ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-810-FP-193 心腔内血栓の治療方針に難渋した心臓サルコイドーシス症の一例1)東京医科大学循環器内科学分野、2)東京医科大学先進的心不全治療医学講座岩崎 陽一1,2)、渡邉 雅貴1,2)、小林 正武1,2)、山下 淳1)、山科 章1,2)症例は2011 年頃よりNYHA-IIm 程度の呼吸困難感を自覚するも受診歴のなかった60 代女性。2015 年5 月中旬頃から食思不振が進行したため近医受診。肝機能異常、両下腿浮腫および、心エコー図検査で心機能の低下、左室内異常構造物を認め、急性非代償性心不全状態であったため当院集中治療室へ緊急搬送となった。当院で施行した心エコー図検査では、左室前壁から側壁にかけて壁運動が高度に低下し、同部位に一致して可動性のある有茎性血栓を認めた。可動性に富む心腔内血栓は飛来部位によっては突然死のリスクが高いと報告されており、血栓摘出術の可能性を早期に考慮した。虚血性心疾患の除外目的に冠動脈造影を施行したが、有意狭窄は認められず、高度に低下した心機能の原因として、心筋症などの鑑別が必要と判断した。心外病変としては、眼サルコイドーシス症、肺サルコイドーシス等の鑑別を行ったが確定診断には至らず、心不全が代償期に移行した後に67Gaシンチグラフィを施行したところ、肺門リンパ節および心臓に集積を認めたため心サルコイドーシスが疑われ、低左心機能・67Gaシンチグラフィでの異常集積及びFDG-PETでの左室前壁から中隔にわたる集積と併せ、最終的に心臓サルコイドーシスの臨床診断に至った。今回我々は、可動性に富む心腔内血栓を伴う心臓サルコイドーシス症を経験した。幸いにも経過中、血栓塞栓症の合併もなく、抗凝固療法継続にて血栓は消失したため外科的な血栓摘出術を回避することができたが、治療経過中には常に心腔内血栓に対する治療アプローチの決定に苦慮した。本症例は臨床病態のみならず、治療方針決定のプロセスも示唆深かったため、集中治療領域において意義深い症例と考えここに報告する。FP-194 心不全の臨床経過とBNP 値の解離が認められた急性心筋炎の一例金沢大学附属病院 集中治療部北野 鉄平、岡島 正樹、野田 透、越田 嘉尚、佐藤 康次、関 晃裕、相良 明宏、余川 順一郎、蜂谷 聡明、谷口 巧症例は70 代の女性。化膿性脊椎炎術後にて当院整形外科に通院中であった。2015 年6 月頃より発熱、感冒症状、食欲低下などを自覚していた。8 月に入り全身倦怠感が出現し、8月6 日に胸痛と呼吸困難を認め、当院へ救急搬送された。来院時、ショックバイタルであり気管内挿管、カテコラミン開始。来院時心電図にて側壁誘導にてST上昇を認めたため、冠動脈造影を施行。急性冠症候群は否定され、急性心筋炎と診断され、IABP挿入後にICU 入室となった。ICU入室時後はガンマグロブリン大量投与、ドブタミンサポート下に左室収縮能の改善を認めたためIABP 離脱、ノルアドレナリン漸減離脱し、心不全は改善傾向となった。第1 秒日のBNP は712 であり、第4 秒日には胸部単純写真にて心不全の改善を認めたにもかかわらず1960まで増加した。UCG 上はEF40%、E/A1.73 と偽正常化パターンであった。さらに第6秒日にはうっ血が改善傾向であり、UCG 上はEF62%、E/A1.26 と改善したがBNP は4589 まで増加した。第7 秒日には病態把握のために血行動態検査を行った。結果はForrester Ι群であり、左室拡張末期圧は14mmHgと軽度上昇のみであった。同時に測定したBNP は3454 と高値であり解離を認めた。その後、BNP は第13 秒日には433、第18 秒日には307 と低下した。患者は順調に回復し、リハビリ目的に転院となった。今回、心不全の臨床経過は改善傾向を認めたが、BNPが悪化した一例を経験した。心不全急性期にはBNP 値が心不全の経過と一致しない場合もあり、総合的に判断する必要があると考えられた。FP-195 広範囲熱傷に対する3 回目の術後にたこつぼ心筋症と診断された一例1)信州大学 医学部 麻酔蘇生学教室、2)信州大学医学部救急集中治療医学教室安藤 晃1)、杉山 由紀1)、清水 彩里1)、一本木 邦治2)、今村 浩2)、川真田 樹人1)【はじめに】たこつぼ心筋症は,精神的・身体的ストレスが発症に関与する.今回,広範囲熱傷に対する3回目の術後にたこつぼ心筋症と診断された症例を経験した.【症例】80歳台,女性.湯船に倒れこみ,背面,臀部,左前胸部を主とした総面積26%の2度熱傷(Burn index ; 13)を受傷した.受傷6 日目と14日目に,デブリードマンと植皮術を全身麻酔下で施行したが,術中経過に特記事項はなかった.受傷34 日目に,前胸部と背部から採皮し左側腹部をデブリードマンし植皮する,3回目の熱傷手術を施行した.手術室での抜管直後から,シバリングと努力呼吸,頻脈を生じ,軽度のST低下を認めた.酸素需給バランスの破綻による心筋虚血と判断し,鎮静・加温し再挿管した.1時間後の12誘導心電図は,電極の位置制限やシバリングにより判読困難だったが,著明なST 変化は認めなかった.血液検査では,トロポニンTとH-FABP が軽度上昇していたが,CK-Mb は正常範囲内だった.術後1 日目の心エコーで左室前壁の壁運動低下を認めたが,12 誘導心電図では著変なく,血液検査では,トロポニンT は増加していたがH-FABP は低下し,CK-Mb は正常範囲内であった.急性冠症候群とたこつぼ心筋症の可能性を考慮し,経過観察となった.術後2 日目の心エコーで心尖部の収縮低下および心基部の過収縮を認め,たこつぼ心筋症と診断された.術後15 日目の心エコーでは壁運動異常は改善しており,術後35日目にリハビリ目的で転院した.【考察】たこつぼ心筋症の典型的なエコー所見が得られたのは術後2日目であったが,臨床経過及び心筋逸脱酵素の経過から,手術中あるいは手術直後と発症したと考えられた.過去2回の手術時や熱傷受傷時には発症せず3回目の手術で発症した要因として,熱傷の長期管理に加え,広範囲手術,抜管時のストレスなどが相加的に関与したと考えられた.