ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-671-CP33-4 大動脈弁置換術後患者におけるVCMのMIC が2 μg/mLのMRSA持続菌血症に対しABK併用下VCM持続投与を行った1 例医療法人鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科小林 宏維、藤内 まゆ子、松本 敬、麻生 将太郎、佐藤 仁信、前田 淳子、軽米 寿之、笹野 幹雄、高山 千尋、林 淑朗【背景】VCM のMIC が 2 μ g/mL のMRSA 持続菌血症の治療は困難である.本症例ではさらに,DAP による治療失敗,PVE 疑い,腎不全合併のため治療方針決定に窮した.【症例】72 歳女性.大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症に対して大動脈弁置換術(人工弁)施行後10日目に心肺停止となり蘇生後ICU入室.縦隔炎,胸骨感染,敗血症性ショックと診断し,開胸洗浄ドレナージ・胸骨デブリードメント術を行った.血液および創部培養からMRSAが同定された.血中濃度25-30 μg/mL を目標にVCM持続投与を行い血液培養陰性化したが,腎機能悪化のためDAP に変更した.しかし変更後,血液培養が再度陽転した.しかも,同定されたMRSA 株のVCM のMIC が 2 μ g/mL であった.ここで,血中濃度35-40 μ g/mL を目標に敢えてVCM持続投与を再開した.また,PVE 疑い例として,ABK(14日間)とRFP(39 日間)も併用した.その後,血液培養陰性が継続し,全身状態も徐々に改善していった.一時,血液透析依存となるも,入室89日目にICU 退室となり血液透析も離脱した.【考察】近年,VCM の持続投与は従来の間歇的投与に比して腎障害が少ない可能性が示唆されている.今回我々は35-40 μ g/mL を目標にVCM 持続投与を行い,AUC/MIC > 400 を保った. MRSA 起因PVE ではRFP とGM の併用が推奨されているが,GM に比してMRSAに対するMICが低値であるABKを本症例では敢えて代用した.ABKの使用経験は乏しく,臨床研究も不十分であるため,この選択には議論があるだろう.【略語】VCM: バンコマイシン,AUC: area under the concentration time curve,MIC: minimum inhibitory concentration, ABK: アルベカシン,DAP: ダプトマイシン,PVE: prosthetic valve endocarditis,RFP: リファンピシン,GM: ゲンタマイシンCP33-5 Flavobacterium indologenesにより3 週間菌血症が持続した一例那覇市立病院中田 円仁症例は60代男性、成人T細胞白血病の既往があるが、寛解しており薬剤使用はない方。突然の呼吸困難感を主訴に救急搬送され、急性心不全の診断で入院となった。搬送された時点で呼吸状態が悪くNPPVを装着、ICU管理となった。心不全の原因として虚血性心疾患の可能性が疑われ心筋逸脱酵素を測定したところ、12時間後にCK 1000IU/lを超えて上昇したため緊急冠動脈造影検査を施行した結果、右冠動脈#2が完全閉塞しており、同部位に経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行したがワイヤー挿入できず治療がうまくいかなかった。NPPV を使用、薬剤投与で心不全は徐々に改善したが入院5 日目にPseudomonas aeruginosa による肺炎を来し抗生剤(CAZ)投与を開始した。浸潤影の改善に乏しく、入院9日目の血液培養でFlavobacterium indologenesが検出されCPFXを投与した。抗生剤治療を継続したが約3 週間に渡り血液培養陽性(すべてFlavobacterium indologenes)が持続した。感染源がはっきりしなかったが、最終的にはST合剤の内服で培養陰性化した。Flavobacterium indologenesによる菌血症は稀とされているが、本症例は約3週間に渡り持続的に血液培養から検出された。感染源として動脈圧ラインからの感染の報告があり、本症例も動脈圧ラインからの感染が考えられた。肺炎に伴う浸潤影が改善しないためライン感染より肺炎を治療の中心として考えていたが、Flavobacterium indologenesが検出された場合には動脈圧ライン感染を考えるべきであることを学んだ。菌血症の起炎菌として稀であるFlavobacterium indologenesにより約3 週間に渡り持続的に血液培養陽性となった症例を経験したので報告する。CP33-6 劇症型黄色ブドウ球菌感染症を契機に急性感染性電撃性紫斑病を呈し死亡に至った一例1)千葉県救急医療センター 麻酔科、2)千葉県救急医療センター 集中治療科稲田 梓1)、江藤 敏2)、稲葉 晋1)、花岡 勅行2)、藤芳 直彦2)、石橋 克彦1)、國分 宙1)【症例】68歳女性。【既往歴】糖尿病・陳旧性脳梗塞・変形性膝関節症で外来加療中であった。【現病歴】全身倦怠感と胸部圧迫感・動悸にて近医外来受診。発作性心房細動で外来加療となったが、帰宅途上で意識障害を来し当院救急搬送された。【来院時現症と経過】背部痛の訴えあり。全身冷汗とチアノーゼを認めたが紫斑の出現は認めず。血圧およびSpO2は測定不能。血液検査上、著明な代謝性アシドーシスと尿素窒素/ 血清クレアチニン・クレアチンキナーゼ(CK)高値を認め、画像検査上は明らかな異常所見を認めなかった。気管挿管による人工呼吸管理、カテコラミン製剤投与と輸液負荷、持続的血液透析(CHD)、抗生剤投与(メロペネム)を開始。集中治療室入室後一時的に呼吸循環動態は安定したが、入室4 時間後にK:6.3meq/L、CK:12844IU/μ Lとなり、6時間後K:8.6meq/Lまで上昇、徐脈・低血圧となり経皮的補助心肺装置(PCPS)を導入した。導入中にpulseless VTとなった。その後持続血液濾過透析(CHDF)を行うもK:10.2meq/L まで上昇し、血液透析(HD)に変更した。PCPS 導入前後から理学所見上四肢を中心とした紫斑の拡大と筋強直が明らかとなり、急性感染性電撃性紫斑病(Acute infections purpura fuluminans;AIPF)の発症が示唆された。血清K値は安定したがCK:396,084IU/μLまで上昇し、著しいアシドーシスの進行・出血傾向にてPCPSでも循環維持不能となり、来院約70時間後に死亡した。入院時の動脈血培養検査より黄色ブドウ球菌が検出され、劇症型黄色ブドウ球菌感染症によるAIPF の発症が示唆された。【考察】AIPFは髄膜炎菌や肺炎球菌感染症が契機となった報告が多いが、今回我々は劇症型黄色ブドウ球菌感染症を契機にAIPFを呈した症例を経験した。経過は非常に急激であり、今後も症例報告の集積にて治療法の検討を行うことが重要と考えられる。