ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-799-FP-160 当科における非侵襲的換気療法の施行経験1)高槻病院 小児科、2)高槻病院 小児集中治療科、3)高槻病院 麻酔科山本 和宏1)、起塚 庸1,2)、近藤 淳1)、大西 聡1,2)、土居 ゆみ2,3)【はじめに】呼吸不全を呈した小児における気管挿管回避のために当科では酸素療法に加えて1)体外式持続陰圧呼吸補助(RTX)、2)非侵襲的陽圧換気療法(NIV)、3)経鼻高流量酸素療法(HFNC)のいずれかを行うことが多い。しかし、機材の選択には明確な基準を設けておらず主治医の判断で行っている。そこで、当院でのRTX、NIV、HFNC の施行状況を検討し、それぞれの特性について考察したい。【対象と方法】対象は2014 年10 月から2015 年8月までの11 か月間において、当院PICU に呼吸不全を主訴に入室した95名のうち、RTX、NIV、HFNC のいずれかを施行した38 例。既に気管切開をされている症例、抜管後の呼吸補助として非侵襲的換気療法を導入した症例は除外した。診療録を用い、年齢、主病名、基礎疾患、鎮静薬投与の有無、転帰等について検討した。【結果】RTX は生後1ヶ月から14 歳(中央値2 歳)の28 例、NIV は生後0ヶ月から1 歳(中央値5ヶ月)の8 例、HFNCは1歳と7歳の2例にのみ施行していた。主病名ではRTXは喘息9例、肺炎(RSV感染除く)7例、RSV感染6例、その他6例で、NIV はRSV感染4 例、気管支炎3例、喘息1例で、HFNC は気管支炎と肺炎であった。基礎疾患の検討では神経筋疾患例はRTX14例、NIV3 例、HFNC1 例で、慢性肺疾患例はRTX1 例、NIV1 例であった。鎮静薬投与を要したのがRTX2 例、NIV6 例であった。RTXでは充分な効果が得られず3 例が気管挿管に移行、5 例がNIVへ移行しその内2例が気管挿管に移行した。【まとめ】RTX は基礎疾患のある症例に行うことが多く、鎮静薬の投与は稀であった。一方、NIVは鎮静薬投与下に乳児に行うことが多い傾向にあり、RTXの方が装着の不快感が少ないことが推察された。しかしRTX では効果不十分であってもNIVで有効な症例を認め、症例によっては呼吸補助力がRTXよりNIVでより強力である可能性が示唆された。今後、RTX とNIVの短所を補える可能性を期待しHFNC の使用経験を蓄積したい。FP-161 当施設における13 トリソミー、18トリソミー合併患者の心臓手術の周術期管理1)自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児手術・集中治療部、2)自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座岩井 英隆1)、大塚 洋司1)、中村 文人1)、永野 達也1)、多賀 直行1)、竹内 護2)13トリソミーおよび18 トリソミーは予後不良の染色体異常であり、従来侵襲的治療が行われることは少なかったが、近年長期生存例も報告され治療が行われる症例も増えている。今回当施設における13トリソミーと18トリソミー合併患者の心臓手術症例の周術期管理の内容と合併症、予後について検討した。【方法と対象】2006年9月から2015 年6月までに当施設で心臓手術を受けた症例で、染色体検査で13 トリソミーまたは18トリソミーと診断されている患児を対象に診療録から後方視的に解析した。【結果】上記期間に6 例が心臓手術を受け、13トリソミーが2例、18トリソミーが4 例であった。疾患の内訳はVSD2例、TOF1 例、DORV1 例、DORV/PA1 例、SRV1 例で、修復術が1 例、姑息術が5 例(PAB2 例、両側PAB1 例、BTS2 例)に行われた。手術時の年齢の中央値と範囲は53[3-314]日、体重は2.5[1.4-3.8]kg、カテコラミン投与期間は4.9[2.9-11.0]日、PICU 滞在期間は8.9[4.0-33.9]日であった。術前より人工呼吸管理が必要だった症例は術後も人工呼吸管理が必要であった。周術期合併症は胸水貯留2 例、低血糖1 例、全身強直による換気困難1 例であった。3 例が自宅退院し2 例が紹介元施設に転院、1 例が両側PAB 後116 日で低酸素血症のため死亡した。また遠隔期に2例が心疾患以外の原因で死亡した。【考察】当施設では6 症例中5 症例が自宅退院または転院しており、心原性の死亡が少ないのは同疾患を合併した患者のPDA結紮術を対象とした過去の報告と一致した。13トリソミーおよび18トリソミーを合併した患児は心臓手術により自宅退院可能となるなど本人および家族のQOLが向上する可能性があるが、術前より人工呼吸管理を必要とした患児は術後も中枢性無呼吸などで人工呼吸器から離脱できず、心臓以外の原因でQOLは制限を受ける可能性がある。FP-162 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症に対する遺伝子治療の術後管理2 症例の経験1)自治医科大学 とちぎ子ども医療センター 小児手術・集中治療部、2)自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座、3)自治医科大学 小児科学講座多賀 直行1)、中村 文人1)、岩井 英隆1)、永野 達也1)、大塚 洋司1)、竹内 護2)、宮内 彰彦3)、小島 華林3)、山形 崇倫3)AADC欠損症は、神経伝達物質合成経路の酵素であるAADC の遺伝子異常によって発症する非常に稀な疾患で、間歇的眼球回転発作や四肢のジストニア、随意運動障害などを主症状とし、発汗や鼻閉などの自律神経症状を合併するものが多い。今回我々は、AADC 欠損症患者2 症例に対して、AADC 遺伝子を組み込んだアデノウィルス関連ベクターを、定位脳手術によって線条体に注入する遺伝子治療の術後管理を経験したので報告する。【症例1】15歳男児。3歳8か月時にAADC欠損症と診断され、これまでに睡眠時無呼吸症候群や嚥下機能低下のためアデノイド切除術、扁桃摘出術、気管切開術および胃瘻造設術を全身麻酔下に施行されている。今回全身麻酔下に遺伝子治療を受け、術後当小児集中治療部(PICU)に入室した。入室時未覚醒であったが自発呼吸は出現していたため、気管切開チューブを介してプレッシャーサポートモード(PS)で呼吸補助を行い、16 時間後に人工呼吸器より離脱した。【症例2】12歳女児。症例1 の妹で、生後7 か月時にAADC欠損症と診断された。アデノイド切除、扁桃摘出術および胃瘻造設術が全身麻酔下に施行されていたが、気管切開術は受けていなかった。PICU入室時には未覚醒であったが自発呼吸と咳反射は十分にあったため、PSで呼吸補助を行い、覚醒を待って1 時間後に抜管した。2症例とも術前より唾液分泌亢進などの自律神経症状を呈していたが、術後発生を危惧された低血糖、体温異常、徐脈、低血圧などの症状は出現しなかった。また海外の報告では術後無呼吸の報告があり、2 症例とも人工呼吸器離脱後に呼気炭酸ガスモニタを連続的に行ったが、どちらも無呼吸の出現はなく、唾液の誤嚥などによる呼吸器合併症も起こさなかった。症例1 は術後3日目に、症例2は術翌日に一般病棟へ退室した。【結語】AADC 欠損症に対する遺伝子治療術後に、呼吸及び交感神経系の異常が出現せず、順調な経過をたどった2 症例を経験した。