ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-761-FP-046 非典型的な一過性の心筋収縮障害を呈した敗血症性ショックの一例東海大学 医学部 内科学系 総合内科門倉 彩奈、柳 秀高、佐野 正弥、桑野 公輔、真鍋 早季、石原 徹、小松 昌道、小澤 秀樹【症例】60歳男性。職業小児科医師【既往歴】繰り返す前立腺炎、高血圧【現病歴】数日前より体調不良あり、頻尿を自覚していた。入院当日朝より38度台の発熱を認めた。同日通勤途中に転倒した為当院へ救急搬送となった。【来院時現症】BT:40.5度, HR:130/min, BP:152/60mmHg, SpO2:92%(RA), CVA tenderness 陰性, 直腸診にて圧痛なし【検査所見】白血球:14,000, CRP:9.75,Cr:1.14, BUN:18, 尿中白血球3+, 亜硝酸-【CT】腎盂尿管の拡大なし、前立腺肥大と石灰化あり【経過】上記所見より前立腺炎疑いで入院となり、入院1日目よりCTRXで抗菌薬加療開始するも夕方よりシバリングと41度の発熱を認め、その後血圧が低下した。敗血症性ショックの診断でノルアドレナリン(NAD)の使用開始し、心臓超音波検査を施行したところEF:25%でびまん性の壁運動低下を認めた。NAD 増量、バゾプレッシン、ドブタミン使用により血行動態を維持し得た。十二誘導心電図でII、III、aVf、V4-6 のST 上昇を認めた事から緊急カテーテル検査を行った。カテーテル検査施行直前にST 変化は改善し、検査でも冠動脈病変は認められず左室造影でも異常は認められなかった。その後徐々に昇圧剤減量し心機能もEF:47%まで回復した。後日アセチルコリン負荷試験施行するも検査は陰性であった。感染症については尿培養にてAcinetobacter baumanniiが検出され、当初市中感染としてCTRX をエンピリックに開始したがカバーできていなかった為、前立腺への移行も考えCPFX に変更し全身状態安定した。治療期間は計6週間とした。【考察】市中感染症にも関わらず、患者が医療従事者であった為、耐性菌が関与したと考えられる前立腺炎の一例を経験した。治療経過中に高度のショックを呈し、敗血症に加えて心原性ショックを合併したと推測される。心筋梗塞やたこつぼ型心筋症の典型的な所見は認めず、非常に短期間で回復したケースであった。文献的考察を交えて報告する。FP-047 リネゾリドによる乳酸アシドーシスにより急速に死の転帰を辿った1 例独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 救急科上村 吉生、荒川 立郎、石澤 嶺、木村 隆治、太田 慧、妹尾 聡美、鈴木 亮、尾本 健一郎、菊野 隆明【緒言】近年国内外においてリネゾリド(LZD)に関連した乳酸アシドーシス症例の報告がみられる.LZD による代謝性アシドーシスの発生頻度は0.2%といわれているが,乳酸貯留の頻度は不明である.また発症した乳酸アシドーシスは中止するのみで改善する場合や血液透析を要した症例および死亡した症例など様々である.今回我々は,肝腎機能が正常な成人男性のMRSA 菌血症に対してLZDを使用し発症した乳酸アシドーシスにより死の転帰を辿った症例を経験したため報告する.【症例】77歳男性【主訴】呼吸困難【現病歴】入院前日から嘔気が出現し持続した.呼吸困難による体動困難となったため家人が救急要請し,当院に緊急搬送となった.【入院後経過】肺炎球菌性肺炎による急性呼吸不全に対して気管挿管,人工呼吸管理を実施し,主因として考えられた肺炎球菌性肺炎に対する抗菌薬投与により循環動態や血液学的炎症所見などは第12病日までに軽快したが,発熱は持続した.第26 病日血液培養からグラム陽性球菌が検出されたためLZD1200mg/dayを開始した.LZD 開始後8日目に循環不全を伴わない乳酸値の上昇を認め、投与開始10日目にさらに乳酸アシドーシスの増悪傾向を認めたため投与中止した.CHDFを導入したが第39病日には著しい代謝性アシドーシスを呈し第40 病日永眠された.【考察】高齢男性のMRSA 菌血症に対してLZD を投与後に生じた乳酸アシドーシスにより死亡の転帰を辿った一例である.LZD は長期使用により乳酸アシドーシスを生じることが報告されているが,生じた乳酸アシドーシスは中止により軽快するという報告が多い.本症例では肝腎機能が正常でありかつ12 日という極めて短期間で乳酸アシドーシスが生じ,また薬剤中止後24 時間経過しても急峻な乳酸値の増悪を認めた.病理解剖結果やミトコンドリアDNAの遺伝子多型についての文献的考察も含めて,本症例の経過を報告する.FP-048 緑膿菌のカルバペネム感受性率低下に対する当院感染制御チーム(ICT)による取り組み小樽市立病院 麻酔科大槻 郁人<はじめに>近年,新規抗菌薬の開発は激減し,現存する抗菌薬の適正使用が叫ばれる中,抗菌薬の不適切な使用により薬剤耐性菌の出現が問題となっている.特に緑膿菌は耐性を得やすいとされ,免疫能が低下している患者に感染すると致死的な転機を辿りうる.当院(旧小樽市立脳・循環器・こころの医療センター)における緑膿菌の薬剤感受性率の推移と感染制御チーム(ICT)による取り組みと経過について報告する.<対象と方法> 2010 年度上半期から2014 年度上半期における427 株の緑膿菌を対象に,半年毎の薬剤感受性率の推移を分析・検討した.<結果>2010年度上半期は緑膿菌のカルバペネム系感受性率は90% 以上であったが,2012年度上半期には50%程度まで低下したため特定抗菌薬の使用届出制を開始した.その結果カルバペネム系の使用量が減り半年後には感受性率が70%程度まで回復したが,その後半年で再度40%台まで落ち込み届出制の効果は一時的なものであった.カルバペネム系を使用する患者の制限,de-escalation の推奨,PK/PD理論に基づいた投与方法の推奨を薬剤師から医師へ個別提言を行うことにより2014年度上半期には80%まで回復した.<考察>特定抗菌薬の使用届出制を導入している施設は多いが,使用届出制による使用制限のみでは抗菌薬の適正使用に限界がある.抗菌薬の不適切使用と思われる症例に対し,薬剤師が個別に主治医へ提言することにより良好な結果を得た.薬剤耐性菌の出現を抑えるために,ICTとして今後も積極的な取り組みを継続していきたい.