ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-714-CP55-1 バルプロ酸Na およびオランザピン大量服薬による薬物中毒に対し血漿交換を施行した1 例国家公務員共済組合連合会 横浜栄共済病院 救急科金澤 将史、竹本 正明、宮崎 真奈美、中野 貴明、稲村 宏紀、浅賀 知也【症例】24 歳女性【主訴】意識障害【既往歴】パニック障害、適応障害、自殺企図【現病歴】18 時頃仕事から帰宅していた。19時頃、部屋で意識朦朧としているのを家族に発見され、その際室内に大量の空の薬包(オランザピン 300 mg、バルプロ酸Na 8000mg、ニトラゼパム 240 mg、ブロチゾラム 6 mg 相当)もみられ、当院に救急搬送された。【現症】意識レベルGlasgow ComaScale(以下GCS)E3V4M6、麻痺(-)、血圧 108/73 mmHg、心拍数 98/min、体温 35.9 ℃、呼吸数 19/min、SpO2 96 %(roomair)【検査所見】バルプロ酸Na 18.1 μg/mL、NH3 47 μg/dL【経過】救急外来にて胃洗浄、活性炭とクエン酸マグネシウムの投与、炭酸水素ナトリウム点滴静注を行った。第2病日、GCS E1V1M5に低下、呼吸状態悪化し自発呼吸減弱したため挿管、人工呼吸管理とした。バルプロ酸Na の血中濃度は150 μg/mL 以上と上昇を認め、オランザピン大量服薬の影響も考えられたため同日血漿交換療法を施行した。第3 病日にはバルプロ酸Na 濃度は133.5 μg/mL に低下、意識レベルも改善傾向となり、自発呼吸もみられ人工呼吸ウィーニングした。第4病日、抜管し、バルプロ酸Na濃度は68.9 μg/mLとさらに低下した。その後の経過は良好であった。尚、血漿交換前後でのオランザピン濃度は326→270 ng/mL であった。【考察】多剤大量服薬による急性薬物中毒はそれぞれの薬剤に対する対処が必要であり治療に難渋する。今回我々は、バルプロ酸Na およびオランザピン大量服薬による薬物中毒に対し血漿交換による治療を選択し回復に至った症例を経験したので報告する。ポスターCP 55 中毒・体温異常・悪性症候群② 2月13日(土) 15:00~16:00 CPポスター会場CP55-2 急性カフェイン中毒に透析療法が著効した一例1)獨協医科大学 救命救急センター、2)獨協医科大学 心臓・血管内科寶住 肇1)、富田 静香1)、鍛 良之1)、正和 泰斗2)、越路 暢生2)、魚住 翠子1)、神津 成紀1)、和氣 晃司1)、松島 久雄1)、小野 一之1) カフェインは眠気予防薬として広く認知されており、近年は濃度の高い製剤を海外より簡易に通信販売で入手できる。カフェインの過量服薬(15.4g)に対し、透析による治療が奏功した一例を報告する。 患者は19 歳男性、内服30 分後に当院搬送となり、嘔吐、発汗、頻脈、頻呼吸、振戦、不穏を認め、血液ガス分析で著明な低K血症と高乳酸血症を認めた。入院後に多元性VT出現し、K 補正、βブロッカー、硫酸Mg 投与でも症状改善なく緊急透析施行となる。その後劇的な症状の改善が得られ全身状態安定しているため翌日退院となった。 カフェイン血中濃度においては透析施行前後で著明な低下が確認できた。カフェインは半減期が短く、蛋白結合率が低いため原因薬剤の除去に血液浄化療法が有効であるとされている。不整脈や末梢循環不全を伴う重症カフェイン中毒の症例においては,早期からの血液透析導入により致死的イベントを回避できる可能性がある。CP55-3 血漿交換を行い回復し得た危険ドラッグ使用後の心停止の一例国立病院機構 熊本医療センター 救命・集中治療科江良 正、山下 幾太郎、狩野 亘平、山田 周、櫻井 聖大、北田 真己、橋本 聡、原田 正公、瀧 賢一郎、高橋 毅【導入】近年話題となっている危険ドラッグ(脱法ハーブ)の毒性についての具体的なデータは乏しいが、ドラッグ使用後に心停止や死亡に至った報告も散見される。今回我々は、危険ドラッグ使用後に心肺停止を反復し体外循環を導入した若年男性において血漿交換を行い良好な回復を得たため、これを報告する。【症例】患者は我が国で就労中の20歳のベトナム国籍男性。特記すべき既往症や定期内服薬は無い。同じく外国人就労者と複数人で飲酒しドラッグを吸入後、嘔吐と意識障害を生じ当院へ救急搬送された。なお他1 名も意識障害を生じ他院へ救急搬送された。【経過】搬入時JCS300、ショック状態で自発呼吸微弱であった。救急処置中に心肺停止となり、CPR を施行すると一時的に循環再開するが、10分足らずでPEAに陥る状態を反復した。初回の心肺停止から約92分後にPCPSを導入、その約70分後にIABPを駆動開始しICUに入院とした。心収縮はびまん性に低下しエコー上EF26%であった。尿トライエージは陰性であった。入院後もIABP駆動およびカテコラミン大量投与下に収縮期血圧 70mmHg 台の状態で、エコー上更なる心収縮の低下を認めた。摂取薬物の心毒性を疑い積極的な体外除去の必要があると判断したが、摂取薬物とその分布や蛋白結合率等は全く不明であり血漿交換を選択した。血漿交換後より血圧の上昇と心収縮の改善を得られ、翌日の心機能はEF 44% まで改善した。入院3日目まで連日で血漿交換を行い、循環動態は改善し入院3日目にPCPSを離脱、5 日目にIABP を抜去できた。その後の経過も良好で、心肺停止から循環安定化まで長時間を要したにも関わらず、最終的に日常動作に問題ないレベルまで回復した。【結語】危険ドラッグ摂取後に心肺停止を反復し強い心毒性の遷延が推測された一例であったが、血漿交換により良好な回復を得られた。詳細不明のドラッグ摂取による重症中毒においては血漿交換も考慮すべきと考えられた。