ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-660-CP28-1 過換気を主訴に来院しGitelman症候群と臨床診断した一例1)筑波大学附属病院 総合病院水戸協同病院 救急部・集中治療部、2)筑波メディカルセンター病院 救急診療科藤井 優尚1)、長谷川 隆一1)、阿部 智一2)【症例】38歳女性【現病歴】来院前日から手足のしびれを自覚したが自然軽快した。来院当日、自動車を運転中に徐々に増悪する手足のしびれと過換気を主訴に救急車にて来院した。【既往歴】自律神経失調症【内服歴】漢方や健康食品を含めなし【来院時身体所見】血圧97/66mmHg、脈拍133/min、呼吸数24/min、SpO2 99%(室内気)、体温37.6℃。発汗著明、頚部・胸腹部・背部に所見を認めず、両側上下肢にテタニー症状を認めた。検査結果はNa128mEq/L、Cl56mEq/L、K2.2mEq/L、P0.9mg/dL、Mg1.9mg/dL、BUN37mg/dL、Cre1.99mg/dL、pH 7.765、pCO2 27.2mmHg、HCO3 38.2mM/Lであった。尿検査はβ2MG23880μg/L、Na57mEq/L、K72.7 mEq/L、Ca2.0mg/dLであった。低K血症の診断で電解質補正のため、ICUに入室した。入院2日目に血清K値は正常化し、四肢のしびれ感や頻呼吸は消失した。電解質異常と急性腎障害が改善したため、サイアザイドおよびフロセミド負荷試験を実施した。後者で遠位尿細管のCl 再吸収率が低下し陽性と判断した。血圧低値、低K・低Mg血症、低Ca尿症であり、Gitelman症候群と臨床診断した。カリウム製剤、マグネシウム製剤内服のみで経過良好となったため、退院し外来フォローとした。現在、同内服を継続しているが、やはり低K・低Mg血症を呈している。両親の家系に血族婚が濃厚であり遺伝子検査を実施したが、Gitelman症候群の原因遺伝子SLC12A3、3 型Barter症候群の原因遺伝子CLCNKBともに変異はなかった。SLC12A3に遺伝子変異を認めないGitelman症候群の可能性が考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。ポスターCP 28 内分泌・代謝・免疫 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP28-2 免疫抑制療法経過中に肺胞出血が再燃したGoodpasture症候群の1 症例1)群馬大学 医学部 附属病院 麻酔科 集中治療部、2)伊勢崎市民病院 麻酔科岸田 浩一1)、金本 匡史1)、神山 彩1)、神山 治郎1)、楢原 創1)、柳澤 晃広1)、戸部 賢1)、吉川 大輔2)、國元 文生1)、齋藤 繁1)Goodpasture 症候群(GPS)は,抗基底膜(GBM)抗体によって引き起こされる2 型アレルギーが原因で、急速進行性糸球体腎炎と肺胞出血を特徴とする。今回、我々は腎不全・肺胞出血からGPSと診断され、ステロイドパルス・血漿交換療法を施行後、一旦症状改善したが、ステロイド内服維持困難となり、肺胞出血が再燃した症例を経験したので報告する。症例は52歳男性。急性腎不全と肺胞出血からGPSと診断された。ステロイドパルス・血漿交換療法を施行し、症状改善。維持透析とステロイド内服で症状は安定していたが、薬の副作用か、嘔気・嘔吐を繰り返し、内服困難、その後再度血痰を認め、肺胞出血が再燃した。2 度目のステロイドパルス・血漿交換療法施行により血痰改善。その後ステロイド・免疫抑制薬併用にて現在も管理中である。以前、GPSは未治療の場合、腎機能予後は2%、生命予後は4%とされた。以後、ステロイド・血漿交換療法を含む免疫抑制療法が行われるようになり、腎機能予後は13~31%、生命予後も42~84%と大幅に改善がみられるが、現在もなお不良である。本症例はステロイドパルスと血漿交換を行い、一旦は改善後、ステロイド内服困難となり、免疫抑制療法が不確実となったため肺胞出血が再燃した。免疫抑制療法の重要性を改めて痛感した症例である。本疾患は抗GBM 抗体が原因とされており、自己抗体産生低下に6~9ヵ月、あるいはそれ以上かかると考えられているため、寛解後も低用量ステロイドと、免疫抑制薬剤を投与することが肝要である。免疫抑制療法の長期化により懸念されるのは感染である。本症例も経過中に真菌感染を併発した。現在も治療中であるこの症例の経過と、これまでのGPS 症例や治療指針も踏まえた上で、考察を加えて報告する。CP28-3 横紋筋融解を合併した糖尿病性ケトアシドーシスの1 例国立病院機構熊本医療センター 救命救急・集中治療部山田 周、山下 幾太郎、江良 正、狩野 亘平、櫻井 聖大、北田 真己、橋本 聡、原田 正公、瀧 賢一郎、高橋 毅【症例】32歳女性【既往歴】特記なし【内服歴】特記なし【アレルギー歴】特記なし【現病歴】生来健康な方。X-10日から感冒症状があり、X-3日より嘔吐がみられ食事摂取困難となり、近医を受診して、感染性腸炎の診断で連日点滴治療を受けた。X日朝から意識障害を呈したため前医を受診したところ、血糖値 600mg/dL 以上の高血糖を指摘され、同日当院へ紹介搬送となった。来院時血糖値は767mg/dL で、pH 7.170、BE -18.3 と著明なアシドーシスを伴い、HbA1c 6.4%(国際基準値)と上昇を認めず、劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスを疑う所見であった。血清のCK 58650IU/L、ミオグロビン 57000ng/mL、Cre 2.19mg/dL であり、CT 上は軽度の肺炎を認め、横紋筋融解、急性腎障害、誤嚥性肺炎を合併しているものと診断した。Na 137mEq/L、K4.5mEq/L、Cl 113mEq/L と電解質は比較的保たれていた。同日入院として、持続インスリン静注を行い、脱水に対し輸液負荷を行い、血糖値やアシドーシス、意識レベルは改善が得られたが、無尿が続いたため、入院後第10 病日に血液透析を開始した。腎障害が改善し第21 病日に透析を離脱、その後再増悪はみられなかった。抗IA-2 抗体(anti insulinoma-associated protein-2antibody)陽性であり、自己免疫性急性発症1型糖尿病と診断した。インスリン自己注射を指導後に、第30病日自宅退院となった。【考察】糖尿病性ケトアシドーシスにおいて横紋筋融解を合併することはよく知られており、電解質異常や浸透圧の変化、糖の利用障害などがその原因として考えられている。しかし本例のように血液浄化を要した症例は比較的まれである。本例では電解質異常はあまり認めなかったが、経口摂取不良のため高度な脱水をきたしており、悪化の一因と思われた。【結語】糖尿病性ケトアシドーシスに横紋筋融解と急性腎障害を合併し、血液浄化療法を必要とした症例を経験した。文献的考察を交え報告する。