ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-780-FP-103 鼻出血が原因の出血性ショックに対して動脈塞栓術と人工呼吸器管理を施行した鼻腔内悪性リンパ腫の一例宮崎県立宮崎病院 集中治療部田崎 哲【はじめに】鼻出血からの出血性ショックに対して緊急動脈塞栓術を施行し、術後ICU での人工呼吸器管理を行った鼻腔内悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する。【症例】57歳男性。身長165cm、体重59kg。咽頭の違和感を主訴に当院耳鼻科を紹介、受診された。右鼻腔に腫瘍性病変を認め生検を施行、悪性リンパ腫(NK/T cell lymphoma)の診断を得た。生検7 日後に鼻出血を認めたため当院救急外来を受診、ボスミンガーゼでの圧迫等の処置を行ったが止血困難であった。造影CT にて仮性動脈瘤を伴う鼻腔腫瘍を認め腫瘍の自壊による出血と思われた。緊急で塞栓術を施行、右顎動脈からの塞栓を行った。術中ショックバイタルとなったため術後はICUにて経過観察を行った。ICU 入室7時間後に血圧の低下と貧血の進行を認めた。口腔内へ多量に出血したため気道確保の目的で気管内挿管を施行した。止血目的で再度塞栓術を施行、左上行口蓋動脈の塞栓を行った。併せて両鼻腔、咽頭内にタンポンガーゼを挿入し圧迫止血も行った。止血が得られるまではICU での全身管理を継続する方針となった。入室6日目にタンポンガーゼをいったん抜去したが出血は認められなかった。入室7 日目に抜管、経過観察を行ったが再出血の所見無く入室8日目に一般病棟へ転棟となった。本症例は悪性リンパ腫の中でも“ 節外性NK/T 細胞リンパ腫、鼻型” に分類される比較的稀なタイプの悪性リンパ腫であった。現在内科で放射線化学療法を施行中である。【結語】腫瘍が原因の鼻出血は通常の圧迫止血や電気凝固、レーザー焼灼等の処置では止血コントロールが困難な場合がある。出血量も多く出血性ショックとなる危険性もあり気管内挿管を含めた全身管理を念頭に対応する必要があると思われた。鼻出血のコントロールのため2 回の動脈塞栓術を施行、術後にICU での呼吸管理を施行した悪性リンパ腫の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。FP-104 多科連携によって胸腔ドレーン迷入による肺動脈損傷に対しコイル塞栓術にて良好に治療しえた一例1)東京医科大学病院循環器内科、2)東京医科大学病院放射線科、3)東京医科大学病院呼吸器外科・甲状腺外科高良 祐葵1)、山下 淳1)、大滝 裕香1)、守矢 知永2)、勇内山 大介2)、佐口 徹2)、前田 純一3)、山科 章1)【はじめに】胸腔ドレナージは、気胸や胸水貯留に対して行われる一般的な処置であるが、胸膜癒着の高度な症例では重篤な合併症を起こす可能性がある。今回、肺癌術後患者への胸腔ドレナージ挿入によって肺動脈損傷を来したが、肺動脈へのコイル塞栓術によって救命し得た症例を経験したので報告する。【症例】症例は50 歳代男性。他院にてこれまで2000 年に右上葉肺腺癌に対し上葉切除術を2回施行している。さらに術後、肺瘻となったため、右胸膜癒着術も施行している。今回、肺瘻の再発に対して、胸腔ドレーン挿入を試みたところ、ドレーン内に大量出血を認めた。胸部CTにて、トロッカーカテーテルが右肺実質へ貫通し、右肺動脈内へ迷入している所見を認めたが、ドレーン抜去による肺動脈出血を回避するため、ドレーン抜去をせずに、当院緊急搬送。肺動脈のどの部位からトロッカーカテーテルが迷入しているのかを同定し、治療法を決定するため、肺動脈造影を施行した結果、右内側中葉動脈の分枝(A5b)への貫通が疑われた。トロッカーカテーテルが肺実質を貫通して右内側中葉動脈内に迷入しており、肺動脈気管支瘻を来している可能性が高く、フィブリン糊ではなく、コイルによる塞栓術を選択した。ガイディングカテーテルを損傷血管に挿入し、血管の近位部をバルーンカテーテルにて閉塞させ、右内側中葉肺動脈末梢からコイルを積み上げた。コイル塞栓術後に胸腔ドレーンを抜去し、肺動脈造影を行ったところ、血管外への造影剤の漏出は認めなかった。術後、明らかな合併症は認めず、第8 病日に退院となった。【まとめ】本症例では、胸腔ドレーン迷入による肺動脈損傷に対し、呼吸器外科、循環器内科、放射線科が連携して治療にあたったことで、損傷部位の正確な同定、治療法の選択、実際の治療が可能となった。困難な局面での多科連携が有効であったと考えられる貴重な症例であり、本会に提示する。FP-105 上下顎骨切り術後に人工呼吸器関連肺炎をきたした1 例山口県立総合医療センター 麻酔科内山 史子、伊藤 誠、砂川 将直、福本 剛之、角 千恵子、中村 久美子、田村 尚【はじめに】上下顎骨切り術では,特に幼少期より手術を繰り返した症例は術後に内出血や浮腫で気道の維持が困難となる危険性があり,当院では数日間気管挿管での人工呼吸管理を行っている.今回その経過中に人工呼吸器関連肺炎をきたした症例を経験した.【症例】17歳,男性.身長161cm,体重55kg.両側唇顎口蓋裂に対し4 回の手術歴あり.他に特に既往はなかった.術後変形に対する上下顎骨切り術を全身麻酔で行い,スパイラルチューブ(内径6.5mm)を経鼻挿管した.手術時間は4 時間4分,出血量は790 mLであった.手術後半から頻脈・高血圧をきたし,レミフェンタニル(計4.2mg)に加え,フェンタニルを計1,750μg投与し,プロポフォール,ニカルジピンを投与しながら挿管のままICUに入室した.入室時,心拍数120/分,血圧180/50 mmHgで,体温は39℃であった.デクスメデトミジンの追加等で頻脈・高血圧は改善したが深鎮静を必要とし,体温は38℃以上が持続した.入室3日目,気道内圧が上昇し気管チューブ内の血餅を気管支ファイバー(BFS)で除去した.4日目に40℃の発熱,酸素化の悪化をきたし,胸写で両下肺野の浸潤陰影を認めた.BFSで多量の膿性痰を吸引し,喀痰培養では6日目にK. pneumoniaeとS.anginosus の検出が報告された.抗菌薬はCEZ からTAZ/PIPC に変更していたが,ESBL 産生菌を疑いMEPM とした.CRP は33.07 mg/dLまで上昇したが以後漸減し,肺炎の症状も改善傾向となったため,8日目に抜管,10日目に一般病棟に転棟した.【考察・まとめ】上下顎骨切り術は経鼻挿管で気管チューブが細径となること,口腔ケアが困難であることに加え,本症例では比較的高侵襲で深鎮静を必要としたことがVAP発症に関与した可能性がある.