ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-758-FP-037 当院で経験した破傷風症例の検討北里大学 医学部 救命救急医学山谷 立大、服部 潤、神應 知道、竹内 一郎、片岡 祐一、浅利 靖破傷風はワクチンなどの普及に伴い減少傾向にある疾患であるが, 本邦ではいまだ年間100例近い症例が報告されている。死亡率は15~40%と言われているが, 予防が重要であると同時に重症例に関しては適切な気道, 呼吸, 循環管理が必要となる。今回2010年4月~2015年8 月までに当院に入院した破傷風患者8 例(29~74 歳)についてその背景, 治療内容, 経過について検討を行った。比較的若年者の症例は刺創や挫傷を認めたが, 高齢者では特に体表に外傷等を認めない症例が多かった。これは高齢者では若年者に比較し抗破傷風毒素抗体の保有者が少なく, 明らかな外傷がなくとも微細な破傷風菌侵入により発症に至るためと考えられた。気道管理に関して3例は退院まで自然気道で管理, 2例で予防的気管挿管, 3例で緊急気管挿管を行った。挿管管理となった5例はいずれも長期挿管となり, 全例で気管切開が必要となった。また抜管を試みたものの抜管時の刺激によると思われる硬直が出現し再挿管となる症例もあった。当院で経験した8例は全例生存退院となったが, それぞれ異なる管理が行われており, 今回はそれらの妥当性について文献的考察を加え報告する。FP-038 特発性腸腰筋血腫を併発した破傷風の一例総合病院 国保旭中央病院 救急救命科林 栄里、高橋 功、糟谷 美有紀、伊藤 史生、大菅 健嗣、伊坂 晃、増渕 高照【症例】84歳女性【主訴】開口障害【現病歴】当院受診13日前に、転倒による顔面挫創で近医にて治療。3日前からの開口障害を主訴に救急外来を受診した。来院時、約1横指程度の開口障害があったが、その他バイタルサインを含め異常所見を認めなかった。顔面の挫創部位は痂皮化していた。MRI で左顎関節前方脱臼の診断を得て、非観血的整復術を施行した。3日後、開口障害が残存するため口腔外科に入院。全身麻酔下での整復を実施。開口障害は改善したが、約12 時間後より再出現。意識障害、呼吸状態の悪化も伴っていたため救急科に転科となった。救急医診察時、苦悶様で意識障害:GCS8(E2 V1 M5)、血圧上昇(200/100mmHg)、頻脈(180回/min)、低酸素血症(SpO2 60%)を認めストライダーを聴取した。気管挿管(経口的)を行い、ICU入室となった。翌日に後弓反張および咬筋と胸鎖乳突筋の拘縮が出現したため、破傷風と診断し、治療開始となった【ICU入室後の経過】十分な鎮静下に、PCG(400 万U、1 日6 回)、破傷風トキソイド、抗破傷風ヒト免疫グロブリンを投与し、マグネシウムを高値に維持するように管理した。心房細動に対してはヘパリンの持続投与を行った。第7 病日に急激なヘモグロビン値の低下があり、CTで右腸腰筋血腫を認めたため、緊急塞栓術を実施した。第10 病日に顔面の挫創部位より出血と浸出液が漏出し創部洗浄を行ったところ、木片が残存していた。創部の十分な洗浄とすべての異物を除去した。抗生剤をPIPC/TAZに変更し、第19病日に抗生剤投与終了、第23病日に一般病棟に転棟した。現在も入院加療中であるが、意識は清明でリハビリを行っている【まとめ】本邦では、破傷風は年間100例程度発症するが、治療経過中に特発性腸腰筋血腫を併発し緊急塞栓術を施行した稀な1 例を経験したので、文献的な考察を加えて報告する。FP-039 出産後にリステリア髄膜炎をきたしたが母児ともに救命しえた抗リン脂質抗体症候群合併SLE の一例1)横浜市立大学附属病院 救急部、2)横浜市立大学大学院医学研究科 病態制御内科学、3)横浜市立大学大学院医学研究科 病態免疫制御内科学、4)横浜市立大学大学院医学研究科 救急医学峯岸 慎太郎1,2)、杉山 裕美子3)、土田 奈緒美3)、神山 玲光3)、峯岸 薫3)、浜 真麻3)、吉見 吉見3)、桐野 洋平3)、上田 敦久3)、森村 尚登1,4)抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併した全身性エリテマトーデス(SLE)の妊娠では、母児ともに重篤な合併症をきたす可能性があり、厳重な管理が必要とされる。症例は24歳女性。20歳時にSLEおよびAPSと診断され、プレドニゾロン(PSL)、免疫抑制剤、抗凝固薬による治療を行っていた。妊娠成立後はヘパリンカルシウム皮下注射と少量のPSL・免疫抑制剤の内服で病状は安定していたが、妊娠後期にSLE が再燃。妊娠33週で妊娠高血圧症および胎児発育不全を認め緊急入院となった。降圧管理を行い、血小板低下に対してPSL60mg/dayに増量するも、尿蛋白が増加したため、妊娠34週に帝王切開にて出産した。APSに対して出産後に抗凝固療法を再開したところ、出血性ショックとなり集中治療を要した。その後、SLEに対する治療としてシクロフォスファミドパルス療法を施行し、全身状態は改善していたが、悪寒・戦慄を伴う発熱、頭痛、多関節痛が出現。髄液検査で髄膜炎の所見あり、MEPM+VCM+ACV を開始。髄液培養でListeria monocytogenes が検出されたことから、リステリア髄膜炎と診断し、ABPC12g/day に変更して治療が奏効した。児は出生後NICU入院となったが、新生児ループスなどの合併症は認めず、生後6週で退院となった。Listeria monocytogenesはグラム陽性細胞内寄生菌であり、敗血症や髄膜炎などの重症感染症を引き起こすことが知られている。食品媒介感染症であるが、急性胃腸炎症状を呈することは少なく、新生児、妊婦、高齢者および免疫不全患者では考慮すべき起炎菌の一つである。本症例は、厳重な妊娠・出産管理と集学的治療により母児ともに救命し得た。