ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-706-CP51-1 一般集中治療室における新規発症心房細動の頻度と予後:前向き観察研究1)倉敷中央病院 総合診療科、2)倉敷中央病院 救急科栗山 明1)、中西 美鈴2)、貝原 敏江2)、福岡 敏雄1)【目的】重症患者における心房細動(Af)の発生率は5-15%で、Af非発症患者と比べて死亡率増加と入院長期化に関連することが報告されている。しかし、この関連は術後や敗血症患者に限られた報告が多く、一般集中治療室(ICU)における報告は少ない。当院救急ICU におけるAf の新規発症の頻度と予後を明らかにする。【方法】2014 年7 月から2015年6 月までに当院救急ICU に入院した患者を対象にした。18 歳未満の患者および基礎にAfがある患者は除外した。救急ICUに入室した全患者はモニターを装着され、Afの新規発症の有無を計測され主アウトカムとした。入院中死亡、ICU在室期間と入院期間を副アウトカムとした。【結果】462人の患者が対象となった。APACHE II 平均値は17.4、平均年齢は71歳であった。病態の内訳は緊急内科疾患、緊急術後、蘇生後および外傷であった。13 名(2.8%)にAf が新規に発症した。Af を発症しなかった患者に比べて、Af を新規発症した患者のICU在室期間は有意に長く(中央値 8日vs2日、p< 0.01)、入院期間も長くなる傾向が確認された(中央値 29日vs15 日、p=0.05)。死亡率には有意な差が見られなかった(7.4% vs 7.7%、p=0.91)。【結論】当院救急ICU におけるAfの新規発症は以前の報告よりも低かった。以前の報告と同様に、Afの新規発症はICU在室期間と入院期間の長期化に関連することが分かった。死亡率に差がなかったことは新規知見である。ポスターCP 51 心臓・循環・体液管理⑤ 2月13日(土) 15:00~16:00 CPポスター会場CP51-2 重症心室頻拍、電解質異常、ARDSにて集中治療を要し、褐色細胞腫を合併した神経線維腫症と診断できた一例日立総合病院 救急集中治療科窪田 雅之、大道寺 洋顕、高谷 信宏、大島 和馬、徳永 蔵人、中村 謙介【症例】生来健康な52歳男性。一週間前より微熱と倦怠感が出現、全身状態悪化し肺炎として近医に入院したが、心室頻拍VTをきたし当院に救急搬送された。[動脈血ガス(10Lマスク)]pH7.672,PO2 141mmHg,PCO2 23.5mmHg,HCO3- 27.7mmol/l,AG 1.1mmol/l,Lac 3.7mmol/l,P/F ratio(7病日)249(PEEP 5cmH2O)[ 血算]WBC17800/ μ l,Hb7.7g/dl,plt4.9 万/ μ l,[ 生化]BUN21.7mg/dl,Cre0.6mg/dl,Na124mmol/l,K2.2mmol/l,Cl84mmol/l,Ca6.5mg/dl,Mg1.0mg/dl(14 病日),CRP17.89mg/dlアルコール多飲歴があることから、アルコールによる低カリウム血症、低マグネシウム血症など電解質異常に伴う心室頻拍をはじめに考え、挿管の上ICU入室となった。積極的な電解質補正、アミオダロンなどの抗不整脈薬投与を行うもVT を繰り返し治療に難渋したが、CT にて27mm 大の右副腎腫瘍を認め、体幹にカフェオレ斑と神経線維腫を認めたことから、褐色細胞腫を伴う神経線維腫症NFI 型(これまでに指摘されたことはなかった)と診断し、心室頻拍に対しβブロッカーを積極的に使用し循環管理を行うことができた。徐々に意識と呼吸も改善を認め、15病日に人工呼吸離脱、全身状態の改善を待って54病日に副腎腫瘍摘出術を施行、病理診断は褐色細胞腫であった。全電解質の尿中排出増加は持続していたが褐色細胞腫摘出により軽快した。リハビリを行い歩行も可能となり、80病日に転院となった。【考察】重症のVT、ARDSによりICUに入室し、著明な電解質異常から治療に難渋した褐色細胞腫、NFの1症例を経験した。入院時にはNF を考えることができなかったが、ICU入室後の全身観察時に典型的なカフェオレ斑や神経線維腫からNF、またNF に比較的合併が多いとされる褐色細胞腫の診断・治療に至ることができた。集中治療における皮膚科的全身診察の重要性を再認識し、NF の病態や本症例のような重篤な電解質異常やARDSをとる褐色細胞腫について、文献的考察を加えて報告する。CP51-3 経皮的心肺補助とランジオロールを用いた難治性心室性不整脈に対する治療戦略筑波大学 医学医療系 救急・集中治療部河野 了、秋山 大樹、渡部 浩明、下條 信威、小山 泰明、榎本 有希、萩谷 圭一、山崎 裕一朗、宮 顕、水谷 太郎66歳の女性。肥大型心筋症,心房細動,うっ血性心不全に対してアミオダロン400mg/日,ビソプロロール5mg/日を投与中であった。経過中に発見された頚部腫瘤の精査の結果、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫と判明し血液内科に入院。心エコーでは心室中隔25mm, 左室後壁24mmであり著しい心肥大と中等量の心膜液貯留、およびこれらに起因する左室拘束性障害が認められたが、左室駆出率は89%であったため化学療法を行うこととした。第2 病日にリツキシマブ,ビンクリスチン,プレドニゾロンによるR-VP療法、第21病日にはベンダムスチン,リツキシマブによるR-Benda療法を施行した。第4病日に発作性心房細動が認められたが自然に復帰していた。第32病日午前7時43分、朝食を摂取中に心肺停止となり心肺蘇生を開始した。初期波形は心室頻拍であり、二相性除細動200J×18回を施行。アドレナリン1mg × 11 回,アミオダロン450mgを投与したが心室頻拍と心室細動が持続するため、ICU に移動しPCPSを導入した。心肺蘇生開始後58分で心肺補助を確立した後に行った二相性除細動200Jにより心室頻拍から洞調律に復帰した。その後、ランジオロール6μg/kg/min を開始することで心室性不整脈、心房細動のいずれも再発を認めず、翌日にはPCPSから離脱することできた。経過中、ランジオロールからアミオダロン持続静注に変更後に心房細動が出現した。肺うっ血,出血の治療に難渋したものの、ICU入室5日目にはNPPVに移行することに成功した。近年、PCPS導入が比較的容易になり、難治性不整脈症例に対しても導入されることが多くなってきている。PCPS 施行下の抗不整脈治療についてはIII群薬が有効とする報告が散見されるが、β遮断薬に言及したものはない。本症例の経験からランジオロールによる交感神経抑制もPCPS 施行下の抗不整脈に対する新たな治療戦略のひとつとして選択できる可能性があると考えられた。