ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-755-FP-028 当院救命救急センターに搬送された墜落外傷症例の検討東京医科大学 八王子医療センター 救命救急センター守屋 まり子、上野 恵子、弦切 純也、新井 隆男【背景】救命救急センターに搬送される墜落外傷は、高エネルギー外傷であり、多発外傷の合併が多く、生命予後を左右する。近年では超高齢化社会に伴い、高齢者の墜落外傷症例が数多く搬送される。【目的】当院救命救急センターに搬送された墜落外傷症例において、15~64 歳の非高齢者群と65 歳以上の高齢者群に分類し、調査した。【方法】2010年4 月1 日から2015 年3 月31 日までの6 年間に当院救命救急センターに搬送された15 歳以上の墜落外傷症例62例を対象とした。非高齢者群と高齢者群で、墜落原因、受傷部位、ISS(Injury Severity Score)、転帰などについて診療録をもとに後ろ向きに検討した。【結果】全症例62例中、男性55例、女性7例、平均年齢60.5歳(15~90歳)だった。非高齢者群と高齢者群は、それぞれ31例であった。墜落原因は、非高齢者群では工事現場等の勤務中の作業が最も多く(15例)、高齢者群では自宅での事故が最も多かった(20例)。受傷部位(AIS区分)においては、非高齢者群で四肢、高齢者群では頭頸部が最も多く半数を占めていた(54.8%)。平均ISSは非高齢者群で14.0(1-38)、高齢者群で14.7(1-50)だった。非高齢者群では全例が生存し、自宅退院もしくは転院となったが、高齢者群では3例が死亡退院となった。3例の死亡原因は、DIC、急性呼吸不全、急性硬膜外血腫であった。【考察】墜落外傷は高齢者の一般事故による受傷も多く、受傷部位を多部位に認める。中でも頭頸部外傷、四肢外傷の合併を念頭に、受傷機転、年齢等も念頭に置き、診断、診療にあたることが肝要と考える。FP-029 外傷性気胸により気管支の圧排を認めた一例武蔵野赤十字病院 救命救急センター本澤 大志、安達 朋宏、平山 優、東 秀律、安田 英人、三浪 陽介、原 俊輔、原田 尚重、勝見 敦、須崎 紳一郎【症例】70歳女性【現病歴】 自宅にて転倒し、右側胸部を打撲した。翌日から疼痛に加えて呼吸困難感が出現し、改善を認めないため救急搬送となった。来院時はバイタルサインに大きな異常を認めず、胸部CT で右第9 肋骨骨折と右の軽微な気胸と皮下気腫を認めたが、自宅にて経過観察となった。その2日後に再度呼吸苦を主訴に救急搬送となり、胸部レントゲンに3 度の右気胸と著明な皮下気腫と縦隔気腫を認め、胸腔ドレーン管理下に入院となった。入室直後から皮下気腫の持続的な拡大を認めたため、入院当日に2本目の胸腔ドレーンの留置を行った。Nasal High Flowにて呼吸サポートを続けたが、皮下気腫は上半身全体にまで拡大した。第3病日に施行した胸部CTでは気管支の圧拝所見を認め、第4病日に外傷性気胸に対して肺部分切除術を施行した。右の第9肋骨の骨片が胸腔内に突出し、これと一致した部位に拝挫傷1bを認め、同部位を切除した。手術翌日に施行した胸部CTでは気管支の圧排像は改善を認めた。術後、徐々に呼吸状態の改善を認め、皮下気腫は消退傾向となり、第8 病日に抜管、第10 病日にICU退室となった。【考察】 胸腔内圧の上昇により心臓の拡張不全をきたす症例は散見されるが、本症例では循環不全を認めず、皮下気腫ないし縦隔気腫による気管支の圧排を認めた症例であった。 皮下気腫の進行が著しい気胸に対しては手術適応が考慮されるが、その明確な基準はない。早期の手術適応が考慮された本症例を経験し、外傷性気胸に対する手術適応基準を検討していく必要があると考えた。FP-030 広範囲熱傷受傷2 日目に生じたToxic Shock SyndromeJCHO 中京病院米田 和弘、大須賀 章倫 Toxic shock syndrome はグラム陽性球菌(GPC)の外毒素によって生じる全身性炎症を主体とした疾患であり、熱傷患者にしばしば発生し、致死的となりうる。 症例は55 歳男性で、特記すべき既往歴はない。仕事中にエタノールに引火し広範囲熱傷(TBSA:46%、PBI:91.5) を受傷した。来院時バイタルは血圧170/100mmHg、脈拍130bpm、呼吸26 回/min、体温36.4 ℃、SpO2:100%(リザーバー10L)であり、熱傷は顔面、前胸部、両上下肢にわたっていた。気道熱傷は認めなかった。受傷後熱傷ショックに陥ったが、24時間後にはショックから離脱した。受傷後40時間が経過した頃から血圧80/40mmHg、脈拍150bpm、体温41℃台となり、創部の発赤、無尿、水様便を認めた。また創部のグラム染色でGPCが多数検出されたため、Toxic shock syndrome(TSS)と診断し、ノルアドレナリン、免疫グロブリン、リネゾリド・クリンダマイシンの投与を開始した。治療開始から18 時間ほどでショックを脱し、以後経過順調であり、独歩退院となった。 この患者は入院時の鼻腔MRSA 陰性であり、ショックに陥った際に採取した創培養からはMRSAが検出されている。すぐ隣の部屋にはMRSAを持った熱傷患者が入院しており、両者のMRSAは薬剤感受性が同じであったことから、同じ株であると考えられた。当院では日常的に1 日4~5 例の熱傷処置をしており、その際にはマスク、帽子、長袖エプロン、手袋を着用して洗浄の前後で手袋を交換することにしている。創処置の順番も新鮮熱傷を先にし、MRSAや多剤耐性菌を保有する患者の処置は後に回すように工夫している。各患者の処置終了時の手洗も徹底し、スタンダードプレコーションを遵守している。しかし本症例では、水平感染であると思われるMRSAからTSSに至った。来院時MRSAを保菌していない患者でも、特に周囲で毒素産生型MRSAが検出された場合などは、TSSが発症する危険性を常に考慮に入れておく必要がある。