ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-740-CP68-1 熱中症に対して血管内冷却カテーテルを用いて深部冷却を行った2 例の検討1)独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター 救急救命科、2)国立病院機構 災害医療センター 臨床研究部湯川 友貴1)、金村 剛宗1)、金子 真由子1)、井上 和茂1)、佐藤 昌太1)、吉岡 早戸1)、岡田 一郎1)、霧生 信明1)、加藤 宏1)、小井土 雄一2)【はじめに】熱中症による中枢神経系後遺症では、熱による直接の神経細胞障害によるものが指摘されている。熱中症診療ガイドライン2015では、高体温の時間が長くなると予後不良となるため、できるだけ早期に目標温度に到達することが望ましいとされており、これまでにも様々な冷却法が検討されてきたが、その有効性に関しては十分に検討されていない。今回、3 度熱中症に対して血管内冷却カテーテルを用いて深部冷却を行った2 症例を経験したので報告する。【方法】2015 年7月1 日~8月31日、当院にて3度熱中症と診断され、血管内冷却カテーテルを用いて深部冷却を行った2例について体温管理、神経学的予後(CPC)について検討した。【結果】各症例の年齢は39歳、36歳であり、来院時体温はいずれも42℃であった。GCSはそれぞれ4点、3点であった。また血管内カテーテルによる冷却開始から目標体温の38度台到達までの時間は170分、67分であった。体温の再上昇を認めなかった。多臓器不全に陥ることもなく経過し、退院時のCPCは両症例ともCPC1であった。【考察】血管内冷却カテーテルを用いた深部冷却により目標体温まで比較的速やかに到達することができ、良好な転帰を得た。本デバイスは熱中症における体温管理に有用と思われた。ポスターCP 68 中毒・体温異常・悪性症候群③ 2月14日(日) 9:30~10:30 CPポスター会場CP68-2 MRI拡散強調像で小脳に異常高信号域を認めた重症熱中症の一例1)福島県立医科大学 地域救急医療支援講座、2)福島県立医科大学 医学部 救急医療学講座小澤 昌子1)、矢野 徹宏1)、佐藤 ルブナ1)、反町 光太朗2)、鈴木 剛2)、根本 千秋2)、塚田 泰彦2)、伊関 憲1)、田勢 長一郎1,2)重症熱中症では、小脳症状を呈することが多い。今回我々は意識障害を呈した重症熱中症において、MRIで小脳皮質などに拡散強調画像で高信号を呈した1例を経験したので報告する。【症例】ADL fullで生活していた89歳、男性。8月の炎天下において、車中で意識障害を起こしているところを通行人に発見された。救急隊現着時、体温42度以上で橈骨動脈を触知できず、ドクターヘリで搬送された。【現症】鼓膜温40度以上。【来院時検査】頭部CTでは異常所見を認めなかった。【経過】熱中症3度として救急外来で身体冷却し、引き続き集中治療を行った。呼吸、循環の安定化にも関わらず意識障害が遷延した。第2病日に肝酵素値の上昇および凝固系異常を認め、第3病日に顕著となった。このためFFP投与などの抗DIC療法を行った。共同偏視が出現したため、施行した頭部MRI の拡散強調画像で両側小脳、左前頭葉、右後頭葉、両側淡蒼球から内包にかけて高信号を認め、熱中症による影響と考えられた。その後、病状の回復に伴い徐々に意識障害も改善したが、人工呼吸器の離脱が困難であり、気管切開術を施行した上で、その後の加療目的に他院へ転院となった。【考察】重症熱中症においてMRI拡散強調画像で小脳に高信号を呈することがしばしば報告されている。また淡蒼球などにも異常高信号を呈したとの報告もある。今回の症例では小脳だけではなく、脳内に広範に高信号域を認めた。これらは高体温による神経細胞の浮腫を捉えたものと考えられ、意識障害を伴う重症熱中症では頭部MRIの必要性があると考えられた。CP68-3 集中治療室において緊張性混迷および悪性症候群に対して電気けいれん療法を施行した一例慶応義塾大学 医学部 麻酔学教室上田 朝美、鈴木 武志、奥田 淳、鈴木 悠太、森崎 浩症例は43 歳、男性。統合失調症で通院中であったが、向精神病薬の自己中断によって、興奮、易刺激性が強くなり医療措置入院となった。入院後に向精神病薬を再開したところ、2日目より横紋筋融解によるクレアチニンキナーゼの上昇(28,470 U/L)、急性腎障害(Cr 7.57 mg/dl, BUN 48.9 mg/dl)を認め、悪性症候群と診断された。当院へ転院後、ハイケアユニットで急性腎障害に対して大量補液を行ったが、腎機能は改善せず、代謝性アシドーシス、輸液過多に伴う低酸素血症が進行したため、集中治療室へ入室した。直ちに血液濾過透析を開始したが、意識レベルの低下が進行し、意思疎通が困難となった。痰の喀出も困難となり、O26L/分のフェイスマスク投与でSpO2は91%と、低酸素血症が遷延した。悪性症候群の治療と共に原疾患の治療が必要と考え、精神科と協議のうえ、入室後2日目に集中治療室内で電気けいれん療法(ECT)を施行した。ECT後は意識レベルが回復し、妄想はあるものの興奮・易刺激性などの症状も改善した。また、喀痰排出も可能となり、酸素化も改善した。入室4日後には血液濾過透析から離脱し、入室7日後に精神科病棟へ転床となり精神科での加療を継続した。本症例では、喀痰排出困難による低酸素血症の改善には統合失調症の速やかなコントロールが必要と考え、非薬理学的治療であるECTを選択した。ECT の施行には鎮静・筋弛緩が必要であるうえに、治療効果を得るために複数回の施行が必要となることもあるため、誤嚥を生じる可能性は否定できない。しかし、治療に難渋する悪性症候群ではECT も考慮し、集学的な治療を行う必要がある。