ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-777-FP-094 食物による窒息後に生じた陰圧性肺出血に対し、ECMOを使用し救命した高齢者の一例独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター石田 健一郎、岩佐 信孝、曽我部 拓、高端 恭輔、佐尾山 裕生、家城 洋平、島原 由美子、定光 大海【緒言】:陰圧性肺水腫・肺出血は上気道閉塞後に急激に発症する。生命予後は良好と考えられているが、重篤な呼吸不全に陥ることもあり迅速な治療介入が必要である。我々は、食物による窒息後に陰圧性肺出血を来した高齢者に対し、ECMO の使用により救命した一例を提示する。【症例】:症例はADL の自立した88歳男性。慢性心不全に対して当院循環器科へ通院中、当院内での昼食中に突然の心停止に陥った。口腔内は多量の米粒と海苔塊で閉塞しているために換気が困難であり、マギール鉗子を用いて異物を除去した。気管挿管と2 サイクルの胸骨圧迫後に自己心拍は再開した。窒息から1時間後に気管チューブから泡沫状の血性分泌物を多量に認め、急激に呼吸状態が悪化した。胸部レントゲンで両側肺野に斑状陰影の分布が認められ、臨床経過から、上気道閉塞後の陰圧性肺出血を疑った。高PEEP による人工呼吸管理を行ったが、P/F 比は60-80 程度から改善しないため、呼吸状態の悪化から6時間後にvvECMOを導入した。気管支鏡検査で気管粘膜の浮腫状変化とびまん性出血を認めた。ヘパリンの持続静注による抗凝固をECMO の維持に使用したが、酸素化は徐々に改善し、第2病日にECMOから離脱した。肺出血も軽快した。合併症としてカテーテル留置に伴う少量の静脈血栓を認めたが、抗凝固療法で軽快した。第8 病日に抜管し、NPPV による管理を継続した。基礎疾患の慢性心不全の増悪により再挿管し気管切開を行ったが、利尿剤による水分管理後に人工呼吸器から離脱した。意識は清明で、歩行可能となり、廃用症候群に対するリハビリ目的で現在も入院中である。【考察】:本例は食物による上気道閉塞後に陰圧性肺出血を来したと考えられた。肺出血例にも関わらず、ECMOは酸素化の改善に有用であった。高齢者へのECMOの適応は症例ごとに検討が必要と考えられた。FP-095 フレイルチェストと皮下気腫を合併した胸部外傷の呼吸管理にAPRV が有効であった一例宮崎大学 医学部 附属病院 麻酔科日高 康太郎、長濱 真澄、越田 智弘、與那覇 哲、矢野 武志、松岡 博史、谷口 正彦、恒吉 勇男交通外傷によるフレイルチェストの管理中に皮下気腫を合併した症例に対し、APRVの呼吸管理が有効であった一例を報告する。症例は30 代、男性。飲酒後に道路上で寝ていたところを乗用車に轢過された。当院救命センターへ搬送され、両側肋骨骨折、両側血気胸、骨盤骨折を含む多発外傷を認めた。緊張性気胸の合併を認め、胸腔ドレーンが挿入されたが、呼吸不全は改善しなかった。気管挿管が行われ、人工呼吸管理(PCV FiO2:0.6 PC:8 cmH2O PEEP:12 cmH2O)が開始された。骨盤骨折による後腹膜出血に対し、両側内腸骨動脈塞栓術が施行された。ICU入室後、呼吸器との同調性に乏しく、フレイルチェスト、SpO2の低下を認めたため、鎮静薬の増量、呼吸器設定変更(SIMV+PS FiO2:0.5 PC:8 cmH2O PS:10 cmH2O PEEP:12 cmH2O)で対処した。第4 病日に胸部レントゲン撮影後、低酸素血症(FiO2:0.6 PaO2:59.3 mmHg PaCO2:48.8 mmHg)と皮下気腫の増大を認めた。胸郭の安定性を保ちつつ最高気道内圧を下げる目的で、呼吸器設定をAPRV(FiO2:0.5 PEEP:16/0 cmH2O)へ変更したところ速やかに低酸素血症は改善した(PaO2:104.9 mmHg PaCO2:39.5 mmHg)。ファイティングも減少し、皮下気腫の増大も認めなかった。呼吸状態は安定化し、第9病日に経皮的気管切開を行い、第10病日にICUを退室した。その後、第13病日に呼吸器離脱、第31病日にリハビリ目的で転院となった。APRVはhigh PEEPによる気胸、皮下気腫の合併が問題とされる。本症例では慎重にPEEPレベルを調節することでフレイルチェストに対する気道陽圧を維持しながら、皮下気腫と酸素化を改善することができた。FP-096 NAVAモードによる人工呼吸中の横隔膜運動監視の2 症例名古屋大学大学院 医学系研究科 救急・集中治療医学分野福田 幸寛、眞喜志 剛、海野 仁、日下 琢雅、東 倫子、田村 有人、江嶋 正志、沼口 敦、角 三和子、松田 直之【はじめに】Neurally Adjusted Ventilatory Assist(NAVA)は,MAQUET 社(スウェーデン)の Servo-i ベンチレータの呼吸管理モードであり,電極付胃管栄養カテーテルの横隔膜活動電位(Edi)に基づく換気補助様式である。NAVAを用いた2症例を報告する。【症例1】63歳女性,身長153 cm , 体重53 kg,APACHE2スコア 32。失語症で発症し,開頭脳生検で原発性中枢神経血管炎の診断となった。ステロイドパルス療法とエンドキサンパルス療法に反応せず,右顔面神経麻痺と右動眼神経麻痺などが進行した。この治療経過で誤嚥性肺炎を合併し,重症敗血症と気道閉塞のためにICU入室となった。呼吸状態悪化により人工呼吸器管理となった。横隔膜電位の評価を目的としてEDi catheterを挿入してNAVAモード管理としたが,横隔膜電位を感知できず,中枢性および神経調節性の呼吸障害と診断した。呼吸状態の改善により,人工呼吸器補助下でICU退室とした。【症例2】46歳女性,身長156 cm , 体重47 kg,APACHE2 スコア 29 。クレアチンキナーゼ 28432 IU/Lの横紋筋融解症の原因が,呼吸筋だった症例である。第3病日に換気不全として気管挿管し人工呼吸器管理とした。第6 病日に呼吸筋低下による換気障害に対して,横隔膜電位の評価としてEDi catheterを挿入し,NAVA モードで呼吸管理をした。管理開始時はEDi max3-6 程度でNAVAレベルも3程度だったが,第9病日にはEDi max が10まで上昇し,NAVAレベルを1まで低下できたため抜管した。NPPVへ移行し,第15病日にICUを退出し,第25病日に退院,第50病日に職場復帰となった。【結語】名古屋大学救急・集中治療医学では,NAVAモードを横隔膜電位と横隔膜運動の評価として用いている。この初期の2 症例の報告である。