ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-827-FP-244 脳機能モニタ(NicoletOneTM)を用いて癌性髄膜炎による痙攣重積発作の痙攣コントロールを行った1 例東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター落合 香苗、世良 俊樹、森下 幸治、大友 康裕【目的】癌性髄膜炎のため痙攣が重積し、長期にわたるベンゾジアゼピンの持続静注を要した患者において、NicoletOneTM とBispectral index(BIS)を用いて痙攣コントロールを行った症例を報告するとともに、脳機能モニタの有用性につき検討する。【症例】50歳女性。2か月前より左目の視野障害があり精査中であった。10日前に痙攣発作を生じ、当院救命センターに搬送、入院し、既往である乳癌の脳転移、タモキシフェンの副作用などが疑われ、かかりつけ医にて精査行う方針で2日後に退院した。某月某日、自宅で不穏状態となり、救急搬送中に痙攣発作を生じ、病着後にも重積した。入院精査され、癌性髄膜炎の診断に至った。痙攣コントロールに難渋し、入院第2 病日より左右前頭極のみにてNicoletOneTMによる脳波記録を開始、入院第3 病日よりBIS によるモニタリングを開始し、抗痙攣薬・鎮静薬の調整を行った。抗痙攣薬多剤と併せて、ベンゾジアゼピンの持続静注を行い、痙攣発作のコントロールがついて漸減終了に至るまで19日間を要した。徐々に意識レベルの回復がみられたため第17病日より癌性髄膜炎に対してメトトレキサートの髄注を開始。第18病日に気管切開施行し、第29 病日にはスピーチカニューレにて簡単な会話ができるまで回復した。第35病日、専門的加療目的に当院神経内科に転科とした。【考察】経過中持続的に痙攣波の出現の有無を確認し、ベンゾジアゼピンの投与量調節や抗痙攣薬の追加投与などを行い、意識レベルの改善を認めた。本症例ではBIS で評価される部位と同じ前頭極のみで持続脳波を記録した。筋弛緩薬投与下や短時間の脳波検査と異なり、長期間にわたって多くの電極を貼付したまま全身管理を行うことは困難である。少ないチャンネル数でも、痙攣重積のコントロールの指標になり得ると考える。【結語】痙攣重積患者の痙攣コントロールにおける脳機能モニタは有用である。FP-245 「診断がついている」患者が抱えるリスク・・・入院時検査で偶然発見された致死的疾患の合併症例藤田保健衛生大学 医学部 救急総合内科近藤 司、田口 瑞希、都築 誠一郎、多和田 哲郎、日比野 将也、神宮司 成広、植西 憲達ICUに収容される患者は重大な疾患や重篤な病態を抱えている。他施設からの収容依頼も多いが、既に診断が付いているか問題点が明確になっていることが多い。しかしそこに潜んでいるとも言うべき問題点があるという経験を得たので報告する。症例)38歳男性。近隣の総合病院からくも膜下出血の手術目的で転院搬送されてきた。7 日前に頭痛で発症し、一週間経過しても頭痛が変化しないため受診し、くも膜下出血を指摘された。既往に高血圧、高尿酸血症があり内服治療していた。頭部CTはWFNS-III、Hant&Kosnic IIIであった。来院時現症)意識GCS E3V4M6血圧右164/60 左 138/70 脈拍 90 整 呼吸20 整 体温 37.9度 瞳孔左右2.5mm四肢麻痺なし。くも膜下出血の状況確認のため頭部CT を撮影してから入院することとし、血圧の左右差があったため念のため胸部までCTを撮影したところ、Stanford A型の大動脈解離が見つかった。患者は胸痛や背部痛など一切訴えず、心電図異常も見られなかった。どちらも緊急手術の適応疾患であったが、くも膜下出血の治療を優先するためICUに収容された。考察)A型解離は時に椎骨脳底動脈解離の合併などによるくも膜下出血を合併することが報告されており、その場合は治療に困難が伴うとされている。A型解離の手術に際しては抗凝固処置が必要となり、くも膜下出血とは相容れない。両者の治療時期、順序についての検討が必要である。ICU収容症例の死後剖検結果、22%に診断されていなかった重篤な他疾患が見つかったという報告もあり、収容時には気づかれていなかった重篤な疾患が隠れている可能性は少なくない。本症例では血圧の左右差が大動脈解離の存在に気づくためのサインであったと思われる。ICUに収容される症例について、治療対象と成致死的疾患は1 つだけと限らず、それは他院で診断の付いた患者についても同様である事を念頭に置いて身体所見をしっかり取ることが大切であると考えられた。FP-246 Regional Saturation of Oxygen(rSO2)が下降性縦隔炎を併発した頚部膿瘍の循環の評価の一助となった症例自治医科大学 医学部 麻酔科学・集中治療医学講座玉井 謙次、島 惇、竹内 護はじめに INVOS(COVIDIEN JAPAN, 東京)のrSO2(Regional Saturation of Oxygen)は、心臓手術などで用いられ、循環動態の把握に利用される。今回、我々は縦隔炎の術中に使用し、病態理解の一助となったので報告する。症例 74 歳 男性現病歴 当院入院の3日前から咽頭痛、38.1℃の発熱があり、扁桃腺炎の診断で内服治療開始した。その2日後に近医に入院し抗菌薬治療を開始したが、頚部腫脹・呼吸苦増悪したため当院に緊急搬送され、手術の方針となった。膿瘍は右披裂咽頭蓋ヒダ直下近傍から傍椎体間隙・傍咽頭間隙・深頚部・縦隔を経て右主気管支に及ぶ領域に存在していた。集中治療室(ICU)に入室し、経口挿管を行った。昇圧剤(ドパミン10 μ g/kg/ 分)投与下に収縮期血圧が70mmHgに低下し、気胸を疑うも所見はなく、頚部の切開排膿術を優先した。 ノルアドレナリンを0.1 μ g/kg/ 分で開始後、左手・耳介のSpO2 が測定困難で、前額でrSO2 を測定した。装着時、rSO2=36、血液ガスはSaO2=98%、PaO2=189 であった。 左頚部ドレナージ直後、血圧上昇とともに、rSO2も60に上昇した。一方で左手・耳介のSpO2は測定困難だが、下肢は測定可能だった。SpO2,rSO2 を指標に分離肺換気を行い、縦隔ドレナージを行う事が出来た。考察 rSO2 は低灌流時も測定可能で、PaO2、Hb と相関を示す報告があるが、絶対値がなく解釈に困る事がある。 ショックを伴う頚部膿瘍であるため、当初は、低灌流よるSpO2 の測定困難と考え、rSO2 を装着した。当初は血液ガスと解離があったが、頚部膿瘍による圧迫が介助されると、rSO2 が30から60に上昇したため、膿瘍による頚部の圧迫が血流不全の原因と診断できた。 十分なドレナージが必要と考え、分離肺換気を用いたドレナージを行う方針とした。胸部については一期的に施行できた。結語 頚部膿瘍による脳血流の低下をrSO2 で診断できた。rSO2 は血流の低下を反映し病態理解の一助となる。