ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-811-FP-196 外科的緊急気道確保を契機にたこつぼ型心筋症をきたした1 例久留米大学病院 高度救命救急センター萬木 真理子、高須 修、下河邉 久陽、金苗 幹典、鍋田 雅和、森田 敏夫、中村 篤雄、宇津 秀晃、山下 典雄、坂本 照夫【症例】70代男性。2年前にForestier病(椎体前面の著しい連続性骨化病変)と喉頭蓋の変形を指摘され、近医で入院中であった。微熱と感冒様症状を契機に呼吸困難が出現、増悪し、意識障害とSpO2低下を認めたため当センターに転院搬送となった。搬入時、意識レベルGCS3、脈拍数 100/min、血圧 139/51mmHg、呼吸数 25/min。シーソー呼吸を呈し頚部で気道狭窄音を聴取した。BVM 換気下に動脈血pH 7.001、PaO2 125.5mmHg、PaCO2 120.2mmHg と高度な呼吸性アシドーシスを呈していた。上気道狭窄と診断したが、既往から気管挿管は困難と判断し輪状甲状間膜切開を行った後、気管切開術を施行した。輪状甲状間膜切開終了後にショック状態となったため、急速輸液とノルエピネフリンの持続投与を開始したが反応は乏しく、収縮期血圧 50~60mmHg 台と血圧低値が持続した。血液検査上、心筋逸脱酵素は正常であったがトロポニンT とH-FABP は陽性で、胸部誘導心電図でST 上昇を認めた。心エコーでは前壁中隔を中心に壁運動の低下を認め、心駆出率は40%と低下していたことから、急性心筋梗塞による心原性ショックを疑い心臓カテーテル検査を施行したが、左右冠動脈に有意狭窄病変は確認できなかった。左室造影では心尖部の全周性収縮不良を認め、たこつぼ心筋症と診断した。第5 病日までドブタミン投与を必要としたが、保存的加療で心駆出率は62%まで改善した。【考察・結語】本症例では、上気道狭窄による高度な精神的・身体的ストレスが心筋障害の誘因と考えられた。たこつぼ心筋症の原因として、カテコラミン過剰状態など様々なものが報告されている。窒息など高度な精神的・身体的ストレスに曝された状況下、あるいはその解除直後の循環不全の原因として、たこつぼ心筋症を念頭におく必要があると思われた。FP-197 当院で過去1 年間にICU 入室した急性大動脈解離患者の管理と転帰1)都立墨東病院 胸部心臓血管外科、2)都立墨東病院 麻酔科、3)都立墨東病院 循環器科伊藤 淳1)、大西 龍貴2)、松永 裕樹1)、三島 秀樹1)、田邉 孝大3)、黒木 識敬3)、弓場 隆生3)、鈴木 健雄2)、岩間 徹3)、石川 進1)急性大動脈解離(以下AD)の初期ICU 管理に関しどの程度必要なのか迄はガイドラインに示されてはいない.当院では2015/6~HCU が開設されたが, 過去1 年間にICU 入室AD 患者の管理とその転帰を後方視的に検討した.2014/6~2015/5の間ICU入室AD 患者は20 例,21 入室. 男性13 例, 女性7 例. 年齢は33~86 歳. 病型別ではStanford A(以下A)8 例(偽腔開存3, 偽腔閉鎖4, 偽腔閉鎖→偽腔開存1).Stanford B(以下B)12 例(偽腔開存6, 偽腔閉鎖6).A偽腔開存型4 例中1 例はRA患者で発熱性好中球減少症にて入院治療中AR による心不全症状で発見され,ICU 入室での心不全管理後手術の方針が肺炎併発し断念肺炎死,1 例は前日手術適応とされていた他院を自主退院された方で降圧鎮痛療法後外来経過観察中,1例は他院でAAE術後であり降圧鎮痛療法後外来経過観察し解離腔はほぼ消失,1例は当科他患者手術中の為他院にて転院緊急手術となった.偽腔閉鎖→偽腔開存型の1例はICUで降圧鎮痛安静療法3 日間の後一般病棟で再解離, 左片麻痺出現,腕頭動脈再建伴う緊急手術施行が不全麻痺遺残リハビリ病院転院. 偽腔閉鎖型3例中1 例はULP+で1ヶ月後待機手術,2 例は緊急手術で内1 例は基部再建手術で術死した.B 型は全て循環器科で加療されたが, 偽腔開存の如何に関わらず5例が翌日退室,偽腔開存型で腹部分枝の一部が偽腔潅流と考えられる1例を除き5日以内の入室期間で,その1例を除きA lineは挿入されず,疼痛が初発症状にもかかわらず入室時フェンタニル持続静注の様な鎮痛治療はなされなかった.転帰としては既往症に大動脈炎症候群があり,退院後他院で弓部,下行大動脈瘤を二期的に手術施行後心不全入院を繰り返す開存型の1 例,ANCA 関連腎炎にて透析中で退院6ヶ月後に脳出血で失った開存型の1例を除き外来経過観察中. 今後HCU開設でより長期の集中治療管理が可能となると思われるが, 当院のB型急性大動脈解離患者管理に於いては現状ではそれが治療成績に寄与するとはいえない.FP-198 ショックを呈した消化管穿孔・敗血症を伴う慢性血栓塞栓性肺高血圧症急性増悪を集学的治療で治療し得た一例1)東京医科大学病院 循環器内科、2)東京医科大学病院 麻酔科、3)東京医科大学病院 消化器外科、4)関東中央病院 循環器内科、5)岡山医療センター 循環器内科嘉澤 脩一郎1)、山下 淳1)、冨士田 康宏1)、荒井 悌子1)、山科 章1)、屋良 美紀2)、勝又 健次3)、粕谷 和彦3)、沼尾 嘉美4)、松原 広己5)症例は50歳台女性。労作時の呼吸苦あり他院加療中であったが、今回呼吸苦出現のため近医受診。ショックバイタルを呈しており、胸部CTでは両側肺動脈主幹部に血栓閉塞を認めた。経過と画像所見より慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の急性増悪が疑われ当院搬送。抗凝固療法を開始したが、血行動態が安定せず、右心カテーテル検査を施行したところ、平均肺動脈圧(mPAP)65mmHgと高値であった。血行動態の安定を図るためウロキナーゼ投与を行い、mPAP42mmHgまで改善したが依然高値であった。第9病日の胸部CTでは血栓は消退傾向も残存を認めた。麻痺性イレウスも合併し、第14病日の腹部CTでfree airを認めたため、消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。盲腸から上行結腸の断裂が見られ、創部を洗浄・閉鎖し、人工肛門を作成した。術後に敗血症を呈し、血液吸着を施行した。CTEPHに対しては当初ドブタミン、エポプロステノールを開始し、第27病日よりリオシグアトの内服へ切り替えた。第63病日に施行した右心カテーテル検査ではmPAP31mmHgと改善を認め、HOTを導入の上、退院となった。日常生活ではHOT下で特に困らない状態までADLは改善した。CTEPHに対し、肺動脈血栓内膜摘除術も考慮されたが、人工肛門を増設されていることなどから、バルーン肺動脈形成術(BPA)を行い、良好に治療し得た。ショックを呈したCTEPH急性増悪の治療中に麻痺性イレウス、消化管穿孔、敗血症など合併した症例を良好に治療し得た一例を経験した。さらに慢性期にはすべての原因であるCTEPHに対するBPAも可能となった。 ショックを呈するような重症病態の治療においては、感染や出血、全身性炎症等のため治療に難渋することがある。本症例は希少疾患であるCTEPHを原因とした一連のイベントに対して麻酔科、循環器内科、消化器外科の多科連携、集学的治療によって良好に治療し得た。示唆に富む症例と考えられ本会に提示する。