ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-767-FP-064 クリティカルケアにおける中堅・リーダー看護師に対する指導力向上への取り組み公立豊岡病院 但馬救命救急センターICU山根 堂代【はじめに】現場で直接指導にあたる中堅・リーダー看護師には確実な指導力が求められる。次の人材を育成する為の指導力を養う事を目的に、クリニカルラダー2 以上のスタッフが学習会を企画・開催する取り組みを導入した。【目的】スタッフの学習会の企画・講師が指導力向上に与える影響と、指導力を養う取り組みとして有効であったかを明らかにする【研究方法】学習会の講師をした看護師24 名を対象に質問紙調査を実施した【倫理的配慮】質問紙の結果を研究に用いる事、回収をもって参加同意とする旨を説明した【結果】「目標通りに開催できたか」、できた26%、だいたいできた44%、あまりできなかった30%、できなかった0% 「興味を引くプレゼンテーションができたか」、できた22%、だいたいできた52%、あまりできなかった22%、できなかった4%「 自身の学びはあったか」、あった100%【考察】『実施方法の正当性』『学習会進行の工夫』『準備の充足』から、コーチングの自信に繋がった。一方『内容の不足』『準備の苦悩』から、失敗を認め、指導力向上に必要なプロセスとなった。『学習会進行の工夫』『受講者への配慮』からコーチングの「ペースと興味の維持」「変化に対するクライアントの反応への対処」に努めていた。また、失敗から準備の重要性やスキルを磨く事の必要性に気付いた。『自己知識の確認』と『自己指導力の評価』ができ、『指導に対する意識の変化』に繋がった。自分の弱みや不十分な部分を知る機会になったことはコーチングスキルを磨く上で重要な経験であり、指導への意識の変化が芽生え、指導力向上に繋がった。【結論】中堅・リーダー看護師が学習会の講師になることで、自己指導力を知る機会となり、指導に対する意識の変化に繋がった。成功や失敗を経験することで、コーチングスキルを磨く上での経験値となり、指導力を養う取り組みとなった。FP-065 粟粒結核によるARDSに対しPMX-DHPが有効であった一例福岡大学病院 救命救急センター鈴木 祥子、金山 博成、森本 紳一、大蔵 裕子、長島 亮太郎、西田 武司、石倉 宏恭【はじめに】近年EUPHAS trial をはじめとした大規模臨床試験において、PMX-DHPによる肺酸素化能の改善効果が報告されている。当施設も過去にPMX-DHP による肺酸素化能改善効果を報告した。今回、粟粒結核によるARDSに対して、PMX-DHP 施行により著しい肺酸素化能改善を認めた症例を経験したので報告する。【症例】75 歳、女性【現病歴】38.5 度の発熱、背部痛、全身倦怠感を主訴に前医を受診した。採血でT-Bil:6.8mg/dL、AST:259IU/L、ALT:262 IU/L、γ -GTP:849 IU/Lと高値を呈し、腹部CT検査で胆嚢腫大を認めたことから、急性胆嚢炎診断のもと入院加療が開始された。しかし、その後肺酸素化能の悪化を認めたため、精査加療目的に当センターへ転院となった。【入院後経過】入院時採血検査にて肝胆道系酵素の上昇は認めるものの、画像検査より急性胆嚢炎は否定した。また、PaO2/FiO2(P/F)ratioは124と低酸素血症状態であったため、人工呼吸管理、広域抗菌薬(TAZ/PIPC 及びAZM)投与及びmPSL:1.2mg/kg/day の投与を開始した。しかしその後もP/F ratio は140 前後で推移した。また、T-Bilも高値で推移した。入院時のKL-6が3034U/mlと高値であったことより、間質性肺炎を疑い肺酸素化能の改善を期待して第7病日よりPMX-DHPを2日間施行したところ、P/F ratio は158から244へと改善を認めた。入院時の喀痰抗酸菌染色にてGaffky1 号が認められ、さらに第9病日に施行した肝生検の病理組織にて類上皮細胞を認めたことから粟粒結核の確定診断に至った。以上の所見より、速やかに抗結核薬投与を開始し、専門病院へ転院した。【考察】本症例を経験し、結核菌はグラム陽性桿菌であるが、結核由来の難治性ARDS に対して、PMX-DHPは検討すべき治療法の一つである可能性が示唆された。FP-066 人工股関節置換術後に発症した呼吸困難に、TACO, 脂肪塞栓, Sepsisの鑑別を要したCOPD患者の一症例1)済生会横浜市東部病院 麻酔科、2)済生会横浜市東部病院 集中治療科藤田 治人1)、秋山 容平1)、冨田 真晴1)、秋山 苑生1)、星野 哲也2)、金尾 邦夫2)、大村 和也2)、木村 慎一2)、高橋 宏行2)、佐藤 智行1)【症例】88 歳女性。大腿骨頭転子部骨折術後偽関節に対して、抜釘、人工股関節置換術が施行された。術前からCOPDと診断されており、1秒量は500 ml程度であった。麻酔は脊椎麻酔、硬膜外麻酔にプロポフォール持続投与し、気管挿管を回避してフェイスマスクで管理した。手術時間1時間45分、出血量300 mlであった。術中に自己血2単位を輸血し、術中in-outは+ 800 mlであった。術後30分頃から血圧の低下と呼吸状態の悪化を認め、CXP上、肺水腫を認めた。心エコー上EF は50 %程度あり、下大静脈も虚脱していて、TACOなどの心原性イベントが発生したとは考えづらかった。輸液負荷を行いながら、リカバリールームでNPPVを装着してICUに入室した。入室時の収縮期血圧は65 mmHg でシバリングが見られた。意識レベルはE3V2M5で不穏状態であった。脂肪塞栓症症候群も鑑別に挙げられ、鶴田の基準の大基準2つ、中基準1つ、小基準3つを満たしていたが、臨床症状は認めなかった。ICU入室後も状態は改善を認めず、輸液負荷、ノルアドレナリンの持続投与を施行したが、代謝性アシドーシスが進行した。凝固異常もあり、敗血症の可能性も考え、メロペネム、バンコマイシンで治療を開始した。プロカルシトニンは97 ng/mlと異常高値であった。創部から出血が続き、連日輸血を必要とした。ICU入室2日目には徐々に呼吸循環動態の改善を認め、NPPVから離脱し、ノルアドレナリンを減量していった。しかし、血液培養は術後9病日で陰性であり、抗菌薬の投与を中止した。術当日の尿検体、血液検体に脂肪滴は見られなかった。ICU入室4 日目にリハビリを開始し、集中治療室を退室した。【考察】COPD患者の手術では、肺血管床が破壊されているため、過剰な水分負荷が肺水腫の原因となり、術後呼吸困難が起こりやすい。また全身性炎症疾患であるため、炎症性メディエータが亢進しやすく、敗血症との鑑別が困難になることもあると考えられ、注意が必要である。