ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-812-FP-199 外科的治療にて救命しえた急性広範囲型肺塞栓症患者の治療経験1)さいたま市立病院 麻酔科、2)さいたま市立病院 集中治療科石川 紗希1)、中村 教人2)、山本 裕子1)、植松 明美2)、佐久間 貴裕2)、忍田 純哉1)【症例】77歳女性。呼吸困難を主訴に当院救急外来に搬送された。食道癌にて化学放射線療法中で発作性心房細動の既往があった。来院時、心拍数111 bpm、血圧70/52 mmHg、経皮的酸素飽和度91%(room air)、心電図で右側胸部誘導のST 低下を認めた。経胸壁心エコーで右室は著明に拡大し、造影CT で両側肺動脈に広範囲の血栓を認めたため、急性広範囲型肺塞栓症と診断された。緊急肺動脈血栓摘除術の方針と並行し、急激な循環虚脱に備え経皮的心肺補助装置の準備を進めた。術後経過は良好でP/F比450 以上を保ち、循環動態も安定していたため術翌日にはカテコラミン投与、人工呼吸器からの離脱に成功した。呼吸苦の残存を認めていたが悪化はなく、術後4日目に集中治療室を退室した。【結語】急性広範囲型肺塞栓症では、早期診断と適切な治療が大きく死亡率を改善させる。本症で急性循環虚脱を来した場合、カテーテル治療よりも外科的治療が優先される。循環補助を含め救命のための呼吸循環管理には連携した集学的治療が必要である。FP-200 急性大動脈解離に伴う全身的炎症反応と肺障害に対するシベレスタットナトリウム早期投与の効果東京都立墨東病院 胸部心臓血管外科三島 秀樹、松永 裕樹、片山 康、石川 進、大島 哲【目的】急性大動脈解離での全身的炎症反応と肺酸素化能悪化を調べ、併せてシベレスタットナトリウム(Na)による肺障害軽減効果を検討した。【対象と方法】急性大動脈解離の25 例(Stanford 分類A型10 例、B 型15 例)を対象とした。A型では全例で緊急手術(上行/上行弓部大動脈置換術)を、B型では保存的治療を行った。シべレスタットNaはA型解離8例で手術直後より投与したが、術後の肺酸素化能が比較的良好であった2 例およびB 型解離では投与しなかった。【結果】1)保存的治療(B 型解離)での炎症反応と肺障害:入院当日の白血球数は13000 ±1500/mm3 と上昇し、血小板数は160,000 ± 10,000/mm3 と低下していたが、ともに第4病日以降に改善した。血清総ビリルビン値は第3病日には最高値(2.0±0.6 mg/dl)となったが、第4病日以降は漸減した。Oxygenation index(PaO2 / Fio2)は、入院時315 ± 30 で、第2 病日に252 ± 15 と低下したが、第4 病日以後は正常域(> 300)に改善した。2)手術後の肺障害:シベレスタットNa投与の8例のOxygenation indexは手術当日が198±44であったが、第2病日以降に改善した。非投与の2 例では、手術当日は271 ± 177 と高かったが、以後急速に悪化して第2 病日には149 ± 120 となった。第3病日以降は緩徐に改善した。【まとめ】1)急性大動脈解離において、非手術例では発症後3日間は全身的炎症反応と肺酸素化能の悪化がみられるが、第4 病日以降は回復に向かう。2)手術例では、術後早期からのシベレスタットNa 投与により肺酸素化能の悪化を軽減し得る可能性がある。FP-201 術後患者へのトルバプタン投与による高ナトリウム血症に関する検討1)名古屋大学医学部附属病院麻酔科、2)名古屋大学医学部附属病院外科系集中治療部、3)名古屋大学大学院医学系研究科麻酔・蘇生医学講座、4)名古屋大学大学院医学系研究科救急集中治療医学講座石田 祐基1)、貝沼 関志2)、長谷川 和子1)、平井 昴宏1)、水野 祥子1)、青山 正1)、市川 崇1)、鈴木 章悟3)、高橋 英夫4)、西脇 公俊3)【目的】最近、腎機能への影響が少ない利尿薬としてトルバプタンが注目されている。この利尿薬は腎髄質の集合管に作用して水利尿を行うため、腎血流量を低下させにくいという特徴をもつ反面、高Na 血症を来しやすいことから、自発的な水分摂取が困難である術後患者へ投与する場合は慎重に管理していく必要がある。今回、高Na 血症の危険因子を調査するため、術後トルバプタン投与症例について分析を行った。【方法】2012年1月から2015年5月まで当院外科系集中治療部において術後トルバプタンを投与した症例を集計し、年齢、術前腎機能(推算糸球体濾過量、BUN、血清Cr値)、併用利尿薬(フロセミド、カルペリチド)、薬剤開始用量、血清Na値(薬剤開始前、最大値)、尿量増加量、体重減少量、一日総Na投与量について分析を行った。最大血清Na値≦ 145mEq/L、> 145mEq/Lの二群(正常Na 群、高Na 群)に分け、統計解析を行った。【結果】上記期間中にトルバプタンが投与された症例は計19例で、正常Na群が7例、高Na群が12例であった。正常Na群と高Na群の二群間において、年齢、術前腎機能、併用利尿薬、薬剤開始用量、薬剤開始前血清Na 値で差は見られなかったが、尿量増加量、体重減少量、一日総Na 投与量において高Na 群の方が有意に多かった。【考察】トルバプタン投与による高Na 血症のリスクとして、年齢≧ 80歳、投与開始用量≧ 15mg/日、薬剤開始前血清Na 値≧ 142mEq/L などがあげられている。本研究においては、年齢、投与開始用量、投与開始前の血清Na 値で両群間に差はなかったが、高Na 群で尿量増加量、体重減少量が有意に多く、トルバプタンによる水利尿効果が正常Na 群よりも強く現れた結果、高Na血症に来したと考えられる。そして、高Na 群では一日総Na 投与量も有意に多かったため、さらに高Na 血症を助長した可能性がある。