ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集
-646-CP21-1 敗血症における心拍変動のDeceleration CapacityとAcceleration Capacityを用いた重症度と転帰予測新潟大学医歯学総合病院 高度救命救急センター・集中治療部遠藤 裕、岡部 康之、上村 夏生、新田 正和、林 悠介、渡邊 要、本多 忠幸、本田 博之【背景】敗血症における心拍変動に関して多くの報告があるが,一定の見解が得られていない。Deceleration Capacity(DC)とAcceleration Capacity(AC)は瞬時心拍数の変化を減速と加速に分けて,迷走神経と交感神経の活動を評価する新しい指標で,アーチファクトの影響を受けにくいとされている。特に,DCは急性心筋梗塞や救急外来患者の転帰予測に有用との報告がある。【目的】敗血症の重症度及び転帰予測の指標としてDC及びAC の有用性について検討した。【対象】過去1 年間に当院ICU に入室した成人の敗血症患者でafリズムを除外した。【方法】ICU波形管理システム(Wave Viewer, Philips, Japan)に記録保存された心電図波形から,ICU 入室24 時間以内の深夜の心電図のRR 間隔(約8 時間分)をCSV データとして導出した。更に,phase-rectified signalaveraging法によりDCとACを算出,APACHEII及び初日のSOFAスコア,転帰との関連を検討した。【結果】21名(63±12歳,M/F=15/6) が対象となり,2 名がICU で死亡した。DC 及びAC とAPACHEII(9~39)及びSOFA スコア(5~16)間に有意な相関を認めなかった。一方, 生存と死亡例の比較では,DC のみに有意な違いを認めた(3.0 ± 1.96 vs 0.44 ± 0.41,p=0.038, Mann-WhitneyU-test)。【結論】以上から,例数は少ないもののDC は敗血症の転帰予測に有用である可能性が示された。ポスターCP 21 重症度・予後評価 2月12日(金) 15:00~16:00 CPポスター会場CP21-2 重症患者における栄養予後指標としての位相角の有用性1)徳島大学大学院 医歯薬学研究部 代謝栄養学分野、2)徳島大学病院救急集中治療部井内 茉莉奈1)、大藤 純2)、堤 理恵1)、小野寺 睦雄2)、阪上 浩1)、今中 秀光2)、西村 匡司2)【目的】重症患者における栄養管理の重要性は広く認識されている。一方で、侵襲下においては有効な栄養指標や予後指標はなく、栄養投与量や適切な栄養組成についても統一した見解はない。体組成計により測定できる細胞透過性の指標である位相角が、重症患者の栄養予後指標となるかを検討した。【方法】徳島大学病院ICUに入室した成人患者59人を対象とした。体組成計はBioScan920 - II(Malton)を使用し、フルテスト法にて測定した。BMI、APACHEIIスコア、血液検査データ、ICU在室日数、入室後60日死亡率、人工呼吸器装着日数を記録した。また、位相角と体細胞量/細胞外質量比の相関を調べた。統計処理にはGraphPad Prismを使用しT-test及びSpearman correlationtestを行った。【結果】対象患者の平均年齢は62.3 ± 14 歳(男性40 人、女性17 人)、平均BMI は21.87 ± 4.17kg/m2、APACHEII スコアの中央値は22(11-43)であった。入室後24時間以内の位相角は体細胞量/細胞外質量比と有意な相関を示した(r2 = 0.8517、p < 0.0001)。ICU 在室日数、人工呼吸器装着日数とも有意な相関を示した(r2 = 0.3092, r2 = 0.3550, p < 0.0001)。一方で、APACHEII スコア及びCRP とは相関関係を示さなかった。ICU軽快退室例の入室時位相角の平均は7.94であるのに対し、60日以内に死亡した群の平均位相角は4.97であった(p<0.001)。敗血症患者は9症例で、敗血症でない患者と比較して位相角は有意に低かった(4.86 vs 7.54,p <0.001)。【考察】ICU入室時の位相角は体細胞量/細胞外質量比やICU 在室日数、人工呼吸器装着日数と有意な相関関係を示し、体組成計を使用して測定できる新たな栄養予後指標となる可能性がある。CP21-3 急性非代償性心不全における全身性炎症反応症候群:合併率と臨床的意義、予後についての検討東京女子医科大学 循環器内科春木 伸太郎、森岡 佑太、南 雄一郎、嵐 弘之、重城 健太郎、嶋崎 健介、猪谷 亮介、山口 淳一、志賀 剛、萩原 誠久【背景】急性非代償性心不全(ADHF)の病態生理の1つとして、炎症反応の重要性についてのエビデンスが蓄積されつつある。全身性の炎症反応の臨床徴候として、全身性炎症反応症候群(SIRS)が知られており、感染症をはじめ様々な状況で来しうるとされる。しかしながらADHFにおけるSIRS の合併率、合併の有無による病態および予後の相違については、いまだ検討が不充分である。よって我々は、ADHF患者におけるSIRS の合併率とその臨床的意義について、後ろ向きのコホートから検討した。【方法】2007 年から2012 年に当院CCU にADHF で入院し、SIRS criteria を判定可能であった合計283 人を対象とした。SIRScriteria は体温・心拍数・呼吸数・白血球数から判定し、2点以上を満たす患者群をSIRS 群とした。【結果】ADHF患者283 人のうち、SIRS criteria ≧ 2 点を満たす患者は117 人(41.3%)であった。SIRS群では原疾患として高血圧性心疾患および弁膜症が多く、心筋症が少ない傾向であった。臨床徴候としてはSIRS 群で起坐呼吸を呈しラ音を聴取する患者が多く、収縮期および拡張期血圧は高値であり、急性期治療として血管拡張薬および非侵襲的陽圧換気の使用が多い傾向であった。院内予後は心臓死および非心臓死ともに有意差を認めなかったが、1年予後はSIRS群で有意に非心臓死が多く(16.2% vs 6.6%,P=0.010)、心臓死が少なかった(6.8% vs 15.1%, P=0.034)。【結論】CCUに入院となったADHF患者のうち、SIRS criteriaを満たす患者は約40%認められた。SIRS群は呼吸状態が悪く血圧は高値であり、非心臓死が多く心臓死が少ない傾向であった。ADHFの病態生理における炎症反応およびSIRSの臨床的意義について、さらなる検討が必要と思われる。