ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-779-FP-100 High CPAP/APRV モード管理中の経肺圧:High PEEP 管理中に食道内圧測定は必要か?1)堺市立総合医療センター 集中治療科、2)堺市立総合医療センター 総合内科熊澤 淳史1)、村上 紗羅1)、小畠 久和1)、青柳 健一2)、小原 章敏1)急性呼吸不全における人工呼吸器療法として様々なモードが使用されているが、いずれのモードにおいても生命予後を改善するという明確なエビデンスは存在しない。なかでも、Airway Pressure Releasing Ventilation(APRV)モードはAcute RespiratoryDistress Syndrome(ARDS)の患者を中心に急性呼吸不全の患者に用いられ、その効果が検討されてきた。他のモードと同様に生命予後を改善するというエビデンスは存在しないが、High PEEP による呼気終末の肺胞虚脱の防止、気道開放による換気方式のため気道内圧上昇を抑え圧損傷の防止といった、生理学的な側面から急性呼吸不全患者の管理に広く用いられている。APRVモードはその換気特性上、患者の自発呼吸を生かした管理を必要とする。APRVモード中の自発呼吸は、酸素化改善効果や、下肺野のリクルートメント効果を有し大きなメリットがあると考えられているが、APRV モード中の経肺圧についての報告はまだない。今回、酸素化維持のためにHigh PEEP を要した急性呼吸不全患者に対して、High PEEP下における自発呼吸による生じる経肺圧を測定した症例について、考察を交えて発表する。High PEEP下における経肺圧は自発呼吸の程度によりさまざまであった。しかし、症例によっては25cmH2Oを超える経肺圧が生じる患者も存在した。安全な管理の為にも、High PEEPで管理する際には、経肺圧測定が必要であると考える。FP-101 診断に苦慮した腎細胞癌に伴う肺塞栓症の一例和歌山県立医科大学 救急・集中治療医学講座島 望、木田 真紀、米満 尚史、宮本 恭兵、柴田 尚明、田中 真生、島 幸宏、岩崎 安博、加藤 正哉【はじめに】肺塞栓症は特異的な症状に乏しく、多彩な臨床症状を示し、高齢、肥満、長期臥床、悪性腫瘍などが危険因子である。中年の感冒症状を伴う急性呼吸不全で発症した、診断に苦慮した肺塞栓症の1 症例を経験したので報告する。【症例】症例は62歳男性。生来健康であったが、突然の発熱、意識障害が出現し、近医を受診。左大葉性肺炎と診断され、呼吸不全に対して人工呼吸器管理、抗菌薬・抗真菌薬治療が開始された。翌日、呼吸不全が悪化し、集中治療管理目的に当院へ転院となった。前医・当院入院時の培養検査はいずれも陰性であり、各種血中抗原・抗体検査も陰性であった。ICU入室後、ARDSを発症し、第1-3病日に腹臥位を施行し、第6病日に人工呼吸器を離脱した。第8病日の単純CTで肺動脈内・下大静脈内に高吸収域を認め、造影CTを施行。下大静脈浸潤を伴う右腎腫瘍を認め、右腎細胞癌による肺塞栓症と診断し、ヘパリンによる抗凝固療法を開始した。第42病日に施行した造影CTでは肺動脈内の血栓は著明な減少を認めた。第50病日、右腎摘出術・下大静脈腫瘍塞栓摘除術を施行。術後経過は良好であり、第65 病日に退院した。【考察】急性肺塞栓症の約20%に悪性腫瘍を合併し、剖検例では悪性腫瘍患者の約2%に肺塞栓症がみられたとの報告がある。肺腫瘍塞栓は肺血栓塞栓症と臨床的に相違はなく呼吸困難、胸痛、発熱、失神が主症状である。本症例は初診時の時点では肺塞栓症の危険因子は認めず、感冒症状を伴う急性呼吸不全であったため、肺炎による敗血症性ショックと考えた。しかし、初診時のCTを後向きに見直すと肺動脈内に高吸収域を認めた。危険因子を認めない患者でも急性呼吸不全の原因として肺塞栓症は念頭に置くべきであると考えられた。【結語】未診断の腎細胞癌下大静脈浸潤を伴う中年男性の肺塞栓症を経験した。生来健康な症例の重症肺炎の鑑別として肺塞栓症も考慮すべきである。FP-102 破傷風の一症例1)横浜南共済病院 ICU室 救急科、2)横浜南共済病院 救急科關野 長昭1)、高橋 耕平2)、森 浩介2)症例は、77才男性。身長179cm、体重85kg。4日前に咽頭違和感が出現し、3日前から嚥下障害、話しにくさ、頸部のコリがあった。2 日前に開口しにくさで近医受診したが、改善なく本日、嚥下障害、開口障害、頸部のコリを主訴に近隣病院受診後、当院へ紹介された。来院時、意識は清明で、麻痺はなく、筋強直もなかった。開口は、1.5 横指に制限されていた。痰がらみがあり、呼吸しにくいと訴えがあった。外傷はなかった。既往歴は特になく、週1 回畑仕事をする、日常生活に問題ない人であった。経過から、破傷風を疑い、直ちにテタノグロブリン、メトロニダゾールを投与し治療を開始した。痰がらみがあったが、意識清明で会話可能、本人の苦痛もないことから、神経内科で一般病棟に入院となった。入院当日21時過ぎから、痰が出せないと本人コールがあり、Satの低下も認められ、酸素投与をしていたが、全身硬直から酸素化が保てなくなったため、ミダゾラムで鎮静して挿管となった。開口困難があった。ICU 入室後、ミダゾラム、ブプレノルフィンの持続投与で、SIMVによる人工呼吸管理となった。 その後、筋緊張の出現と高血圧、頻脈、頻呼吸、発汗と自律神経系の異常反応が出現し、主にミダゾラムを一日量200mgまで使用し対応した。ICU 入室7 日目に気切し、その夜CPAP+PS に変更した。その際プロポフォールに変更、デクスメデトミジンの併用を開始した。8日目からはディアゼパムの間歇投与を開始した。気管痰が多く、むせると全身に筋硬直が出現していたが、徐々に改善して、入室17 日目に人工呼吸器を離脱し、20 日目に酸素投与も中止した。23日目に一般病棟へ退室となった。 本症例は、発症から96時間以上経過の来院で、受診時は意識清明で筋硬直の発作が全身性でないとし、直ちに人工呼吸が必要と考えずに経過観察した。挿管の実施判断について、もっと慎重に観察下に置き、早期に踏み切るべきでなかったかと反省している