ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-709-CP52-4 電撃症から心肺停止に至ったが、適切な救命の連鎖により良好な経過をたどった1 例名古屋医療センター安藤 諭、森田 恭成、近藤 貴士郎、村田 哲哉、鈴木 秀一特記すべき既往のない20 歳男性。電柱上で変圧器工事中に感電(推定電圧100V)し、心肺停止状態となった。3分後にバイスタンダーCPR開始。7分後に先着した消防隊により心肺蘇生、AEDで計3回除細動された。12 分後の救急隊到着時心静止、15 分後にVf になり除細動を施行。20分後救急車内で自己心拍再開した。25 分後に当院到着。到着時のバイタルサインは、血圧107/49mmHg、心拍数98 回/ 分、呼吸数28 回/ 分で死戦期様呼吸、SpO2 97%(酸素10L/ 分)、意識JCS300であった。皮膚には明らかな熱傷、損傷を認めなかった。83 分後にICU入室した。徐々に意識レベルは改善傾向にはあったが、昏睡状態が持続していたため、速やかに低体温療法を導入した。低体温療法は冷却生食の急速投与・非侵襲的体表冷却(アークティックサン)で行った。目標体温到達までの時間は170分であった。低体温を24時間維持し、徐々に復温した。鎮痛薬・鎮静薬・筋弛緩薬を減量したところ、意識障害は徐々に改善した。経過中、横紋筋融解症、人工呼吸器関連肺炎、黄色ブドウ球菌菌血症を合併した。輸液、抗生剤治療等により治癒した。コンパートメント症候群は発症せず、両手掌の皮膚隔離以外、明らかな軟部組織損傷を認めなかった。徐々に意識レベルは清明となった。頭部MRI・脳波上、明らかな異常所見を認めなかった。高次機能評価を行い、軽度の低下を認めた。第20病日に自宅退院、外来でリハビリを継続する方針となった。電撃症は体内に高電流が流れることによって生じる損傷である。 一般的に電撃症からの心肺停止では、傷病者が若く、心肺疾患などの既往がないことが多いため、積極的な蘇生の適応があり、他の原因と比べて、予後は良好と報告されている。感電からの心肺停止例で、救命の連鎖がうまくつながり、良好な経過をたどった例を経験したので、報告する。CP52-5 低体温療法および早期PCI が奏功した重症3 枝病変を伴うCPA症例洛和会 丸太町病院南 丈也、富士榮 博昭、金森 徹三、小山田 尚史、浜中 一郎、上田 欽造症例は56才男性。2000年頃から高血圧を指摘されるが未治療で、同時期から労作時の胸痛を自覚していた。2013 年11月14日,バス停で突然前倒するところを市民が目撃し、AEDを用いたBystanderCPRが行われた。初期波形はVFで合計2回のDCショックにより心拍再開、目撃から心拍再開までの時間は4 分52秒だった。心停止後症候群管理チームによる管理下、救急外来から迅速に低体温療法を開始するとともに、重症3 枝を伴うST 上昇型心筋梗塞に対し、IABP サポートでPCIを実施、早期冠動脈血行再建に成功した。合併症に対する集中治療を行った結果、完全社会復帰に成功し、現在も無病生存している。当院は2012年10月から複数の診療科、職種による心停止後症候群管理チームを編成し心停止後症候群治療に取り組んでおり、チーム発足後現在までに10例の低体温療法を実施した。心血管インターベンション治療を専門に行う当科が中心となり、積極的かつ迅速に早期冠動脈血行再建および体外式自動体温管理システムを用いた低体温療法を実施しており、チーム発足前後でCerebral performance category(CPC)は4.85±0.14(n=7)から2.70±0.56(n=10)に、modified Rankin Scale(mRS)は5.85±0.14(n=7)から3.60±0.72(n=10)に改善し脳神経予後の改善を得ている。10例中冠動脈血行再建と低体温療法を行った3例については2例が完全社会復帰している。当院における心停止後症候群管理チームのシステム構築やBIS(bispectral index)を用いた脳神経予後指標による低体温療法実施基準決定など独自の取り組みも交えて報告する。CP52-6 冠攣縮を原因とする院外心停止をきたした3 症例についての検討筑波大学 医学医療系 救急・集中治療部秋山 大樹、河野 了、小山 泰明、榎本 有希、萩谷 圭一、下條 信威、山崎 裕一郎、水谷 太郎背景:明らかな器質的心疾患や器質的冠動脈疾患を持たない院外心停止症例の中には、一定の割合で冠攣縮による重症不整脈および心停止を来した症例が含まれることはこれまでにも報告されている。症例:我々は、冠攣縮によって引き起こされた重症不整脈が原因と考えられる院外心停止を呈したが、いずれも良好な転機をたどった3症例を経験した。患者はそれぞれ、76 歳男性(症例1)、55歳女性(症例2)、66歳男性(症例3)で、いずれの症例も今回の入院まで冠攣縮性狭心症を診断されていなかった。症例1・症例2については冠攣縮を疑う前駆症状があり、急性期を過ぎた時点で行った冠攣縮誘発試験で冠攣縮性狭心症を診断された。症例3は前駆する胸部症状なく難治性心室細動による院外心停止を発症し、入院中にニトログリセリン投与で改善する一過性のST上昇を呈したが、その後に行われた冠動脈造影で器質的な狭窄病変を指摘されず、異形狭心症と診断された。症例2については、当院収容前に胸痛を伴う失神を繰り返し、また救急車内で心室頻拍が記録されたが、蘇生処置を要する心停止には至らなかった。症例1・症例3 は初期リズム心室細動の院外心停止となり、自己心拍再開後に低体温療法を行われた。3症例とも神経学的後遺症なく回復し、植込み型除細動器を導入され軽快退院した。以降は十分な冠拡張薬による薬物治療を継続され、明らかな狭心症発作なく良好な経過をたどっている。考察:我々が経験した3症例においては、入院後大きな有害事象なく経過したが、低体温療法中に冠攣縮の増悪をきたしたという報告も散見される。このため器質的心疾患の観察されない院外心停止症例においては、冠攣縮合併の可能性を考慮した病歴聴取や蘇生後の集中治療管理にあたる必要があるものと考えられ、考察を加えて報告する。