ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-813-FP-202 機能的片肺状態の患者に対する僧房弁置換術の経験近畿大学 医学部 奈良病院 麻酔科杉浦 順子、二川 晃一、岡本 慎司、奥田 隆彦悪性胸腺腫に対する放射線治療後の肺繊維症により機能的片肺状態となった患者の僧房弁置換術を経験した.【症例】65歳女性.主訴は呼吸困難、動悸.僧房弁閉鎖不全症で心房細動に対して近医で加療中に心不全が増悪.心エコー上2~3度の僧房弁逆流を認め、当院に入院となった.既往歴として25 歳時に悪性胸腺腫に対して放射線治療を実施した.【術中経過】麻酔はミダゾラム,ロクロニウムで導入し、酸素-空気-プロポフォール、レミフェンタニルで維持した.手術は胸骨正中切開で行い、右腋窩・右大腿動脈送血、上大静脈・下大静脈脱血で体外循環を確立した.僧房弁置換術・三尖弁形成術を施行し、ドパミンの持続投与で体外循環から問題なく離脱した.動脈血ガスの結果に問題はなかった.麻酔時間5 時間39 分,手術時間4 時間25 分,体外循環時間1 時間53 分,大動脈遮断時間は1 時間19 分であった.【術後経過】術後2 日目に抜管したが、術後5 日目に徐脈・血圧低下をきたし再挿管となった.術後11 日目にはエコー上左室機能は改善傾向を示した.術後14日目に気管切開施行.術後17日目に肺炎を発症.術後28日目に肺炎は改善傾向となり、術後35日目、呼吸器から離脱中に徐脈を呈しCPR施行.術後40 日目からはCHDF 開始.術後68 日目から下血を認め、症状改善せず術後79日目に死亡した.【考察】この症例では左肺は機能せず、右肺のみで左肺全摘術後に準じた状態であった.この場合、高度な縦隔偏位により通常の手術視野が得られず、手術操作も困難なため、送脱血管の選択・術式の手順には検討を要する.また、術後の呼吸不全への対策として人工呼吸からの早期離脱や慎重な輸液管理が挙げられる.【結語】片肺状態の患者に対する開心術では、循環動態の維持や厳重な水分バランスの管理だけでなく、術後長期にわたる呼吸器合併症への配慮が重要である.FP-203 集中治療患者における五苓散の体液管理に対する効果1)滋賀医科大学 医学部 附属病院 薬剤部、2)滋賀医科大学 医学部 附属病院 看護部、3)滋賀医科大学 救急集中治療 医学講座赤羽 理也1)、吉田 和寛2)、橋本 賢吾3)、山根 哲信3)、辻田 靖之3)、高橋 完3)、江口 豊3)【目的】集中治療領域では多種多様の疾患が集まり、西洋薬と異なる複数の生薬の複合体である漢方薬の使用が注目されている。今回アクアポリン作用により水分代謝調節作用を有する五苓散の臨床的有用性について検討した。【方法】2015/3~6当院ICU入院患者に五苓散が投与された14名の患者(男/女:11/3、年齢:67.9 ±12.8)について五苓散投与開始前の指標と開始後一週間の指標を後方視的に比較した。指標としてIN/OUTバランス、尿量/日、酸素化(PO2/FiO2)、炎症(CRP)とした。【結果】投与期間は8.9±8.1日、開始前と比べ開始初日のIN/OUTバランス(ml)(405±216、-267±318)は低下傾向にあった。尿量/日(ml)(1822 ± 390、2273 ± 570)、PO2/FiO2(324 ± 18、341 ± 24)は上昇した。【症例】75 歳、男性。心不全が悪化しCHDF 目的でICU入室。肺炎、腎不全も伴う全身浮腫に対し五苓散(2.5g×3)を入室7日目に開始。開始前BUNは30.1mg/dLと血管内脱水を認めた。開始後、体重は4kg減量、初日にIN/OUTバランスはマイナス、尿量/日の改善が見られた。PO2/FiO2は開始前に比べ開始7日目には良好となった。CRPも開始20 日目の投与中止日には改善を示した。【考察】心不全に伴う胸水、慢性腎不全に伴う浮腫、炎症に対する効果が認められた。集中治療領域における五苓散の効果は、それ自体が治療の主薬になることは無いと思われるが、利尿剤だけでは効果不十分な症例で相加作用を期待できると考えられる。FP-204 コロイド製剤の使用に関する研究と専門診療科との関係東京医科歯科大学 医学部附属病院 集中治療部足立 裕史、塩田 修玄、原茂 明弘、大森 敬文、増田 孝広、丸山 史、若林 健二、中沢 弘一、槇田 浩史急性期の初期輸液の選択について、コロイド製剤の適否が論じられて久しい。近年、本邦でもボルベンが上市されたが、その使用に関する議論も盛んである。重症例に関するコロイドとクリスタロイドの製剤投与についてはCochrane Libraryでも常にアップデートされているが、コロイド製剤についてはほぼ否定的な結論が述べられ続けている。今回、研究論文の結論・評価と、各研究チームの背景との関係を検討した。【方法】PubMedから主にコロイド製剤の使用に関する比較対象研究を抽出し、その有効性をクリスタロイド製剤と比較していると考えられるもの300 編余から無作為に60 編を抽出した。結語に含まれる評価を肯定、否定、条件付き肯定(同等)に分類した。有害事象を強調していると考えられるものは否定と判断した。著者情報並びにInternet上の紹介等から研究チームの背景を探り、集中治療系、麻酔科系、救急・外科系に分類した。【結果】集中治療系でコロイド製剤を肯定しているものは6 編に対して否定するものが14 編、同等が9 編だったのに対し、麻酔科系では肯定が12 編、否定が2 編、同等が6編だった。救急・外科系では肯定否定が5編ずつ、同等が1編だった。【考察】今回のpreliminaryな調査から結論を導き出すのは尚早と考えられるが、集中治療系ではコロイド製剤の使用が否定的に捉えられており、麻酔科系では肯定的な状況にある事が示唆された。また、これらの研究はコロイド製剤の開発の経過にも影響されていると考えられ、2000年以前に行われた研究は麻酔科系が肯定的な結果を紹介し、近年の研究は集中治療系で否定的な結果が報告されている傾向が窺えた。肯定的な結果は、微小循環障害の改善、循環動態の維持が評価基準となっていた。一方、コロイド製剤の使用を非推奨とする理由は、当初は費用対効果の点が強調され、その後、凝固障害、近年の腎障害等の有害作用へと論点が変わりつつあると考えられた。