ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-763-FP-052 カテコラミンシリンジ交換による循環動態の変動を最小限にするための取り組み1)筑波大学附属病院 看護部 小児ICU、2)筑波大学附属病院 看護部、3)筑波大学附属病院 看護部 手術室、4)筑波大学附属病院 麻酔科竹内 美穂1)、杉澤 栄2)、仁平 かおり1)、寺田 えり子3)、小林 可奈子4)、高橋 伸二4)【目的】クリテイカルケアを行うPICU では多量のカテコラミンのシリンジ交換を行う場面にしばしば遭遇するが、交換に伴う循環動態の変動を最小限にする画一された安全な方法が存在しない。特に閉鎖式輸液ラインシステムでは、シリンジ交換時の装脱着で薬液の逆流と押込が生じ循環動態の増悪を惹起するリスクが高まる。そこで当院では輸液ライン内の圧力変動を相殺することが可能な等圧コネクタを閉鎖式輸液ラインシステム内に挿入し、シリンジ交換に伴う薬液移動を最小限に抑える新たな取り組み行ってきたが、その成績や問題点を後方視的に検討した。【方法】2013年以降に先天性心疾患術後に術後72時間以上深鎮静管理のもと、血行動態の維持目的に3 μ g/kg/min 以上のカテコラミン持続投与を要した患児30 例を対象とし、等圧コネクタを使用した15 例と等圧コネクタを使用しなかった15例の2群間での患者背景及びカテコラミンシリンジ交換に伴う循環動態の変動を比較検討した。【結果】2群間で年齢、体重、性別、染色体異常の有無、RACHS-1カテゴリー、手術時間、麻酔時間の患者背景に有意差は認めなかった。しかしながら等圧コネクタ非使用群でのみシリンジ交換に伴う著明な血圧低下を生じ、カテコラミン投与量の増量やペースメーカーによる心拍数の増加を余儀なくされた症例があった。またシリンジ交換に伴う血圧の低下が交換前の血圧に回復するまでの時間がコネクタ非使用群で長くかかる症例が散見された。【結論】閉鎖式輸液ラインシステム内に等圧コネクタを挿入する方法は、術後急性期のカテコラミンシリンジ交換に伴う循環動態変動の抑制効果をもたらし得るシステムと考えられた。しかしながら比較対象数が少なく、今後更なる経験と検証を重ね、より少ない循環変動でカテコラミンシリンジ交換が可能なシステム構築を探求していくことが今後の課題である。FP-053 体外式膜型人工肺(ECMO)装着患児の腹臥位看護九州大学病院 小児救命救急センター牧野 沙織、甲斐 夏江、木村 雅代、宗岡 貴一、賀来 典之【背景】 心肺停止患者への体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた集中治療管理では、循環作動薬や鎮静・鎮痛剤が投与されており、循環変動を来たしやすい。さらに、多くのカテーテル類が挿入されており、それらの管理や出血のリスクから当院センターでは、積極的な肺理学療法を行えていなかった。【症例】 5 歳 男児 体重20kg インフルエンザ感染による劇症型心筋炎、肺出血、ARDSの診断にて、ECMO導入となった。導入当初は、積極的な肺理学療法が行えていなかった。更に、肺出血や肺のコンプライアンス低下のため、呼吸状態の改善が得られなかった。このため、呼吸状態の改善を目的として、医師、看護師、臨床工学技士が連携し、ECMO導入10日目から腹臥位による体位ドレナージを施行し、酸素化の改善を認めECMO導入20日目に離脱となった。【考察】 ECMO 挿入中に腹臥位を行う場合、血管損傷や出血による循環変動、カテーテルの屈曲や抜去など、さまざまな危険性が懸念される。しかし、多職種で協力し、十分なマンパワーのもと厳密なリスクマネージメントを行うことで腹臥位の実施は可能であった。また、小児であり成人と比べ体位変換し易いことも安全に行えた一因であると思われた。 腹臥位の効果はすでに周知されているが、本症例でも腹臥位を取り入れる事で、有効な排痰と換気量の増加、肺野の透過性の改善を認めており、その効果はあったと考えられる。【結論】 今回、ECMO 導入中の患者に腹臥位による体位ドレナージを積極的に行ったことで良好な結果が得られた。FP-054 肺移植のbridgeとしてECMO管理を行った患者における看護実践の経験日本医科大学付属病院中山 誠一、大野 綾子、足立 圭、亀ヶ谷 泰匡、細萱 順一、背戸 陽子、鈴木 健一、杉田 慎二、市場 晋吾、竹田 晋浩肺移植までのbridgeとしてのECMO管理は世界的には散見されるが、本邦では報告がない。今回、肺移植という不確定なgoalに向けて、患者と話し合いながら看護の方略を決定してきた貴重な経験を得たので報告する。【症例】50 歳代男性。急性呼吸不全にてV-V ECMO(ExtraCorporeal Membrane Oxygenation)を装着した状態で海外の医療施設より航空機にて搬送。呼吸器疾患は不可逆的と診断され、本人・家族に説明を行い、肺移植登録のインフォームド・コンセントが得られた。患者は肺機能のほぼ全てをECMOに依存しているが、スピーチカニュレによる気管切開管理にて会話や経口摂取は可能である。呼吸困難感に伴う不安の軽減を目的にモルヒネの持続投与を行っているが、意識レベルは清明でありニードの表出や意思決定能力は高い状態である。ECMOの送血カニュレが大腿静脈に留置されており、下肢の屈曲やリハビリテーションにおいて制限されている。安静時SpO2は90%前後で推移しているが、食事やリハビリの負荷時は70%台まで低下し呼吸困難を認めることもある。また、長期入院生活の中で精神的安定を目的にリエゾン精神科による介入を受けている。【看護実践】看護師は医師や臨床工学技士らと共に、移植までのbridge としてのECMO管理という初めての経験の中で特有の経験を蓄積した。特に移植に良好な状態で望めるように、「リハビリテーション」と「心理的苦悩の緩和」については重要な課題であった。前者では理学療法士の助言を受けながら、chair positionを使用しての足底を接地させて体重移動をする筋力負荷訓練や腓骨神経麻痺、リンパ還流不全に対するマッサージを行った。後者では、回路交換などの処置時の人間的尊厳の維持やストレス軽減や精神的安寧を図るため病棟外への散歩を展開した。【結語】肺移植までのECMO 管理において、長期的な運動機能の維持と精神的安寧に向けての全人的ケアが重要である。