ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
717/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている717ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-715-CP55-4 危険ドラッグ摂取により多臓器不全に至った一例1)横須賀共済病院、2)横浜市立大学 医学部 救急医学教室白澤 彩1,2)、山縣 英尋1)、鈴木 誠也1)、川村 祐介1)、藤井 裕人1)、古見 健一1)、内山 宗人1)【緒言】危険ドラッグの摂取による多臓器不全の一例を報告する。【症例】34 歳男性。[現病歴]自宅にて、奇声をあげ倒れているところを家人により発見され救急要請。自室に危険ドラッグ(Xpoiz Fire)の空瓶が発見された。[初療経過]呼吸不全兆候(努力様呼吸, 呼吸数 40/分, SaO2 91%)、ショック兆候(網状皮斑, 脈拍 151/分, 収縮期血圧 70 mmHg)、昏睡(GCS_E1V1M4, 瞳孔は両側7 mmで対光反射緩慢)、高体温(41.7C°)を認めた。気管挿管のうえ冷生食で初期急速輸液(3L)を施行しICU入室。APACHE II score 43(予測致死率 94%)。[ICU 経過]Distributive shock に対しノルアドレナリン持続投与を開始。入室12 時間後(輸液約7L投与後)にノルアドレナリン 0.18 mcg/kg/min 持続下に循環は安定。高体温に対し冷却した生理食塩水により胃洗浄し、入室6 時間後に38 度台まで解熱。高カリウム(7.2 mg/dl), アシドーシス(pH 7.2, BE -20)を認めCHDF 導入。その後、第3 病日にAST/ALT 16249/4261 IU/L、PT - INR 3.14 まで悪化、第4 病日には横紋筋融解症の合併(CK 346810 IU/L)とともに無尿となった。また第5病日には血小板19000 まで減少。第4病日のSOFA 16 を最悪値とし徐々に改善。第12病日に指示動作確認した。第14病日から尿量回復し第30 日にICU 退室、第32 病日に透析離脱。第39 病日に人工呼吸器離脱した。第56 病日の時点で、高次機能障害が残存するものの、意識状態はE4V4M6まで改善してリハビリテーションを継続中である。【考察】危険ドラッグ摂取による救急患者では重症例や死亡例も報告されている。今回摂取されたと考えられる薬物には α-PVP、4-OH DET、3,4-ジメチルメトカチノンが指定薬物として含有されていた。危険ドラッグ摂取により多臓器不全例に関する文献的考察とともに報告する。CP55-5 持続的血液濾過透析が奏功した炭酸リチウム中毒の1 例- Li 血中濃度が不明な状況でいかに対処するべきか-済生会福岡総合病院 救命救急センター柚木 良介、柳瀬 豪、前谷 和秀、中村 周道、金城 昌志、牧園 剛大、則尾 弘文【はじめに】炭酸リチウムは双極性障害に対して用いられるが, 治療域血中濃度(0.6~1.2 mEq/l)と中毒域血中濃度(1.5 mEq/l~)が近いため, 脱水などにより中毒を起こしやすい薬剤である. 中毒症状としては, 多彩な神経症状・消化器症状・致死的不整脈などが挙げられる. 今回, 利尿薬投与により発症したと考えられる炭酸チリウム中毒を経験した.【 症例】90歳, 女性. 双極性障害に対して2年前から炭酸リチウムを内服中. 腎機能障害の既往はなく, 血中リチウム濃度は治療域内で良好に推移していたとのこと. 4ヶ月前頃より下腿浮腫が出現し, 心不全の診断で利尿薬投与を開始. 2ヶ月前頃からは食事摂取量が低下し, 不穏状態となり, 他人への攻撃性が増悪してきたため, 前医から精査加療目的に当院へ搬送となった. 来院時, JCS I-3 の意識障害とsBP 94 mmHg, HR 30/min と比較的低血圧, 洞性徐脈あり. また, BUN 53.2mg/dl, Cr 3.06 mg/dl の腎機能障害を認めたため, 救命救急センター入院とした. 当院内で血中リチウム濃度を測定することはできないが, 病歴と所見から炭酸リチウム中毒を強く疑い, 持続的血液濾過透析(CHDF)を行うこととした. CHDF 20 時間施行後, 脈拍・血圧の上昇と尿量の増加を得た. 第5 病日に判明した来院時点での血中リチウム濃度は 2.47 mEq/lで, やはり中毒域濃度であった. その後の経過で尿細管障害によると思われる腎性尿崩症を認めたが,最終的に腎機能障害も改善し, 第 18 病日に転院となった. CHDF施行後の血中リチウム濃度は0.98 mEq/l であった. 【考察】炭酸リチウム中毒に対する血液浄化療法の適応に関しては, 様々な報告が見られる. 迅速な血中リチウム濃度が測定不可能な状態では,身体所見やバイタルサインを加味し, 炭酸リチウム中毒が強く疑われる場合, 積極的にCHDFを行なうべきであると考える. 当院での経験に, 文献的考察を交えて報告する.CP55-6 徐脈、低血圧を認めた炭酸リチウム中毒の1 例国立病院機構 京都医療センター藤野 光洋、小田 裕太、狩野 謙一、浜崎 幹久、岡田 信長、大木 伸吾、田中 博之、竹下 淳、別府 賢、志馬 伸朗【はじめに】炭酸リチウムは双極性障害など精神疾患の治療に頻用されるが、有効血清濃度と中毒域が近く、急性中毒症状の危険性が高い。今回、急性腎傷害が関連したと考えられる致死的な炭酸リチウム中毒症例を経験した。【症例】43歳男性、双極性障害のため精神科クリニックで炭酸リチウム1000mg/day を内服されていた。2015年8月某日外出先で全身脱力を認め、当院救急搬送となった。来院時BT=36.5℃, HR=45 回/ 分, BP=90/40mmHg, SpO2=98%, RR=16/min, GCS=E4V5M6と徐脈、低血圧を認めた。12誘導心電図では、洞性徐脈で、アトロピン、エフェドリン投与、約1500-2000mlの初期輸液を施行し、HR=65 回/ 分,BP=106/50mmHg まで回復した後ICU入室した。追加問診で、1ヶ月前からの注意散漫症状、3日前からの下痢症状が判明した。血液検査でBUN/Cre=56/4.32mg/dl と著明な腎傷害を認め、後に判明した血清炭酸リチウム濃度は2.39mEq/L と高値で、炭酸リチウム中毒と考えられた。来院3ヶ月前の血清炭酸リチウム濃度0.8mEq/L, 来院1ヶ月前のCre は1.02mg/dl であった。腎傷害の原因として、脱水症に伴う腎前性腎不全の他、リチウムによる腎性腎不全の可能性も推察された。輸液、モニタリングを継続し、血液浄化療法は施行せず、症状再発なく、day2 にICU 退室、day5 に腎機能正常化、day6 に退院となった。【結論】リチウム毒性は血清リチウム濃度と密接な関係があり、過量内服による急性中毒の他に、慢性服用患者での急性腎不全に伴う急性中毒の危険性がある。炭酸リチウム内服患者で、嘔気・下痢などの消化器症状や傾眠・振戦などの中枢神経症状を認めた場合、急性リチウム中毒を疑う必要がある。