪 良太、鶴 昌太、安達 普至、臼元 典子、鮎川 勝彦【背景】黄色ぶどう球菌菌血症は感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎など播種性病変を生じる事が多く、合併症の鑑別が重要で、死亡率が20~50%と高く、MSSA菌血症も死亡率が比較的高いため、播種性病変の検索と適切な抗菌薬治療が必要である。我々はMSSA菌血症に対して抗菌薬治療を行っていたにも関わらず、空間的・時間的に多発する播種性病変を来たした症例を経験したので報告する。【症例】症例は60 歳女性。既往歴は高血圧。腰痛のため近医入院中であったが、発熱・肝・腎・意識障害が出現し当院に紹介搬送となった。近医での腰椎MRIでは、明らかな異常所見は認めなかった。来院時、意識GCS12(E4V3M5)、血圧107/60mmHg、脈拍 134/分であった。敗血症性ショック・急性腎障害・DICの診断で、ICUで集中治療を開始した。第2病日に意識レベルは改善したが、第3病日に再度意識障害と四肢麻痺が出現した。頭部CT/MRI・脊椎MRIで、多発性脳梗塞、脊髄硬膜外膿瘍、広範な脊髄炎を認めた。来院時の血液培養からMSSAが検出されたが、TEEで明らかな疣贅を認めなかった。脳梗塞は延髄にまで及び、自発呼吸が微弱のため第11 病日に気管切開を施行した。意識は改善し循環動態は安定したため、第16 病日に人工呼吸器を装着したままリハビリ目的にICUを退室した。一般病棟でも抗菌薬を継続していたが、新たに腸腰筋膿瘍、脳室内膿瘍を発症した。【結語】創部、歯科治療歴、体内異物等の危険因子がなく、免疫抑制状態にないと考えられる成人女性に発症したMSSA 菌血症に対し、抗菌薬治療を行っていたが、激烈な播種性病変を来たし、人工呼吸離脱困難・完全四肢麻痺のため臥床生活を余儀なくされた。FP-296 広範囲熱傷に創感染を合併し敗血症性ショックとなった一例1)成田赤十字病院 救急・集中治療科、2)成田赤十字病院 形成外科竹田 雅彦1)、中西 加寿也1)、奥 怜子1)、栗田 健郎1)、山地 芳弘1)、上野 昌輝1)、安達 直樹2)、加地 竜士2)広範囲熱傷患者では感染リスクが高く, 敗血症は熱傷患者の主たる死亡原因となる. 広範囲熱傷に創感染を合併し敗血症性ショックとなるも救命しえた一例を報告する. 【症例】53歳男性. マグネット粉塵の廃棄作業中, 粉塵爆発により顔面, 四肢に熱傷を負い搬送となった. 来院時循環, 呼吸は保たれており, 両眼周囲, 両前腕, 両下肢に熱傷を認め, 熱傷面積は30%(DDB), BurnIndex=15であった. 第2 病日SOFA score 0 点で形成外科に転科となった. しかし第5 病日より37 度台の発熱と炎症反応の上昇ありLVFX を開始したが, 第9 病日に体温40 度に上昇した. 第12 病日より浸出液や壊死組織が増加し, MRSAが検出されDAPを開始した. 血圧も低下し, さらにARDS, DIC を合併, SOFA score 18 点と重症化したため, 第14病日ICUでの集中治療を開始した. その時点で2度熱傷の一部が3 度熱傷へ移行し, 熱傷面積も40% に拡大していた. 抗菌薬をVCM, PIPC/TAZに変更し, DIC に対してAT,rTM製剤を投与, AKIに対しCHDF を開始した. DICによる出血リスクは極めて高く, またショックであったため, high risk であることは容易に予想できたが, 救命のためには感染源の制御が不可欠と判断し, 第15病日に壊死組織のデブリドマンを断行した.以降すみやかに循環動態は安定し, 第17病日にカテコラミン投与を終了した. その後は体位ドレナージを行いつつ慎重な人工呼吸管理を行い, 2度の植皮術の後, 第39 病日に人工呼吸器離脱し第40病日にICU退室となった. 【まとめ】広範囲熱傷患者ではほとんどの症例で感染を合併するとされ, 受傷後 1週間では緑膿菌やMRSA の感染が起こりやすい. また視診のみでは確実な創感染の診断は困難とされる. 本症例では当初創感染の徴候がはっきりせず, MRSAへの対応が遅れ敗血症性ショックに至ることとなった. 広範囲熱傷患者の創感染では, 早期の診断と感染制御とともに厳重な全身管理が重要と考え, その治療戦略について考察を加える.FP-297 開心術後のStenotrophomonas maltophiliaによる敗血症1)神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科、2)神戸市立医療センター中央市民病院 心臓血管外科、3)神戸市立医療センター中央市民病院 救急救命センター・救急部甲斐沼 篤1)、植田 浩司1)、小泉 滋樹2)、是永 章1)、川上 大裕1)、瀬尾 龍太郎3)、美馬 裕之1)、山崎 和夫1)【はじめに】Stenotrophomonas maltophilia(SM)は偏性好気ブドウ糖非発酵性のグラム陰性桿菌で、カルバペネム系含む多くの抗菌薬に耐性を示す。病原性は弱いとされ、日和見感染の原因菌の一つとして知られている。今回、開心術後早期にSMによる敗血症を経験した。【症例】慢性腎不全で維持透析中の86歳男性。入院3ヶ月前に上行結腸癌に対して右半結腸切除術、術後縫合不全になりストマ増設された。今回、重症大動脈弁狭窄症・冠動脈狭窄症に対して、大動脈弁置換術・冠動脈バイパス術を施行した。術中に気管内出血を伴う肺損傷を合併した。術後3 日目(3POD)に全身性炎症反応症候群に対してMEPM、VCMを開始した。その際の痰培養から肺炎桿菌、Citrobacter freudiiが検出された。7PODに心嚢・縦隔ドレーンの排液混濁認め、胸部CTで縦隔炎・縦隔膿瘍疑われたため再開胸、洗浄ドレナージを施行した。縦隔内に肉眼所見で感染所見は認めず、閉胸した。術中に、肺瘻認めたため修復術を行った。心嚢・縦隔ドレーン排液や術中採取した胸水・心嚢液からSMのみが検出されたため、SMによる敗血症と診断し、MEPM、LVFX、MINO に変更した。その後、全身状態安定したため13PODにLVFX単剤に変更した。しかし、27PODに敗血症の再燃認めた。痰培養から28PODにLVFX耐性SM、56PODにST合剤耐性SMが検出されたためMINO、コリスチン使用したが、58PODに肺炎により死亡した。【考察】本症例では担癌患者、直近の手術歴・抗菌薬暴露歴という既知のリスクに加え、さらに人工心肺使用による免疫能の変化がSM 感染症の原因となった可能性がある。気管もしくは縦隔原発のSMが肺瘻形成により気管支・心嚢・縦隔に波及したため、今回のSM敗血症へ至ったと考えた。SM に対する治療には早期の新規耐性獲得を考える必要がある。本症例では、全身状態が安定しても、抗菌薬の多剤併用療法継続の必要があった可能性がある。