ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-823-FP-232 術後一過性脳梗塞症状を呈した、冠動脈大動脈バイパス手術の考察公立陶生病院 救急救命センター平松 拓也、市原 利彦、川瀬 正樹、中島 義仁(目的)冠動脈大動脈バイパス手術(以下CABG)は周術期に脳梗塞を発生することはしばしばあり、希なことではない。今回CABG後麻痺が起こり脳梗塞かと思われたが、薬剤の影響であった可能性があり、その考察を含め報告する。(対象)81歳男性、腹部大動脈狭窄にて大動脈ステントの既往があり、透析患者である。胸痛を主訴に不安定狭心症にて緊急CABGとなった。術前の頭頸部血管の精査は通常はMRA、頚動脈エコーをしているが緊急のため施行できなかった。特に脳梗塞の既往はない。(結果)on pump beating CABG2枝をおこなった。手術時間は5時間39分で、人工心肺離脱も容易であった。IABPは第2病日抜去できた。第1病日から左側片麻痺とミオクローヌスを認め、脳梗塞と考え、CT、神経内科依頼、CTには明らかな梗塞巣はなく、第3 病日抜管し、意識はクリアであった。第4病日から麻痺はなくなり、ミオクローヌスはクロナゼパムで対処し、第8病日に消失した。第25病日独歩退院した。当科は周術期鎮痛と鎮静を分けた管理を常時行っている。その使用薬剤は、フェンタニルクエン酸、プロポフォール、デクスメデトミジンである。(考察)術後の急性期脳梗塞は、低血圧、低潅流、粥状塞栓とも言われている。以前にもプロポフォールで局所兆候があり改善した症例も経験しており、術後の一過性の麻痺はあたかも脳梗塞と判断されたが、結果的薬剤性、遷延するプロポフォールかデクスメデトミジンによるものと示唆された。どちらの薬剤にその傾向があるかは不明であるも、このような麻痺の症状を呈することがあることを経験した。(結語)CABG後脳梗塞と思われた一過性の左側麻痺を経験し、薬剤による局所兆候と考えられた1例を経験したので、若干の文献的考察を含め報告するとともに、ICUで同様な経験を持たれる医療者に問いかけたい。FP-233 めまいを主訴とし初回MRI拡散強調画像での早期診断が困難であった脳幹梗塞の一例1)第二岡本総合病院 救急集中治療部、2)第二岡本総合病院 麻酔科松田 知之1)、山根 毅郎2)、森下 洋子2)脳梗塞による急性めまいを診断する際には、問診、神経学的所見、画像診断などを総合的に評価する必要がある。拡散強調画像DWI で超急性期の脳梗塞を診断し治療方針を決定するのが一般的であるが、脳幹梗塞では超急性期偽陰性率が高いとされる。今回我々は、浮動性めまいを主訴として来院し急性期にDWIで偽陰性であったために梗塞に対する治療介入に遅れをきたした症例を経験した。浮動性めまい発症から10時間経過し来院。頭蓋内病変検出のためCTならびにMRIを施行した。FRAIR、T2像で異常なく、MRA では左椎骨動脈の描出不良があるものDWI を含めたMRI像では急性期異常病変は検出されなかった。その後時間経過とともに右下肢のしびれが出現さらに上下肢麻痺へと神経学的症状の増悪をきたしたため、発症17時間後に再度CT ならびにMRIの再検を施行したところDWIにて橋左側に新鮮虚血を疑わせる画像所見をみとめた。その後既往としての睡眠時無呼吸症候群に加え球麻痺症状の増悪が相まって呼吸不全をきたし気管挿管のうえ人工呼吸が必要となった。急性期脳梗塞に対するDWI の偽陰性率は発症3時間以内の場合26%、12時間以内でも19%ともされる。脳幹・小脳梗塞に対するDWIの偽陰性率は、さらに高くなる。発症後24 時間以上経過してもDWIで約30%は偽陰性を呈するとの報告があり、画像所見は感度の限界を踏まえて、あくまで参考情報として扱うべきで画一的な治療方針の決定は戒められるべきであると思われた。FP-234 右内頚動脈- 後交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血day3 に小脳脳幹梗塞を呈した1 例金沢大学病院 集中治療部吉川 陽文、岡島 正樹、谷口 巧【背景】くも膜下出血(SAH)の4~15% にたこつぼ型心筋症(TCM)が合併する。稀ながらTCM は血栓を形成し、塞栓症を起こすことがある。われわれはSAH day3に小脳脳幹梗塞を起こし、その原因としてTCM による血栓塞栓症が考えられた症例を経験したので報告する。【症例】45歳、男性。×月×日18時30分、性行為中に突然の頭痛を訴えたのち、意識障害にて救急搬送。診察にてGCSE2V2M3、明らかな脳神経症状はなかったが、左不全麻痺を認めた。CT/3D-CTAにてSAH と右内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤があり、同日瘤内塞栓術が行われ、術後にICU入室し水頭症に対してスパイナルドレナージを挿入した。入院時の胸部レントゲン写真では両側の肺野透過性低下があり、ICU入室後の経胸壁心エコーにてTCMの所見があったため、それによる心不全所見と考えられた。SAH day1 の時点でTCM所見は改善していた。経過中に複数回の経胸壁心エコーを行ったが明らかな血栓は同定されなかった。day3 に両側瞳孔散大と対光反射消失が出現したためCT/3D-CTA を施行すると小脳脳幹梗塞があり、また後方循環の描出を認めなかった。3D-CTAの3時間後のMRAでは後方循環の再開通を認めた。同日減圧開頭術と体外ドレナージ術を施行したが、day21 に死亡退院となった。【考察】小脳脳幹梗塞を呈した原因として、血栓塞栓症、早期血管攣縮、スパイナルドレナージからの髄液排出による小脳脳幹ヘルニア、椎骨脳底動脈解離等が鑑別に上がったが画像所見からは血栓塞栓症と考えられた。血栓塞栓症を起こした原因の特定には至らなかったがTCMが関与している可能性が高いと思われた。