ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-804-FP-175 高マグネシウム血症が原因と思われる心静止松波総合病院 麻酔科 集中治療部田中 亜季、小島 明子、佐藤 玲子、南 悦子【はじめに】酸化マグネシウム(以下Mg)は副作用が少なく安全な薬として便秘薬や制酸剤として広く使用されている。重篤な副作用として高Mg 血症があり、高齢者や腎機能障害がある場合には注意が必要とされている。酸化Mgの内服との因果関係が否定できない高Mg血症は全国的に報告されており、死亡例も存在する。今回我々は、酸化Mg 長期内服患者の心停止を経験したので報告する。【症例】74 歳男性。【既往歴】糖尿病、脳梗塞(左上下肢麻痺)、閉塞性動脈硬化症。【内服】アスピリン、カンデサルタン、フロセミド、リスペリドン、グリベンクラミド、酸化Mg。【病歴】特別養護老人ホーム入所中、ADL自立。腹痛を主訴に当院へ救急搬送。意識レベルや呼吸・循環動態に変化なし。腹部CT でイレウスを認めたが、穿孔所見は認めなかった。閉塞機転となるような病変を認めず、イレウスは大量の糞便によるものと判断し一般病床へ入院した。入院後に病棟で摘便処置を行ったところ処置中に心静止となり、蘇生開始。すぐに蘇生し、回復後の意識は清明、呼吸循環動態も安定していたが、心静止の原因が不明でありICUへ入室。ICU 入室後、吸痰刺激で再び心静止となった。蘇生処置行うも救命できなかった。【考察】病棟での採血で高Mg血症(15.0mg/dL)[基準値1.8-2.6 mg/dL]を認めた。ほかに心静止の原因となる病態は否定的で、今回の心静止エピソードの原因として、結果的に高Mg血症が強く疑われた。症例は酸化Mg を長期服用しており、酸化Mg による高Mg 血症の可能性が高い。【まとめ】高齢者は自覚症状に乏しく、腎機能が正常でもMg 製剤を服用時には血中Mg 値に注意が必要となる。年齢や既往に関わらず、Mg 製剤を長期服用時には定期的に血中Mg値を検査することが望ましい。またMg製剤服用患者の救急受診時には、血中Mg値異常を念頭におくことが重要である。FP-176 複数の薬物でQT 延長症候群が誘発されTorsades de pointes(TdP)となった1 例潤和会記念病院 薬剤管理室児玉 英一われわれは,複数の薬剤によってQT 延長となりTorsades de pointes(TdP)となった症例を経験した.症例報告を行うとともに薬剤管理の問題点に関して考察した.【患者】80歳台,女性.【既往歴】腰部脊柱管狭窄症,心不全,高血圧.【服薬歴】フロセミド,スルピリド,補中益気湯,フェソテロジンフマル酸,グルコン酸カリウム,アミトリプチリン,治打撲一方.【現病歴】背部痛でペインクリニック入院.ブロックとリハビリ,服薬で治療を行っていた.入院40 日目に誤嚥性肺炎でSBT/ABPCが開始,入院50日目にTdPとなった.直ちに心肺蘇生が開始され,蘇生後ICU入室となった.【ICU経過】蘇生後カリウム:2.5mEq/Lと低値だった.心電図でT 波の平常化,QTcが0.54秒と延長,U波がみられた.KCl とMgSO4 が投与された.カルシウムは正常値であった.その後,徐々に全身状態が悪化し3 日後に死亡した. 【考察:1】三環系抗うつ薬のアミトリプチリンは,高用量服用でQT延長となる可能性がある.入院時服薬量は1日30mgと比較的少量であった.また,フェソテロジンフマル酸の類似薬やスルピリドでQT延長が起こるとされている.これらの薬剤は1 年以上前から服用しており,入院時やその1 か月前の心電図ではQT延長は見られなかった.また入院時はグルコン酸カリウムでカリウムは補正できており基準範囲内であった.原因としては,入院中の食事摂取量が少なかったこと.さらに追加になった治打撲一方と,以前から服薬していた補中益気湯に含まれている甘草が原因で,偽アルドステロン症を発症し,低カリウム血症となったと考えた.以上の複数の薬剤誘発性QT延長症候群が起こったと考えた.【考察:2】複数の薬物による副作用は気づき難く,本症例のような重大な結果となる場合がある.薬剤師として,血液検査と心電図の検討を行い,治打撲一方が追加時点で,低カリウムと他の薬剤とのより早く相互作用を考慮するべきであったと考えた.FP-177 敗血症性ショックに合併した頻脈性心房細動に対してミルリノンとランジオロールの併用が有効であった一例1)滋賀医科大学 救急・集中治療部、2)滋賀医科大学 外科学講座、3)滋賀医科大学 救急集中治療医学講座辻田 靖之1)、宮武 秀光1)、山根 哲信1)、藤井 恵美1)、清水 淳次1)、園田 寛道2)、萬代 良一1)、高橋 完1)、谷 眞至2)、江口 豊3)頻脈に対してランジオロール(LAN)を投与する時、カテコラミンを使用しないことが望ましいが中断できない場合も多い。左室収縮力低下を伴う頻脈性心房細動(AF)の敗血症性ショックに対してミルリノン(MIL)とLAN の併用により良好な心拍数調節が得られた一例を経験したので報告する。【症例】73 歳女性。慢性AF あり。大腸癌術後のイレウスに対して開腹再吻合術施行。術後1日目より発熱。術後3 日目に血圧、尿量低下。腹腔内感染を疑い試験開腹術施行するも病変はなく閉腹しICU入室となる。ICU入室後Early Goal-Directed Therapyを施行するも心拍数 180 bpm、血圧68/50 mmHg、心係数 2.2 L/min/m2 でショックが続くためCHDF とPMX-DHP、少量ステロイド持続投与を開始。ICU 入室12 時間後、ノルアドレナリン(NA)、バソプレシン(AVP)、ドブタミン(DOB)4μg/kg/min 投与下で心拍数185bpm、血圧81/57mmHg、心係数 1.8 L/min/m2、左室駆出率 40%で依然cold shockの状態であった。頻脈性AFに対してLAN 1 μ g/kg/min を開始したが30 分後、血圧51/41 mmHg まで低下したためLAN 投与中止した。NA、AVP 増量し血圧回復後LAN 0.5 μ g/kg/min で再開するが再度血圧が低下しLAN を中断。MIL を0.2 μ g/kg/min で投与開始し、MIL 開始2.5 時間後、心拍数177bpm、血圧140/97mmHg でLAN 0.5 μ g/kg/min で再開するも血圧低下せずLAN を3 μ g/kg/min まで漸増し、LAN再開2時間後、心拍数153bpm、4時間後、143bpmに改善した。翌日にはDOB中断、NA減量し、心拍数131bpmに改善。翌々日にはNA 中断、心拍数99bpm に改善。ICU 入室6 日後抜管しICU を退室した。なお血液培養よりPseudomonas 属を検出し病歴より原疾患は非閉塞性腸管虚血が疑われた。【考察】カテコラミン依存性の頻脈性AFを伴う敗血症性ショックに対して、DOBサポート下では血圧低下のためLANによる心拍数調節は継続できなかったが、MILサポート下では血圧が低下することなくLANによる心拍数調節を行うことができた。