ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-661-CP28-4 重症急性膵炎にSIADHを合併した1 症例1)弘前大学 医学部 附属病院 集中治療部、2)弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座工藤 倫之1)、橋場 英二1)、大石 将文1)、丹羽 英智1)、櫛方 哲也2)、廣田 和美2)【症例】42 歳女性。身長158 cm、体重60 kg。【治療経過】多量飲酒後腹痛出現し前医を受診した。血液検査、画像所見から重症急性膵炎と診断され絶飲食、抗生剤投与開始。入院後意識障害が出現し全身状態が悪化したため、入院8 日目に当院に転院し同日ICU 入室となった。入室時Na+ 116 mmol/lと高度の低Na血症を呈しており、自尿はあるものの急性膵炎の補助療法と電解質補正の目的でCHDF を開始した。治療開始後全身状態は改善しNa 濃度も131mmol/l まで上昇した。入室3 日目にCHDF中止し翌日に退室となったが、同日夜、意識障害認めICU再入室となった。頭部CTで異常所見なく呼吸性アシドーシスが見られたため意識障害の原因はCO2ナルコーシスと判断しNPPVを開始した。またNaの補正に伴う橋中心髄鞘崩壊も疑い頭部MRIを施行し否定された。NPPV でCO2 ナルコーシスの改善と併せて意識状態も改善したため再入室4 日目でICU再退室となった。【考察】低Na 血症の鑑別には細胞外液量の多寡が重要である。急性膵炎では、細胞外液量減少性の低Na血症を来すことが知られるが、本症例では体重増加、胸腹水の著明な貯留を認めており細胞外液量が減少しているとは考えられなかった。その他、1)ADH高値(6.3pg/ml)、2)血漿浸透圧低下(274 mOsm/kg HaO)、3)尿浸透圧上昇(343 mOsm/kg HaO)4)血清コルチゾール上昇(25.31μg/dl)、5)腎機能正常(0.38 mg/dl)、6)尿中Na 排泄維持(Na+116mmol/L)を認め、低Na の原因はSIADH と診断した。本例のSIADH の治療は、水分管理とNa投与の他にアルコール性肝障害による腹水貯留も考えAVP V2受容体拮抗薬トルバプタンの内服も行った。その後Na濃度は良好にコントロールされた。しかしながらSIADHの原因については不明であった。【まとめ】急性膵炎にSIADHを合併した1 例を経験した。低Na 血症の患者の治療は細胞外液量の多寡で大きく異なるので鑑別に注意が必要である。CP28-5 低心機能を伴った高浸透圧性高血糖症候群に血液浄化をはじめとする集学的治療を行い軽快した一例藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座磯部 恵里、中村 智之、原 嘉孝、柳 明男、前田 隆求、早川 聖子、河田 耕太郎、内山 壮太、山下 千鶴、西田 修高浸透圧高血糖症候群(hyperosmolar hyperglycemic syndrome: HHS)は、高齢で腎不全や心不全を有する患者が多く、死亡率は5~20% との報告がある。今回、心アミロイド―シスによる低心機能を伴ったHHS に対して血液浄化療法をはじめとする集学的治療により軽快した症例を経験したので報告する。【症例】75 歳男性。元来、心アミロイド―シスによる左室肥大と収縮能低下(EF20~25%)があり、徐脈性心房細動に対してペースメーカー挿入後。脳梗塞で入院加療中に尿路感染症を合併。抗生剤治療中、GCS6 点(E4V1M1)と低下し、BUN 124.8mg/dL、Cr 1.86mg/dL、血糖値 1,478mg/dL、血漿浸透圧 440mOsm/L と著明に上昇。pH/PaCO2/PaO2/HCO3-/Base Excess/乳酸: 7.332/41.6mmHg/ 337.2mmHg/ 22.2mmol/L/ -3.9mmol/L/ 18mg/dL であった。HHS と診断し、全身管理目的にICU 入室となった。低心機能のため大量輸液は困難と考え、入室直後より緩徐に血糖値、血漿浸透圧を補正する目的でcontinuous hemofiltration(CHF)を開始した。血糖値はCHFだけでなくインスリン持続投与でコントロールした。輸液は8.4%重炭酸ナトリウム液を等張に薄め100~120ml/h で投与した。入室3 日目、血漿浸透圧326mOsm/L、血糖値179mg/dL と改善し、意識は状態悪化前のレベルまで改善を認めた。入室5 日目で臨床症状だけなく、血漿浸透圧、血糖値、BUN、Cr、電解質が正常化したため血液浄化療法は終了とした。入室中、低心機能補助を目的で昇圧薬を使用したが、明らかな心不全を疑わせる所見は無かった。昏睡以外の中枢神経症状を認めることも無かった。入室11 日目に退室となった。【まとめ】HHS の治療において、血液浄化は必須ではない。しかしながら本症例は、心アミロイド―シスによる低心機能を伴ったHHSであったため、脱水補正を目的とした急速大量輸液が困難と判断した。今回、低心機能合併HHSの治療としてCHFを導入し合併症を起こすことなく良好な転帰を得た。CP28-6 多臓器不全を呈し心停止からの蘇生や腎代替療法などの集中治療を要した神経性食思不振症2 症例の検討東京大学医学部附属病院 救急部集中治療部小丸 陽平、前田 明倫、浅田 敏文、山本 幸、比留間 孝広、上田 吉宏、松原 全宏、土井 研人、中島 勧、矢作 直樹【症例】2014年1 月~2015年6月に自施設ICUへの入室を要した神経性食思不振症は2 症例(21歳女性、47 歳女性)であり、これらについて検討した。1例目は、意識清明でふらつきを主訴に入院し肺炎の診断で治療を開始したが、第2病日に突如CPAとなり、ACLS で蘇生した。その後低血糖発作や敗血症性ショックを経て回復し、経鼻胃管からの経腸栄養を確立して第95 病日に療養型病院に転院した。2例目は、来院時の意識レベルがJCS III-300であり、無尿とpH 6.75の代謝性アシドーシス、Na 111 mEq/Lの低Na血症を合併していた。腎代替療法(CHDF)を併用して電解質・酸塩基平衡の補正を行ない、入院後顕在化した敗血症性ショックからの回復と呼吸器離脱を達成して第12 病日に精神科に転科、第44 病日に独歩で自宅退院した。2 症例の患者に共通して、救急搬送前に栄養摂取が普段よりもさらに低下した状態が少なくとも数日間あり、入院時の体重は標準体重と比較して、それぞれ40.7%、54.0%と著明なるいそうを呈していた。1症例目は入院後にRefeeding syndromeに特徴的な代謝異常と消化器、循環器、呼吸器合併症を呈した。敗血症や気胸/ 縦隔気腫、肺炎の発症などは両症例に共通した経過であった。【考察】神経性食思不振症は、心身症として身体科・精神科の両方から医学的介入が必要とされる疾患であるが、その死亡率は10年間あたり5~20% に達し、健常群と比較して12 倍も高いことが報告されている。標準体重の55%を下回る状態は、無症状でも緊急入院の適応となる。現在患者数の増加が指摘されており、敗血症、DIC、電解質異常やそれに伴う致死的不整脈を容易にきたすためICU管理が必要となる機会が今後も増えると予想される。今回は2 症例の臨床経過と神経性食思不振症、Refeeding syndromeの病態生理について、文献的考察を交えて報告する。