ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-750-FP-013 亜鉛過剰投与に伴う銅欠乏性貧血が疑われた重症熱傷の1 例日本大学 医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野織田 美紀、山口 順子、平林 茉莉奈、澤田 奈実、小松 智英、桑名 司、小豆畑 丈夫、木下 浩作【背景と目的】亜鉛や銅は創傷治癒及びタンパク合成に重要である。熱傷患者で血清亜鉛は数日間低値を持続し,熱傷の程度と血清亜鉛低下には相関関係が認められるとされ、適切な補充が必要と考えられる。しかし、亜鉛は消化管からの吸収において銅吸収を妨げる為に、亜鉛の長期の過剰摂取は銅欠乏性貧血をもたらすことがある。今回、亜鉛過剰投与に伴う銅欠乏性貧血が疑われた重症熱傷の1 例を経験したため、ここに報告する。【症例】80代の男性。火災による気道熱傷と顔面熱傷を伴う重症熱傷であった。身長157cm、入室時体重は51.2kg。第2病日より経腸栄養を開始し、第6病日には1600kcal/日へ到達した。入室時血清亜鉛値は34μg/dl(基準値65-110μg/dl)と顕在性亜鉛欠乏が示唆された。亜鉛含有胃潰瘍治療剤(1 錠あたり亜鉛16.9mg 含有)を投与した結果、第27 病日に血清亜鉛値113 μ g/dlから第54病日に125μg/dlまで上昇する一方、血清銅の値は45μg/dlから21μg/dlまで低下した。ヘモグロビン値は入室時12.7g/dlから9.1g/dl まで低下しており銅欠乏性貧血が疑われた。このため亜鉛含有胃潰瘍治療剤を中止した。【考察】熱傷患者への亜鉛や銅の至適量のエビデンスはない。日本人栄養摂取基準2015 によれば70 歳以上の推定1 日必要量は8mg/日で、耐用上限量は40mg/dlである。現在市販されている経腸栄養剤は亜鉛欠乏を防ぐ栄養設計が多く、本症例に投与した栄養剤による亜鉛投与量は第3 病日で必要量を超えた。その後の栄養剤投与の増加と亜鉛含有胃潰瘍治療剤の併用で第18 病日には56.3mg/日と耐用上限量を超えていた。その結果、銅欠乏性貧血をもたらしたと推察している。創傷治癒までに長期の栄養管理を要する際には、病期に応じた亜鉛等の微量元素の必要量と至適投与量に注意を払う必要がある。FP-014 敗血症症例に対するペプタメンAFを用いた経腸栄養の有用性1)岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター、2)兵庫医科大学救急災害医学安田 立1)、白井 邦博2)、山路 文範1)、田中 卓1)、鈴木 浩大1)、池庄司 遥1)、中野 通代1)、吉田 省造1)、豊田 泉1)、小倉 真治1)【はじめに】敗血症では、エネルギー需要の増加と蛋白異化が亢進するため、侵襲に見合った栄養投与が必要である。今回、乳清ペプチドを主体とした高蛋白栄養剤ペプタメンAF の効果と安全性について検討した。【対象と方法】岐阜大学高度救命救急センターに入院して、人工呼吸器を要した重症敗血症/敗血症性ショック例で、ペプタメンAFを投与した(A群)7例と、通常蛋白量を含有した栄養剤(アノム;8例、エレンタール;と併用した3例)群(B群)11例を後方視的に検討した。両群とも目標カロリーは25kcal/kg/ 日で、目標蛋白量は1.0~1.2g 以上/kg/ 日とした。7 日目で目標カロリーの60~80% を、10 日目には100% に達成するよう栄養の増量を行った。【結果】A 群とB 群のAPACHE II スコア(22.7:18.2)とSOFA スコア(9.4:8.5)に差はなかった。血液浄化療法を施行したのは、A群:2例とB群:5例であった。目標のカロリー量と蛋白量に達成した日数は、A群でそれぞれ11.1日、9.6日、B群では12.8日、11.1日と差はなかった。7 日目と14日目の総蛋白、アルブミン、BUN、クレアチニン、CRPは両群間で差を認めなかった。下痢は、A群(28.6%)がB群(63.6%)に比して少なかった。Ventilator free daysはA群:9.5日、B群:11.5日、ICU 在室日数はA 群:23.7 日、B群:18.6 日、28 日生存率は両群とも100%であった。【考察】今回の検討では、ペプタメンAF は蛋白量を比較的早期に充足するが、栄養状態や予後の改善は示さなかった。今後、症例数を増やしてさらに検討する必要がある。FP-015 片側性反回神経麻痺を伴う、血清アルブミン1.0g/dL のるいそう患者の治療経験札幌東徳洲会病院 救急総合診療部籏本 恵介【はじめに】るいそう患者の救命は、栄養状態の改善を軸とした長期的な治療戦略が重要となる。血清アルブミン1.0g/dL のるいそう患者に対して、合併症に苦労したが無事社会復帰させることができたので、反省を含めて報告する。【症例】52歳男性。自宅でコンピューター関係の仕事をしていた。半年前より引きこもりがちになり、数ヶ月前から1日おかゆ1食程度の食事摂取であった。動けなくなっているところを帰宅した妻に発見され救急搬送された。来院時会話可能であったが、全身に褥瘡を認め、血清アルブミンは1.0g/dL と極度の栄養不良状態であった。【経過】HCUによる全身管理を行ったが、第13病日痰詰まりからCPA となるもCPR にて心拍再開し、意識も回復した。第18 病日膿胸となるも抗生剤投与にて回復した。嚥下リハビリが進まないことから耳鼻科医による評価を行い、第37病日反回神経麻痺が確認され、その1ヶ月後誤嚥性肺炎防止と栄養状態改善のため、経皮的胃瘻造設を行った。第102病日自宅退院とし、外来通院とした。退院2ヵ月後の定期通院時には経口摂取可能となっており、反回神経麻痺も回復していた。胃瘻閉鎖を行い通院終了とした。【考察】るいそう患者治療は、体力低下に伴う合併症との戦いであるが、栄養状態の改善を軸とした集学的治療により社会復帰させることができた。反回神経麻痺によると考えられる呼吸器合併症には苦労したが、胃瘻増設により全身状態を劇的に改善することができた。意識レベルが良いことから、経鼻胃管と経口摂取にこだわり治療を行ったが、早期に胃瘻造設を行うべきであったと考える。