ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-689-CP42-4 ICU における人工呼吸器装着患者の隠れた疼痛を探せ!南和歌山医療センター 救命救急センター油田 まどか、日諸 美帆、江尾 正道、竹田 朱花、井上 潤、樫山 節子【研究背景】ICU 入室患者は、手術や外傷、チューブ類の留置、安静臥床など様々な苦痛を抱えており、適切な鎮静、鎮痛管理が必要であるとJ-PAD で指摘されている。しかし、患者は鎮静や人工呼吸器管理により言語で痛みを訴えることができないため、看護師が本当に患者の痛みを把握できているのか疑問に感じた。【研究目的】看護師が認識できていないICU における人工呼吸器装着患者の隠れた疼痛を探り、今後の看護上の課題を検討した。【研究方法】対象はICUで人工呼吸器を装着したRASS0~-2外科系患者A氏、内科系患者B氏、外傷系患者C氏の3例。研究者による参加観察と、患者、受け持ち看護師へのインタビューを行い、受け持ち看護師と研究者のBPS の比較、バイタルサイン、ケアとの関連、患者の苦痛から今後の課題を検討した。【結果】A 氏は術後の創部処置時に最もBPSが上昇、自ら体位を整え直した時にBPSは低下した。B 氏は間質性肺炎で、咳嗽反射時に最もBPSが上昇し、髭剃りや口腔ケア時にBPSは低下した。C 氏は多発肋骨骨折があり、体位変換のたびにBPS が急激に上昇したが、体位変換後はBPSが低下した。また、対象患者は3名とも入院前から慢性疼痛があった。受け持ち看護師は共通してバイタルサイン測定(安静)時にBPSを評価し、患者の疼痛は記録に表れていなかった。しかし、受け持ち看護師はその時々で考え得る疼痛に対してケアを行っていた。【結論】看護師が認識できていなかった隠れた疼痛は、看護ケアによる疼痛と慢性的な疼痛であり、看護師の介入次第で軽減し得る疼痛であった。また、把握できた疼痛も記録に現れていないことにより継続ケアにつながらず、再び隠れてしまうことが考えられた。体動時の疼痛評価、入院前からの慢性疼痛とその対処の把握、記録による継続看護、丁寧に訴えを聴き自尊心を尊重した患者個人に応じたケアを提供していくことが今後の課題である。CP42-5 鎮痛鎮静プロトコル改良のためのプロトコル脱落例の検討1)自治医科大学附属病院 集中治療部、2)自治医科大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座笹井 香織1)、岡田 和之1)、平 幸輝2)、茂呂 悦子1)、布宮 伸2)【目的】昨年本学会で鎮痛鎮静プロトコル(以下プロトコル)を作成・導入した結果,特に鎮痛面で一定の有効性を認めたことを報告した.しかし導入症例中46.7%に脱落例を認めた.今回,プロトコルの改良目的に,脱落例の検討を行った.【方法】プロトコル適用者30名中,プロトコル管理が抜管まで可能だった16名(以下成功群)と,不能だった14名(以下脱落群)を比較した.データ解析には,t検定とχ2検定ないしFisherの直接確率法を用いた.また脱落群はその理由を調査した.【結果】両群には,年齢,性別,手術の有無,入室形態,APACHEIIスコア,VAPの有無,疾患,既往歴に明らかな違いは認めなかった.一方,平均人工呼吸器装着時間は,成功群:113.41時間に対し脱落群:217時間で有意差を認めた(P<0.05).CAM-ICU 陽性人数は成功群6 名,脱落群11 名で脱落群に多かった(P< 0.05).脱落理由は,至適管理レベル維持困難4 例,血圧低下による薬剤中止3 例,医師・看護師の判断不足に起因2例,処置前の予防的鎮痛剤追加投与が必要となった2 例,容態悪化による離脱・鎮痛剤増量による呼吸抑制出現・看護師評価と患者の訴えの乖離が各1 例あった.【考察】「長期の人工呼吸器装着(≧5 日)」が必要となる症例は,概して全身状態が不良であり薬剤使用に伴う循環抑制等の副作用が現れやすい.これについては適宜循環作動薬を併用することで脱落例を減らせる可能性がある.またせん妄状態では,RASS とBPS の評価が曖昧となることでプロトコル適用の継続が困難となる可能性が高い.プロトコル継続の妥当性を評価するためにせん妄評価の結果を組み入れ,別途薬剤の導入なども検討すべき余地がある.【結論】現プロトコルは「人工呼吸管理長期化例」,「せん妄状態」には適用に限界があり,今後更なる改訂が必要である.CP42-6 RASSを使用した患者の体験についてのインタビュー調査聖隷浜松病院 救命救急センター ICU天野 王日奈、遠藤 南子、木島 一美、佐藤 慎也、鈴木 美由紀、小林 玲子、渥美 生弘【動機・目的】A施設ICUでは適切な鎮静ケアで患者の安寧を守ることを目標に定め、RASSを導入した。その後、看護師や医師は以前よりも共通認識を持ち、鎮静薬の管理が行えるようになった。しかし、患者の安寧についての効果は不明である。そこで、RASSを使用した患者の体験について調査を行ったのでその結果を報告する。【方法】A施設ICUでRASS を使用した患者のうち、インタビュー調査の同意が得られた7 名に、2014 年9月~2015年5月に半構造化面接を行った。【結果】今回対象とした患者7 名中5名はRASS- 5の期間があり、100%がその時の記憶は無いと答えた。一方、RASS-5~+ 2と変動が大きかった患者1名は、記憶では時間の感覚にずれがあった。術前の説明内容と術後の状況に相違があった患者は、RASS+2 で経過した。反対に事前に説明を受け自分の状況を理解していた患者では、RASSがプラスにならず経過した。RASS-1~0で経過した期間のある患者のうち、何らかの記憶があると答えた割合は75%であった。その中で、ある患者は「全部の記憶がある。全部脳みそが動いていて、何を言われていたかもわかっていた。」と答えている。医療者側として客観的に体動が少なく休息出来ていると判断しても、患者からは「安寧」を得られていたと思われる発言は聞かれなかった。そして、RASS-1より浅い鎮静の患者では咽頭痛を100%訴えた。【考察】患者自身が予想しなかった状態で挿管、鎮静管理となることはRASSスコアの上昇に影響すると考えられた。反対に事前のインフォームド・コンセントにより、受けている治療の納得ができると状況認識しやすくなると推測された。人工呼吸中の鎮静のためのガイドラインではRASS - 1~0 が推奨されている。患者の記憶があるからこそ、RASS のスコアにとどまらず患者の訴えを確認し、安心安寧が得られる介入の必要がある。また、今回明らかになった咽頭痛に対しても適切に評価し介入の必要性が考えられた。