ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-732-CP64-1 PCPS、IABPを実施し救命した術中呼吸循環不全を呈した感染性心内膜炎1)沖縄県立中部病院 麻酔科、2)沖縄県立中部病院 心臓血管外科、3)沖縄県立中部病院 集中治療科、4)沖縄県立中部病院 外科、5)沖縄県立八重山病院 麻酔科伊敷 聖子1)、安元 浩2)、天願 俊穂2)、仲嶺 洋介1)、中山 泉3)、毛利 英之3)、村上 隆啓4)、依光 たみ枝5)症例:74歳、男性。現病歴:来院2か月前より全身倦怠感、食思不振を自覚していた。今回新たに呼吸困難感も出現したため、救急車で当院へ搬送された。既往歴:高血圧、心房細動、一過性脳虚血発作、脂質異常症、前立腺肥大症。経過:救急室で心エコーを施行した。左室駆出率は30%で疣贅、弁破壊を伴う重症大動脈弁・僧帽弁・三尖弁閉鎖不全を認め、感染性心内膜炎と診断した。診断直後よりバンコマイシン1g、セフトリアキソン2g を開始した。手術は大動脈弁・僧帽弁置換術(生体弁)、三尖弁形成術を行なつた。弁周囲逆流はみられなかった。人工心肺時間は4 時間19 分であった。閉胸時より気管チューブより泡沫状淡黄色分泌物が多量に噴出し、酸素化が悪化した。また輸液負荷、カテコラミンを使用しても循環不全が進行してきたため、再開胸し上行大動脈送血、右大腿動脈脱血で経皮的心肺補助(PCPS)を開始した。大動脈バルーンパンピング(IABP)挿入を行い、開胸のままICUへ入室した。入室後は僧帽弁が開閉する程度の流量でPCPS を継続した。腎不全が進行したため持続的血液濾過透析(CHDF)を開始した。術後2日目より徐々に循環動態が改善し、術後3日目にPCPSから離脱した。起因菌が判明したため抗生剤は狭域化した。術後4 日目に閉胸・体網充填術施行、術後5 日目にIABP を離脱、術後7 日目に抜管した。術後11 日目にICU を退室し、68 日間の抗生剤治療後、術後108日目に退院した。考察:本症例での呼吸循環悪化の原因として敗血症および人工心肺によるARDS、敗血症性心筋障害、虚血再灌流障害などさまざまな原因が考えられる。敗血症患者に対しPCPSを導入することに菌血症の増悪などの可能性があるが、本症例では適切な抗生剤使用、CHDFの使用とショック時にIABPを併用し、心臓超音波で弁の状態や前負荷後負荷を評価しながらPCPS を使用することで救命できた。ポスターCP 64 心臓・循環・体液管理⑥ 2月14日(日) 9:30~10:30 CPポスター会場CP64-2 VV-ECMO離脱より抜管を先行した劇症型A群β溶連菌感染症の一例大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター大山 慶介、澤野 宏隆、尾北 賢治、大場 次郎、林 靖之、甲斐 達朗【はじめに】VV-ECMO(veno-venous extracorporeal membranous oxygenation)及び人工呼吸器装着患者では、まずVV-ECMOを離脱し次に人工呼吸器離脱・抜管を行う方法が一般的である。今回、先行して人工呼吸器離脱・抜管を行い、意識清明下にVVECMOを管理し、良好な経過を示した症例を経験したので報告する。【症例】26歳、男性。インフルエンザに罹患後、10 日間発熱が継続。呼吸困難が出現したために前医を受診。重症肺炎のために当センターに転院搬送となった。細菌性肺炎による敗血症性ショックであり、同日気管挿管・人工呼吸器管理を含めた集学的治療を開始した。FiO2:0.8、PEEP12 の設定で管理を行うも徐々に呼吸状態が悪化した。P/Fratioが93 まで低下したために、右大腿静脈脱血(23Fr)、右内頸静脈送血(21Fr)としてVV-ECMOを導入とした。呼吸器設定はLung rest設定とした。第3病日にはショック状態を離脱。第4病日に喀痰及び血液培養よりStreptococcus pyogenes を検出した。第5 病日に持続鎮静・鎮痛を中止、意識清明にまで改善した。また、呼吸器設定のweaningを行い、FiO2:0.3、PEEP5の設定としたが、胸部レントゲンや血液検査では増悪はなかった。VV-ECMO離脱が抜管より侵襲的であり、患者QOL の保持も可能と判断して第6病日に抜管を施行した。第7 病日より食事及びリハビリが可能となり呼吸状態の悪化を来たすことはなかった。ECMO設定をweaningし、第11病日にECMO離脱・シース抜去となった。第36病日に独歩退院となった。【まとめ】本症例では、重症呼吸不全に対してVV-ECMOを導入し、合併症を起こさずに管理できた。全身状態が安定した後にVV-ECMO より人工呼吸器離脱・抜管を優先した結果、意思疎通が良好な状態を保持し、食事・喀痰排出・リハビリを積極的に行うことができた。ただし、人工呼吸器離脱および抜管にはリスクもあるために症例ごとの検討と慎重な経過観察を要する。CP64-3 ECMO 脱血不良時の右房内構造物の存在とエコー評価の有用性1)前橋赤十字病院 集中治療科救急科、2)前橋赤十字病院 心臓血管外科藤塚 健次1)、中村 光伸1)、林 弘樹2)、宮崎 大1)、高橋 栄治1)、鈴木 裕之1)、小倉 崇以1)、原澤 朋史1)【背景】ECMOは重症呼吸不全・循環不全患者における心肺補助装置である。ECMO管理において、ECMO流量の維持には安定した脱血が極めて重要である。脱血不良の原因として、脱水・カテーテル位置異常などがある。今回脱血不良の原因として、右房内構造物が原因と考えられた症例を経験した。【症例】77歳男性。閉塞性動脈硬化症に対する手術目的に入院中、心不全・心室細動が出現したため、診断・治療目的に緊急冠動脈造影を施行した。冠動脈三枝病変の所見があり、緊急冠動脈バイパス術を施行した。術後、頻回の心室性不整脈出現による心機能低下が出現し、V-A ECMO 導入(右内頚静脈経由右房脱血・右大腿動脈送血)とした。しかし脱血不良がしばしば認められた。カニューレ位置異常は胸部X線検査上認めなかったため、脱水と判断し適時輸液負荷で対応した。その後心嚢内血腫による循環不全が出現したため、心嚢血腫除去術を施行した。その際、経食道心エコー検査を施行し脱血カニューレ位置を修正しようとしたところ、右房内・下大静脈付近に線維状構造物を認め、それが脱血管に吸い込まれ脱血不良を起こしていることが判明した。そのため、その構造物を吸い込まないようにカニューレを移動させたところ、脱血不良を起こすことなく、フロー維持をすることができた。その後状態は安定し、V-A ECMO離脱・抜管、ICU退室・リハビリ転院となった。【考察】右房内には、胎生期遺残物(Chiari networkやEustachian valve)が存在することがある。ECMOの脱血不良は、カテーテル位置異常や脱水以外にも、異常構造物が原因となる場合がある。X線検査では評価できない心房内構造物の評価やリアルタイムにカテーテル位置を修正する場合、経食道エコー検査は有用と考えられ、脱血不良の原因検索・対応時には検討すべき検査である。