ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-680-CP38-1 僧房弁形成術後タコつぼ型心筋症の1 例静岡市立静岡病院 心臓血管外科中井 真尚たこつぼ型心筋症はまれな病態であるがストレスがかかる状態では発症しうる。今回僧房弁形成術直後に生じたたこつぼ型心筋症を経験したため提示する。【症例】72歳女性。14年前から後尖逸脱にともなう僧房弁逆流症を指摘されていた。今年に入り心不全生じたため手術目的にて紹介された。術前CAGでは有意狭窄を認めずEF58%、ER3度であった。US上Dd/Ds=58/33。であった。手術は胸骨正中切開、人工心肺心停止下に施行。Full maze 施行後僧房弁形成。P2に穿孔を認め感染性心内膜炎治癒後と考えられた。穿孔部の縫合閉鎖、人工腱索、人工弁輪(CG future band28mm)にて形成施行した。左心耳は縫合閉鎖した。心停止時間76分、手術233分。術後洞調律となった。帰室後は強心剤を比較的多めに必要とした。当日よりECGにて広範なT波の陰転を認めていたがCK MB は最大101 とさほど上昇を認めていなかった。翌日心室細動を生じDC 施行した。その後のUS にて心基部のみかろうじて動いているだけの壁収縮能の低下を認めた。たこつぼ型心筋症を疑い緊急CAG 施行。冠動脈は流速低下認めるも有意狭窄はなく、LVG にてたこつぼ心筋症と診断した。EF は23% まで低下していた。MR は認めなかった。IABP 挿入した。ICU 帰室後乏尿に対してCHD 開始した。その後強心剤は積極的に減量した。第3病日CHD離脱、第5病日IABP 離脱した。第25病日に軽快退院となった。退院時US 上壁運動はDd/Ds=50/36、EF59%に改善したがECG上のT波陰転は残存した。【考察】たこつぼ型心筋症はまれに開心術後にも報告されている。ストレスのほか、強心剤の使用も誘因とされている。本症例では術後早期からECG上広範なT波の陰転を示していたがその時点では診断に至らなかった。IABP 挿入、CHD使用を余儀なくされたが次第に改善し回復することができた。ポスターCP 38 心臓・循環・体液管理④ 2月13日(土) 9:30~10:30 CPポスター会場CP38-2 A 型急性大動脈解離の周術期に重症冠攣縮を繰り返し治療に難渋した1 例三菱京都病院 心臓内科加藤 雅史、北條 瞬、櫛山 晃央、金田 和久、溝口 哲、三木 真司、吉田 章症例は73 歳男性。胸痛にて近医より急性冠症候群疑いで当院紹介、ECG上V4-6 でST低下、UCGにて後下壁の壁運動低下および心嚢水貯留を認めた。CT にて上行大動脈基部から大腿動脈におよぶ、偽腔開存型のA 型大動脈解離を認めたため、同日緊急手術を施行した。人工心肺下に上行大動脈人工血管置換術(J Graft Shield NEO 22mm)を施行したが、術中ECGモニターにて下壁誘導でのST 上昇を繰り返し、その都度血行動態が不安定となりポンプからの離脱に難渋した。最終的に右冠動脈(#4PD)に静脈グラフトバイパスを追加してからポンプ離脱、手術終了とした。術後5日目に、リハビリ、排便を契機にECGにてV1-6のST低下あり、その後完全房室ブロックから心肺停止をきたした。心肺蘇生処置後に、緊急冠動脈造影を施行、左回旋枝#13 99%、左前下行枝#7 90%狭窄を認めたが、ニトログリセリン投与にて狭窄は解除され、重症冠攣縮による心筋虚血からの心肺停止と診断した。以後多剤(硝酸薬、Ca 拮抗薬、ニコランジル、スタチン、ビタミンE 製剤)を併用して冠攣縮のコントロールを試みたが、しばらくは冠攣縮発作を頻回に繰り返し治療に難渋した。最終的にジルチアゼムが著効し、同薬を漸増後は発作なく経過し、術後40日目に軽快退院となった。冠攣縮は様々な要因にて誘発され、多剤耐性のものは治療に難渋することがある。今回我々は、急性大動脈解離の周術期に、心肺蘇生を要するような猛烈な冠攣縮を繰り返し、治療に難渋した症例を経験したので報告する。CP38-3 下腹部痛を主訴に来院し、急性心筋梗塞による左室自由壁破裂を診断し救命し得た一例1)東邦大学医療センター大森病院 内科分野循環器内科学講座、2)東邦大学医療センター大森病院 総合診療・救急医学講座小泉 雅之1)、豊田 幸樹年2)、一林 亮2)、坪田 貴也2)、横室 浩樹2)、本多 満2)、吉原 克則2)【症例】75歳 女性。下腹部痛を主訴に救急要請。救急隊到着時、意識レベル低下(JCS-10)・ショックを認め、当院救命救急センターへ搬送となった。来院後、急速補液でショックから離脱し、意識レベルは改善した。ショックの原因検索にエコー検査を施行したところ、腹水は認めず、一方で前壁中隔の壁運動低下と少量の心嚢液貯留を認めた。心電図ではI・aVL・V1-6 誘導のST上昇、採血では心筋逸脱酵素の上昇を認め、急性心筋梗塞(AMI)に伴う心原性ショックと診断した。緊急心臓カテーテル検査(CAG)の準備を進めながら再度心エコーを施行したところ、来院直後と比較して心嚢液の増加を認めたため、精査目的で造影CT を施行した。大動脈解離の所見は認めず、全周性の心嚢液貯留を認め、心破裂を疑った。CAGでは左冠動脈前下行枝#7 の完全閉塞を認めた。CAG中にも心エコーを施行し、さらなる心嚢液の増加が確認され、AMIによる左室自由壁破裂(LVFWR)と診断した。外科的手術の適応であり、大動脈内バルーンパンピング術を施行、鎮静下に挿管・人工呼吸器管理とし、緊急手術を施行した。胸骨正中切開し、心膜切開にて血性心嚢液が多量に噴出し、循環動態の改善を認めた。左室前壁から心尖部にかけてoozing型LVFWR の所見を認め、Sutureless 法による止血術を施行し術終了とした。術中所見から心原性ショックに加え、閉塞性ショックも明らかとなった。術後、梗塞部位は瘤化し、低左心機能となったが、循環動態は維持し、急性期を離脱した。【考察】心窩部痛を主訴とする急性心筋梗塞は多数あるが、下腹部痛を主訴とする急性心筋梗塞は稀であり、診断のピットフォールとなりうる。本症例では主訴にとらわれず、スクリーニングのエコー検査で早期に診断できた。また、経時的に心エコーを施行することで心嚢穿刺を施行することなく、心破裂を診断し、早期に緊急手術を施行することで救命し得た一例をであったため報告する。