ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-704-CP50-1 急性心筋梗塞を発症しECMO下で血栓溶解療法を行った川崎病乳児例東京都立小児総合医療センター 救急・集中治療部長井 勇樹、中山 祐子、居石 崇志、渡邉 伊知郎、本村 誠、新津 健裕、齊藤 修、清水 直樹【背景】川崎病冠動脈瘤合併症例において、血栓閉塞性急性心筋梗塞を合併した場合、早期の再灌流療法が急性期治療として重要となる。小児ではデバイスの問題などもあり、現状では血栓溶解療法の臨床的意義は高い。ECPRに引き続き、血栓溶解療法を行った川崎病乳児例を経験したので報告する。【症例】症例は8 か月の男児。前医で川崎病と診断され、第4 病日にIVIG 2g/kg を施行。治療への反応不良で、第6病日と第16病日にIVIG追加、第9病日より3日間メチルプレドニゾロンパルス療法を施行し、ようやく解熱した。第13病日の心臓超音波検査では冠動脈の拡大傾向を認めるものの、明らかな冠動脈瘤の形成を認めずに経過した。第20病日、啼泣後に心電図でST上昇、心臓超音波検査で心室壁運動低下を認め、急性心筋梗塞の疑いで当院へ搬送となった。【経過】搬送中に心肺停止に至り、心肺蘇生を行いながら搬送。到着後直ちにV-A ECMOを導入し、低体温療法も開始した。ECMO下で冠動脈造影を施行したところ、LAD、LCX、RCAにそれぞれ最大6.7mm、3.8mm、5.3mmの冠動脈瘤を数珠状に認め、血栓性閉塞を来していた。rt-PAを用いて冠動脈内血栓溶解療法を施行したところ再灌流が得られ、ST 変化の改善が見られた。しかし、カニューレ挿入部などからの出血が持続し、搬送翌日に瞳孔散大、対光反射消失し、頭部CT で広範な頭蓋内出血を認め、第22病日に死亡退院となった。【考察】早期のECMO導入、血栓溶解療法により、冠動脈再灌流は得られたものの、重大な出血性合併症のため失った。血栓溶解療法に伴う出血性合併症の予測はしていたものの、ECMO 下での抗凝固管理、体温管理などに課題を残した。【結語】ECMO など抗凝固療法中の症例で血栓溶解療法を選択せざるを得ない現状において、重大な出血性合併症のリスクを少しでも回避するために、灌流圧を低めに設定し、抗凝固療法を緩めるなどの工夫の余地はあると考えられた。ポスターCP 50 小児・新生児② 2月13日(土) 15:00~16:00 CPポスター会場CP50-2 ”Awake VV ECMO”の一小児例1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部、2)東京都立小児総合医療センター臨床工学部荻原 重俊1)、齊藤 修1)、居石 崇志1)、渡邉 伊知郎1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、新津 健裕1)、清水 直樹1)、吉田 拓司2)【緒言】重症呼吸不全に対するVV ECMOは唯一の救命手段である。成人においては技術革新や集約化によるECMO チームの成熟によって、awake ECMOによる管理が可能となってきたが、小児での報告は稀である。【症例】5歳男児(体重9kg)、ヒトメタニューモウイルスによる肺炎にて前医で加療中であったが、第4病日に呼吸状態の悪化により気管挿管、人工呼吸器管理となった。著しい酸素化不良、ARDSを認め同日、東京都立小児総合医療センター集中治療室へ入室となった。腹臥位療法、iNO、HFOV施行するも酸素化の改善に乏しく、第7病日にVV ECMO導入したが、肺高血圧・心機能低下のため第17病日にVA ECMOとした。また、第29病日には再度VV ECMOへ変更したが、広範な背側無気肺等により治療に難渋したため、第33病日よりECMO下腹臥位療法、第44病日にはVVDL(右内頸静脈、15Fr)としてawake ECMO管理とし、肺理学療法及び四肢のリハビリテーションを開始した。また覚醒度の上昇に伴った自発呼吸管理は、咳嗽反射の促進、喀痰の排出につながり、第53 病日にECMO 離脱に成功した(総ECMO期間・計47 日間)。【考察】成人に比して、小児ECMO管理は、体位変換や高い覚醒度により様々な致死的な合併症を生じる可能性があるが、トータルケアの成熟により、腹臥位療法や理学療法を促すawake ECMOを安全に施行すること可能であると考えられた。【結語】小児Awake ECMO には、豊富な経験に裏付けられたmultidisciplinary なECMOチームの構築が不可欠で、今後さらなるシミュレーションやチーム内教育/ 啓発を通じて、チームの成熟度を上げ、小児ECMO 管理の質的向上と安全の担保を図る予定である。CP50-3 小児におけるECMO施行中の腹臥位療法の検討大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科京極 都、橘 一也、清水 義之、籏智 武志、小山 英彦、文 一恵、井坂 華奈子、竹内 宗之はじめに: 小児では安全性の観点から体外式膜型人工肺(ECMO)中は浅麻酔により自己排痰を促すことは難しく、当院では呼吸不全に対してECMO管理となった小児に対し肺理学療法のため積極的な腹臥位療法を行っている。目的: 小児におけるECMO施行中の腹臥位療法の安全性について調査した。方法:2014 年1月から2015 年7 月までの間に、当院集中治療室で呼吸不全に対しECMO管理となった症例を対象として後方視的に調査した。評価項目は、腹臥位施行による合併症の有無と前後でのECMO 血液流量、脈拍、血圧、鎮静スコア、鎮静薬、カテコラミン量の変化、翌日の呼吸器系コンプライアンスの変化とした。結果: 期間中に呼吸不全に対しECMO 管理を行った症例は5 例で、年齢0(0-114)日(中央値(25%-75%))、体重3.1(2.9-3.8)kg、急性呼吸窮迫症候群3例、先天性横隔膜ヘルニア2例であった。全例VA-ECMO(右内頸静脈-右総頸動脈)で、全例腹臥位への体位変換を行っていた。1例で初回腹臥位時にECMO 血液流量の低下があり、仰臥位にもどしそれ以降腹臥位は行わなかった。他4例では初回腹臥位施行時ECMO 血液流量の低下はなく(105(89-143)→ 111(78-141)ml/kg/min)、送脱血管や挿管チューブ、動静脈ラインの抜浅や抜去なく体位変換が行えた。腹臥位は1 回あたり8.6(4.7-16.8)時間行い、総施行時間は62(18-128)時間であった。血圧や脈拍に変化はなく、腹臥位中に持続鎮静薬やカテコラミンの増量は必要なかった。鎮静スコアの変動もなかった。1 回換気量を測定していた2例(他はHFO管理)でコンプライアンスが翌日にそれぞれ0.26 から0.28、0.52から0.66ml/cmH2O/kgと改善した。ECMO 施行期間は11(9-16)日で全例ECMO からの離脱が可能であった。人工呼吸期間は37(23-72)日、ICU 滞在日数は48(31-62)日で、1 例死亡、4例は生存退院した。結語:ECMO施行中でも腹臥位への体位変換は可能であり、肺理学療法を進めるうえで腹臥位療法も一つの手段となりえる。