ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-829-FP-250 バスキュラーアクセスカテーテルを左下大静脈へ挿入した一例広島市立広島市民病院青山 文、上野原 淳、田窪 一誠、松本 森作、寺田 統子、宮本 将、上原 健司、鷹取 誠【緒言】左下大静脈の出現頻度は、肉眼解剖学的研究で0.1-1.8%、CTに基づく画像診断で0.04-1%と非常に稀な血管正常変異であり、バスキュラーアクセスカテーテルを留置した報告はこれまでない。今回バスキュラーアクセスカテーテルを左下大静脈へ挿入し、他血管への迷入が疑われた症例を経験したので報告する。【症例】19 歳男性、NMDA受容体脳炎疑いで意識障害のため入院した。気管切開、γグロブリン投与、ステロイドパルス療法施行し、意識障害は改善したが、四肢麻痺残存するため、血漿交換目的に右大腿静脈よりバスキュラーアクセスカテーテルを挿入した。挿入後、先端位置確認のため腹部単純X線写真を撮影したところ、先端位置異常あり、他血管への迷入が疑われた。入院時に精査目的のため撮影した造影CT を見直すと、左下大静脈が確認され、今回の挿入は迷入ではないことが分かった。本症例では、右下大静脈はCT上、下流は腸腰筋レベルで管腔構造は消失し、索状化しているものと考えられ、上流は左下大静脈が右下大静脈に合流後、右心房へ流入していた。造影CT 確認後に、腹部超音波検査施行し、左右下大静脈及び、カテーテル先端が左下大静脈内であることを確認した。血腫や、左下大静脈径の狭小化は認めなかった。ガイドワイヤーやカテーテル挿入時の抵抗はなく、血液逆流、点滴滴下は問題なかった。予定通り血漿交換施行し、送脱血ともに問題なく施行出来た。【結語】今回、右大腿静脈から左下大静脈へバスキュラーアクセスカテーテルを挿入し、安全に血漿交換を施行できた一症例を経験した。血管正常変異の可能性を念頭におき事前のCT及び腹部超音波での確認、及び留置カテーテル先端位置異常の早期覚知することが重要である。FP-251 意識障害の改善にHigh Performance HDFが有効であった劇症肝炎の1例1)高知赤十字病院 救命救急センター、2)高知赤十字病院消化器内科藤本 枝里1)、安岡 やよい1)、村上 翼1)、廣田 誠二1)、原 真也1)、島津 友一1)、山崎 浩史1)、西山 謹吾1)、佐々木 紫織2)、岩村 伸一2)【背景】本邦では急性肝不全における意識障害に対して、High Performance HDF(以下HP-HDF)の有用性が報告されてきた。今回、肝性脳症4 度の意識障害をきたした劇症肝炎急性型の症例に、2 回のHP-HDF を施行し意識状態の著明な改善を得られたので報告する。【症例】63歳の女性。特記既往はなし。数日前からの全身倦怠感と食欲不振を主訴に前医を受診し、黄疸を指摘された。血液検査でGOT:1657、GPT:1212、T-Bil:9.6(D-Bil:5.6)、%PT:23.2、HPT:13.0%と肝機能低下と凝固系異常を認め、急性肝炎の疑いで当院に紹介された。腹部造影CT 検査では肝全体にまだらな造影効果を認めたが、肝萎縮は認めなかった。入院後は血漿交換とステロイド投与、グルカゴンインスリン療法を開始したが、入院4日目に見当識障害を認め、肝性脳症2度の意識障害が出現した。6 日目に肝性脳症4 度の昏睡状態に増悪したため、意識障害の改善目的に大面積PMMA膜であるBG-2.1PQ を用いてHP-HDF(血液流量:150~180ml/min、透析液流量:500ml/min、濾過流量:2000ml/hr、置換液は重炭酸リンゲル液を使用)を8 時間施行したところ、徐々に発語が見られるようになった。8 日目に2回目のHP-HDFを施行すると、意識は清明にまで回復した。その後肝機能は順調に回復し、入院34 日目に軽快退院となった。【考察・結語】HP-HDFは、高流量下に拡散と濾過の原理を同時に用いることにより、肝性脳症の誘因となる低分子のサイトカインや中分子のNH3 などの有害物質を効率よく除去しうるとされている。血漿交換では意識の改善が得られない重症の肝性脳症には、HP-HDFが有効と思われた。FP-252 低腎機能を合併する冠動脈バイパス手術におけるクロール値の影響聖路加国際病院 麻酔科 集中治療室岡田 修、片山 正夫、宮坂 勝之、青木 和裕、橋本 学、藤田 信子、篠浦 央、岡部 宏文、篠田 麻衣子、秋山 類【背景】近年、周術期における高クロール血症による腎機能への影響が報告されている。低腎機能に対する周術期の輸液は高カリウム血症を回避するために、生理食塩水を基本とする輸液が行われる傾向があり、高クロール血症を来しやすい状況と思われる。【目的】低腎機能を合併する冠動脈バイパス手術症例におけるクロール値の影響を検討する。【対象】2012年1 月から2014年3月までの当院で行われた冠動脈バイパス手術患者のうち、透析加療を受けていない腎機能低下(eGFR45ml/min/1.73m2 以下)を合併した23例を検討した。【方法】術前後のクロール値と術後の透析施行の有無、集中治療室滞在期間、入院期間を後ろ向きに検討した。【結果】23 症例のうち、男性18例で平均年齢は68.3 ± 10.8歳であった。9 例が緊急手術であった。術前のeGFRは平均34.0±14.4ml/min/1.73m2であった。術前のクロール値は107.6± 3.2mEq/Lで術直後は110.1±4.5mEq/Lであったが、統計学的に有意差のある上昇ではなかった。術後透析を行った症例は7 症例であった。術後透析を要した7 症例とクロール値(術前、術後、術中の最高値、術前後の増加分、術中の最高値、110mEq/Lた症例)と統計学的な相関関係は認められなかった。【結語】低腎機能を合併する冠動脈バイパス手術に対し、高クロール血症の影響は認められなかった。