ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-825-FP-238 Salmonella enteritidisによる体位変換時に生じる意識障害の一例1)名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野、2)小牧市民病院日下 琢雅1,2)、千田 譲2)、徳山 秀樹2)、松田 直之1)【はじめに】救急・集中治療領域において,体位によって意識状態が変容することが,診断に結びついた症例を報告する。【症例】69歳,男性。増悪寛解を繰り返す意識障害と発熱,下痢を主訴として,救急搬入された。搬入時,GCS15 点であるが,飲酒後でありJCS I-1,血圧145/75mmHg,心拍数120 回/ 分,呼吸数20 回/ 分,SpO2 97%(室内気),体温(腋窩)39.2℃であった。頭部単純CT 像に明らかな異常を認めず,飲水で制御可能な腸炎として,帰宅を何度か試みた。しかし,体位変換のたびに意識障害を繰り返した。既往歴として,左右の内頚動脈に高度の狭窄を認め,左内頚動脈にステントが留置されていた。髄液検査では異常所見を認めなかったが,頭部MRI のFLAIR 像にintra arterial sign を確認し,transient ischemic attacks(TIA)の診断としてICU管理とした。入室時のAPACHEIIスコアは16,血液検査では血小板 94,000/ μ Lを特徴とした。一方,細菌学的評価ではSalmonella enteritidisが血液と便から検出され,抗菌薬として感受性を認めたセフトリアキソンで治療した。血圧と血清乳酸値は正常内で安定しており,敗血症性ショックとしての治療は施行しなかった。初期輸液とともに,感染と炎症の消失により,体位変換によるTIA 症状は改善した。【結語】本症例は,Salmonella enteritidis感染による下痢と敗血症を起因として,脳血流障害を繰り返したTIAの一例である。高度の内頚動脈狭窄を基盤として,Salmonella感染症を集中治療管理で改善し,繰り返されるTIAを回避した1 症例である。FP-239 カルバマゼピンによる低Na 血症が原因と考えられた下肢脱力発作の一症例1)潤和会記念病院 集中治療部、2)潤和会記念病院 麻酔科成尾 浩明1)、立山 真吾2)、中村 禎志2)、濱川 俊朗1)【患者】70歳台,女性.【既往歴】てんかん(カルバマゼピン(CBZ)300mg/day内服),脳梗塞【家族歴】特になし.【現病歴】突然の気分不良,両下肢脱力発作が出現した.一過性意識消失発作も認め当院に搬送となった. 【来院時所見】意識清明.BT:36.6℃,BP:97/65mmHg, HR:71/min, SpO2:98%(room air). 左上下肢不全麻痺を認めた. Hb:13.8g/dL, Na:124mEq/L, K:4.7mEq/L, Cl:86mEq/L, BS:126mg/dL, BUN:17mg/dL, Cre:0.7mg/dL, 血漿浸透圧:271mOsm/L. 頭部MRI検査で新鮮な梗塞や出血は認めなかった.【入院後経過】入院翌日の脳波検査で両側に2~4Hzの徐波群発を認め発作性疾患が疑われた.クロバザム5mgを追加し,入院10 日後よりレベチラセタム1000mg/day の内服に変更した.CBZ は7 日目に漸減し,9 日目に中止した.低Na 血症に関しては入院2 日後より食事開始し塩分負荷を行なった.低Na 血症は徐々に改善し7 日目には129mEq/L,15日目には143mEq/Lとなった.脱力発作も改善し20日目に退院した.【考察】部分発作の第一選択薬として使用されているCBZは,副作用として1.8~40%に低Na 血症を認め,これにより意識障害,歩行障害が認められる.本症例でも腎機能障害など認めず、CBZ による薬剤関連性低Na血症と診断した.CBZがADH分泌調節系への直接刺激あるいは分泌抑制路の障害を起こすことによって低Na血症が起こると考えられている.CBZ 内服開始3か月以内に出現しやすいとされているが,入院1か月前に増量したことが関与したのかもしれない.内服開始時のみならず増量時なども定期的に血清Na値を測定し早期に対応することが望ましい.FP-240 可逆性後頭葉白質脳症(PRES)、腎不全を合併した高血圧緊急症の一例東京都立墨東病院 救命救急センター重城 未央子、柏浦 正広、田邉 孝大、杉山 和宏、明石 暁子、濱邊 祐一【症例】29歳、男性。 【現病歴】入院1ヶ月ほど前から強い頭痛を自覚し、NSAIDsなどの鎮痛薬を連日内服していた。入院同日、頭痛増強し前医受診。前医の頭部MRIにて、Diffusion及びFLAIR で左後頭葉に高信号域が認められ脳梗塞が疑われた。また、Cre 15.4mg/dlと腎機能障害が認められ、脳梗塞と腎不全加療目的に当救命救急センターに搬送となった。【既往歴】幼少期に急性腎炎症候群、10 代から尿所見異常を指摘されていた。【来院時現症】意識レベルJCS I-1、瞳孔3mm/3mm、対光反射両側迅速、BP 210/140mmHg、HR 96 回/ 分、RR 24 回/ 分、SpO2 99%(大気下)、BT 36.7℃【入院後経過】来院後、全身性間代性痙攣が出現したため、気管挿管・人工呼吸管理を開始した。血液ガス上、代謝性アシドーシス、高カリウム血症があり、入院後直ちに血液透析を施行した。血圧は210/140mmHg と高値でありカルシウム拮抗薬の持続静注を開始。その後も降圧薬投与にて血圧コントロールを継続しながら適宜血液透析を施行した。眼底所見では、高血圧性眼底出血を認めた。第8病日には意識改善し、抜管に至った。頭部MRI再検すると同部位の所見は消失しており、PRESと診断した。経過から、血液透析の離脱は困難と判断し、維持透析導入目的に腎臓内科転科となった。【考察】腎機能障害や高血圧の精査を行ったが、原因の特定には至らなかった。腎機能障害に関しては10 年ほど前から尿所見異常を指摘されていたことや、エコー上腎表面不整であることから慢性経過が考えられ、今回の急激な血圧上昇やNSAIDs 内服により急性増悪したものと思われた。PRES は、画像検査にて後頭葉を中心に広範囲な浮腫性病変を認めるが、基礎疾患の是正により臨床所見や画像所見が可逆的に消失する疾患群である。本例は透析導入を回避できなかったが、血圧コントロールにて意識レベルは改善し、画像所見も消失した。