ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-694-CP45-1 関節リウマチ治療中の緑膿菌感染・敗血症性ショックににニューモシスチス肺炎を合併した一例1)国立病院機構 横浜医療センター 救命救急センター、2)横浜市立大学医学部 救急学教室祐森 章幸1,2)、古谷 良輔1,2)、宮崎 弘志1)、岩下 眞之1,2)、望月 聡之1)、大塚 剛1,2)、余湖 直紀1,2)、佐治 龍1,2)【症例】77 歳。女性。【既往】関節リウマチ【常用薬】プレドニン5mg/ 日 メトトレキサート4mg/ 日【現病歴】入居中の施設で呼びかけに反応が乏しく救急搬送された。来院時、意識レベルGCS E3V1M5、SpO2 62%(酸素10L/分、リザーバーマスク)、心拍数85/ 分、血圧103/53mmHg であった。胸部単純X 線写真で右下肺野中心に両肺野の浸潤影を認め肺炎に伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を疑い気管挿管、人工呼吸を開始し、ICUに入室した。【入室後経過】】入室後輸液に反応しない血圧低下を認め、敗血症性ショックと判断した。また、白血球600、好中球16% のためG-CSF 投与、第四世代セフェム系抗菌薬の投与を開始した。循環不全に対してノルアドレナリンとハイドロコルチゾン(200mg/ 日)の持続静注を要し、第4 病日から腎障害に対して持続的腎代替療法(CRRT)を導入した。後に喀痰・血液培養から緑膿菌が検出されセフタジジムに抗菌薬を変更、G-CSFは第7 病日まで連日投与した。徐々に呼吸・循環状態は改善したが、第16 病日頃から再度酸素化の増悪と両側肺野の浸潤影増強を認めた。β-D グルカンも高値であり、重症ニューモシスチス肺炎(Pneumocyctis Pneumoniae;以下PCP)の合併を疑いST 合剤及びプレドニゾロンによる経験的治療を開始した。第21病日にニューモシスチスPCR陽性が確認された。気管切開を経て第35 病日に人工呼吸器を離脱、第45病日に酸素投与を終了した。気管切開チューブをスピーチカニューレに変更し、療養型病院へ転院した。【考察】PCP 発症のリスクとしてHIV 陽性やステロイド常用、CD4陽性細胞200/mm 2 未満は知られてい るが、近年MTX導入に伴い関節リウマチ患者におけるPCP の合併が増加している。本症例は早期から 経験的治療を開始することで良好な結果が得られたが、関節リウマチ合併例では経過中のPCP 合併を念頭においてST 合剤予防投与も考慮すべきと考えられた。ポスターCP 45 感染・感染対策④ 2月13日(土) 15:00~16:00 CPポスター会場CP45-2 ステロイド内服中に発症したノカルジアによる左大腿内転筋群内膿瘍の一例東京警察病院草本 朱里、須崎 萌、野中 勇士、中嶋 浩二、金井 尚之【背景】ノカルジアは土壌や野菜などの植物、水などの日常的な環境に存在するグラム陽性好気性放線菌属であり、吸入や外傷創部から侵入するため、感染巣として皮膚、呼吸器、中枢神経が多い。ノカルジア感染症には半数以上に免疫抑制状態が存在するとされている。治療には長期の抗生剤投与が必要であり、最低でも6 週間、免役不全者では12 カ月以上といわれている。抗菌薬の第一選択はST合剤となるが、副作用や耐性などの点からアミノグリコシド、カルバペネム、第3世代セフェム系を使用もしくは併用していくことが多い。今回、ノカルジアによる軟部組織感染症に様々な合併症を併発し、全身管理に難渋した症例を経験したので報告する。【症例】ANCA関連腎炎、ネフローゼ症候群に対してPSL30mg内服中の81歳女性。左大腿の疼痛、浮腫性硬化があり、蜂窩織炎疑いにて、当院腎代謝科に入院した。抗生剤CEZ による治療によりし採血データと症状に改善を認めたが、炎症反応の再燃があり、CT にて左大腿後面の内転筋群内にいくつかの腔をもつ液体貯留を認め、左大腿内転筋群内膿瘍と診断、当科転科となった。各膿瘍腔にドレーンを留置した。膿培養からnocardia asteroidesが検出され、ST合剤による治療を開始とした。ドレナージは良好であり、早期にドレーンを抜去することができた。経過中、抗生剤の副作用と考えられる偽膜性腸炎を併発し、メトロニダゾールの静脈内投与を開始した。低Alb 血症と全身の浮腫は進行したが、全身状態の軽快とともに改善を認めた。腎機能の悪化に対して、持続的濾過透析開始としたが、安定したため間歇的透析に移行した。【考察】ステロイド内服中の患者にノカルジア感染を発症すると、治療期間が長くなり様々な副作用出現の頻度も高くなってくる。治療を継続できるような工夫と全身管理が重要である。CP45-3 重症呼吸不全に対するV-V ECMO管理後に重症サイトメガロウイルス腸炎を発症した一症例1)前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科、2)前橋赤十字病院 消化器内科、3)前橋赤十字病院 病理診断科、4)前橋赤十字病院 感染症内科、5)前橋赤十字病院 呼吸器外科堀口 真仁1)、小倉 崇以1)、鈴木 裕之1)、増田 智之2)、井出 宗則3)、林 俊誠4)、井貝 仁5)、宮崎 大1)、中村 光伸1)【概要】溺水に伴う重症肺炎・呼吸不全に対して体外式膜型人工肺(ECMO)を導入し、呼吸状態の改善を認めてECMO から離脱したのちに、重症のサイトメガロウイルス(CMV)腸炎を発症した症例を経験した。【症例】70歳代の男性。温泉入湯中に意識を失っているところを発見された。近医での胸部CTで両側にびまん性の化学性肺炎を認めた。気管挿管されたが、水腫液が持続的に湧き上がってくる状態であった。100% 酸素投与下でもPaO2 が40 Torr台であり、当院へECMO目的で転送された。【経過】来院後ただちにV-V ECMOを導入し、PaO2は60Torr前後に改善した。炎症の鎮静化までICUにて各種の支持療法を行う方針とした。肺高血圧症と右心不全を来して十分な酸素化が出来なくなったために、第6 病日にV-A ECMOに変更した。酸素化の改善に伴い第10病日にECMOから離脱できた。第12病日から水溶性下痢が出現し、第20病日頃から多量になってきた。培養検査では有意な病原体は検出されず、CD抗原は陰性であった。1日の下痢が2,000mlを超えたために第23病日に大腸内視鏡検査を行ったところ、直腸の多発潰瘍と全結腸の著明な浮腫を認め、生検組織の免疫染色でCMVが陽性であったためにCMV 腸炎と診断した。ガンシクロビルを投与したが下痢は増加し、1日6,000mlを超えた。2 週間以上に及ぶ初期治療にもかかわらず臨床症状および内視鏡所見に改善が見られなかったため、第41 病日からホスカルネットを投与した。多量の下血、汎血球減少を来し、第46 病日に死亡した。【考察】本症例は明らかな免疫不全状態ではない患者に発症したCMV感染症であり、一般的には治療への反応は良いと考えられる。ECMO管理に伴う全身性炎症反応症候群による免疫機能異常や腸管バリアの破綻などが、CMV 腸炎発症や治療抵抗性と関連していた可能性がある。