ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-785-FP-118 循環器疾患患者における鎮静覚醒トライアル・自発呼吸トライアルの効果医療法人邦友会 小田原循環器病院岡本 直也、七戸 保奈美、片岡 ともみ、天石 好美【目的】人工呼吸器を装着中の患者は鎮静・安静を伴う長期臥床を強いられることから、ICU関連筋力低下や人工呼吸器関連肺炎、せん妄・認知機能障害などを来たす恐れがある。その結果、QOLの低下や入院の長期化、死亡率の増加を招くと言われている。当院でも人工呼吸器装着患者のADL が低下し入院の長期化を余儀なくされることも多く、患者のQOLを維持するうえで早期抜管は重要な課題である。近年、人工呼吸器早期離脱に向けた取り組みとして鎮静覚醒トライアル(以下SAT とする)や自発呼吸トライアル(以下SBTとする)の有用性が報告されている。当院ではウィーニング開始基準がなく、医師の経験や考え方によりウィーニングの方法が異なっていた。そこで本研究は、循環器疾患の特性を踏まえ院内SAT・SBT プロトコルを作成し、両トライアルの効果を検証する。【方法】対象:循環器内科疾患によりHCU に入院し、人工呼吸器装着となった患者2 名。方法:3 学会合同プロトコルを参考に院内SAT・SBT プロトコルを作成し介入する。SAT・SBT 導入前後でウィーニング開始から抜管までの期間を比較する。【倫理的配慮】当院倫理委員会の承認を得た後、対象患者家族に書面により説明・同意を得て実施した。【結果】対象者2 名にSAT・SBTの介入を実施した。導入前と比較し、ウィーニング開始から抜管までの期間が平均3.6 日短縮した。【考察】SAT・SBT導入により鎮静レベルを調整し、適切な覚醒レベルを維持したことで患者が自身の状況を認識・把握し、協力を得ながらウィーニングを進められた。その結果、より安全な呼吸管理が行えた。また、ウィーニング段階より患者自身が治療の見通しや回復の兆しを実感できたことで、抜管前後を通しせん妄の発症や呼吸状態の悪化をみることなく経過し、SAT・SBTの有用性が示唆された。FP-119 抜管後の呼吸管理に難渋したY グラフト置換術後患者の一例1)愛知医科大学病院 看護部、2)愛知医科大学 麻酔科学講座森 一直1)、黒澤 昌洋1)、畠山 登2)、藤原 祥裕2)【目的】 腹部大動脈瘤破裂に対して緊急Yグラフト置換術を行い、術後GICUにて抜管するが再々挿管となった症例を経験し、再々挿管となった要因を明らかにすることを目的に事例検討を行なった。【方法】事例:60歳代男性。現病歴:原因不明の多発脳梗塞にて緊急手術の4日前に入院。入院中、腹部大動脈瘤破裂が見つかり緊急Yグラフト置換後、気管挿管下でGICU入室。既往歴:高血圧、狭心症、アルコール性肝障害。倫理的配慮として、個人が特定されないよう配慮を行なった。【結果】術後経過:手術後、フェンタニル、プレセデックスにて鎮痛、鎮静管理。GICUに入室後、腹直筋鞘・TFP ブロックを行う。入室後8時間で抜管。抜管後もフェンタニルは継続。手術当日の夜間と1PODに活動性せん妄あり。2PODに無気肺のため酸素化不良となり再挿管。3POD には酸素化も改善。抜管後の痛みのコントロールためフェンタニル再開と傍脊椎ブロック施行後に抜管。抜管後もフェンタニルは継続。4PODに再度、傍脊椎ブロック施行するが痛みのため有効な咳嗽できず。5POD再度無気肺となり酸素化不良にて再々挿管。6PODから離床、理学療法開始。8PODにミニトラックを挿入し、抜管。11PODにミニトラック抜去し、12PODに退室。【考察】 術後、フェンタニルの投与や神経ブロックを行ったが、痛みのため有効な咳嗽ができず、加えてせん妄、早期離床・理学療法の介入の遅れが再々挿管に至った要因と考える。人工呼吸離脱プロトコルでは、有効な咳嗽がない場合は再挿管の危険因子の高リスクであり、人工呼吸管理指針であるABCDEバンドルでは鎮痛やせん妄のマネジメント、早期離床が必要とされている。今回、再々挿管の症例を経験し、痛みのコントロールに難渋する場合の排痰援助や理学療法などの難しさを感じたと同時に、このような患者にはチームで人工呼吸管理から抜管後のケアを行っていくことに必要性を再度認識した。FP-120 誤嚥性肺炎予防の頭部拳上に対する実態調査―効果的な頭部拳上を実践につなげるための関わり―松戸市立病院向井 和樹、植田 美幸【目的】A病院救急病棟では、病態から自力体動困難な患者や、体動制限のある患者が多い。それらの患者は誤嚥性肺炎(以下肺炎)を合併する危険性が高い。今回、肺炎予防ケアの一つである頭部挙上に着目した。肺炎予防に効果的とされる頭部挙上角度は30度以上である。しかし、病棟では30 度に満たない状況が多くみられた。そこで、病棟看護師(以下看護師)の頭部挙上に対する認識とケアの実態調査を行った。日常のケアの実態を明らかにすることで、ケアを振り返る機会となると考えた。これにより、患者に益となるケアが提供できることを目的としている。【方法】1. 頭部挙上角度測定:2015年の3ヶ月で体動困難や体動制限のある患者を対象に、日勤の体位変換後と経管栄養施行中に角度計で測定。2.看護師40名にアンケートで、頭部挙上の認識を調査。【成績】測定件数は、体位変換後260件、経管栄養中は64 件。この内、頭部挙上角度30 度未満は76.9%、30 度以上22.1%である。アンケートは35名の回答を得た。肺炎予防に効果的とされる頭部挙上角度を30度以上と認識している回答は68%となった。同アンケートにて角度の確認ツールも質問した。回答は電動ベッドリモコン表示が33件、角度計使用が13件、感覚が13件、その他が8件であった。【結論】アンケートより68%の看護師は肺炎予防の頭部挙上角度を把握していることがわかる。しかし、実際には30度に満たない角度が多い。この差が生まれる理由の一つに、角度を目に見える方法で確認していないことが考えられる。アンケートではリモコン表示や角度計使用で確認の回答が大半であったが、それが行われていれば確実に30 度以上の頭部挙上が遵守される。看護師は知識を持っていても、実際に確実な施行ができなければ意味を持たないケアとなっていることを認識する必要がある。今後の課題として、頭部挙上についての事実を周知し、日々のケアを意味のあるものとしていきたい。